
タレク・アリ・アフマド
ロンドン:この1カ月、イランの政体は、国内の街頭で治安部隊の行為により亡くなった、デモに参加した若者から、ロシアに提供されたイラン製ドローンによって殺害された遠く離れたウクライナ市民まで、多数の民間人の死亡に責任を負っている。
しかし、欧米諸国は、なんとしてでも2015年のイラン核合意を救済しようと試みており、イランの核兵器保有阻止の一点のみを願い、通常兵器計画や代理戦争に関してイランに譲歩するつもりのようである。
中東専門家で元CIA高官のノーマン・ロール氏は17日、ツイッターに投稿したメッセージで、「イラン核合意の飽くなき重視が、何年にもわたり、イランの通常兵器とミサイルシステムに関する政策的取り組みに取って代わった」と述べている。
「イラク、シリア、UAE、サウジアラビア、イエメン、ウクライナの国民や、これらの国々に居住するさまざまな国の市民が、この決定の代償を払わされた」
元米外交官で中東放送ネットワーク元代表のアルベルト・ミゲル・フェルナンデス氏は、ロール氏の評価と同じことを述べ、イランの悪質な活動に非常に寛容であるように見えるとホワイトハウスを非難した。
「バイデン政権は、ロシアを支援しているとしてサウジアラビアを不当に標的にしているが、その一方で同じ米政権がこの2年間の大半でイラン(実際にロシアにドローンを提供している)を甘やかしてきた」と、17日にフェルナンデス氏がツイートしている。
2018年にドナルド・トランプ前大統領は、正式には包括的共同行動計画と呼ばれるオバマ政権期の核合意から米国を離脱させた。後任のジョー・バイデン氏は、欧州の同盟国の支援を受け、イラン・イスラム共和国に大きな譲歩をいくつか提示して合意の復活を執拗に試みている。
ロール氏はアラブニュースに対し、「イランはこの協議を利用して、主要国や国際原子力機関(IAEA)に巧みに逆らうことができることを示した」と語った。
「より大規模で危険な核開発計画の正常化も達成した。どちらの成果も、イランは代償なしに手に入れた」
イランは、国際社会に譲歩する意思を示そうともせず、ウラン濃縮計画を大幅に拡大し、ドローンやミサイル、代理民兵によって地域情勢に干渉し続けるなど、罰を受けずに自由に悪質な活動を強化している。
17日、イランがロシアに提供した約30機の「カミカゼ」ドローンがウクライナの首都キーウの住宅地区に次々と突っ込み、この猛攻撃で少なくとも4人が死亡した。ペルシャ語で「殉教者」を意味する名前が付けられた「シャヘド136」ドローンは、イランのイスラム革命防衛隊とその代理勢力が中東全域の紛争で使用してきたものだ。
例えば、イエメンのフーシ派民兵は頻繁に、爆発物を積んだドローンを使用してサウジアラビアを標的にしている。イランは、このドローンを組み立てて発射し、破壊的な効果をもたらす手段とノウハウを同民兵に提供した。
2019年9月、イランのドローンと巡航ミサイルがサウジアラビア東部のアブカイクとクライスの石油処理施設の攻撃に使用され、世界の石油市場に大きな混乱が引き起こされた。最近のウクライナでの使用は、イランのテロ輸出活動を著しくエスカレートさせた。
イランのドローンがウクライナを標的にしているとの報道を受けて、EUの外交政策責任者であるジョセップ・ボレル氏は17日、ルクセンブルクで記者団に対し、「参加についての具体的な証拠を探す」と語った。
米当局によると、イランはロシアに「数百機」の武装ドローンを提供し、欧米諸国が支援するウクライナ軍との戦況を変えようと試みている。この数週間で、ウクライナ軍は同国東部の領土の広大な地域を奪還している。
ロシアは、「カミカゼ」ないし「自爆」ドローンとも呼ばれる、この新たに獲得した徘徊型兵器を何機か使用している。この特殊なドローンは比較的安価で、大量に使用できるため、敵の防衛戦力を圧倒し、目標に到達して自爆することができる。
シャヘド136は、頭上を飛行する際にブーンという音を立てるため、「エアモペット」とも呼ばれる。ウクライナでは9月に初めて使用され、イランは否定しているが、報道では8月にロシアに売却されたことが示唆されている。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は最近、アラブニュースの「フランクリー・スピーキング」でのインタビューで、「イランの最高レベルの指導者たちと連絡をとっていたので、ロシア連邦政府と同じく、イラン政府も嘘をついていると認識せざるを得ないのは悲しいことだ」と述べている。
「大使館に伝え、大使を外務省に呼び出したが、『ロシアに何も売却していない、あれはイランのドローンではない、そのようなものではない』と断言された」
「撃墜されたこのイラン製ドローンが我々の手元にたくさんある。これらは、我が国の国民を殺害するためにロシアに売却された。そして、民間インフラや民間人に、平和的な民間人に対して使用されている。であるから、私たちはイランの外交官に国外退去を求めた。彼らとは何も話すことはない」
ロシアへのドローン売却を受けて、米国がイランにさらなる制裁を検討しているとの報道はあるが、専門家は、アリー・ハメネイ最高指導者の体制にボディーブローを与える可能性は低いと述べている。
ロール氏は、「イランにさらなる制裁が科される可能性は高いが、ドローン企業への制裁は短期的にそれほどの影響はないだろう」と述べている。
「イランの指導者は、自分たちの行動が外交的・経済的な孤立を生み、体制を不安定化させることを理解しなければならない。イランの石油収入の削減は決定的に重要だ」
ニューラインズ戦略政策研究所のアジーム・イブラヒム所長は、イラン核合意は核開発計画の制限と引き換えにイランへの制裁圧力を緩和したが、ドローン計画やミサイル計画を拡大するための資力をイランに与えることになったと指摘した。
通常兵器の開発や代理武装勢力の活用に追加的な制限を課さずに核合意を復活させると、同じ過ちを繰り返すだけである、と同氏は警告する。
「欧米諸国はまず、最初のイランとの合意が、イランにドローン計画を進展させる資金と時間を与えたのが明白である点を理解する必要がある。同計画は広範囲に及ぶ攻撃的な地域戦略の土台になっている」と、イブラヒム氏はアラブニュースに語った。
「イランとの新たな合意では、同じ過ちを繰り返してはならない。欧米諸国は、イエメン、シリア、レバノン、そして今回のウクライナでのイランのドローン作戦を抑え込むために、できるだけのことをしなければならない。だが、まずは、このような作戦が実行されていることを認識する必要がある」
イブラヒム氏は、今回のドローン攻撃に対する欧米諸国の対応は「恐るべきもの」であるべきだと考えている。
「あまりにも長い間、イランは欧米諸国の無関心といい加減さを当てにしてきた。民兵組織で地域帝国を築き、弾道ミサイルやドローンで武装させようとしている。それらは、NATO軍や中東の同盟国を直接攻撃するために使用される」
「イランのドローン計画は、欧米諸国の怠慢があってこそ花開いた。この怠慢を終わらせるためには、欧米諸国の政策は、長年の怠慢を自らの攻撃で埋め合わせなければならない」