
ナジャ・フーサリ
ベイルート:世界保健機関(WHO)が汚染された製造ロットに関する警告を発したことを受けて、レバノンでがん患者の治療に用いられる薬が販売禁止となった。当局者は、これらの薬が密輸によって持ち込まれていると考えている。
WHOは12月27日、小児患者でこの薬剤の副作用が見られたと報告し、Methothrex(メトトレキサート)の粗悪な製造ロットがイエメンとレバノンで発見されたとして製品に関する警告を発した。
メトトレキサートは免疫抑制剤であり、がんや自己免疫疾患の治療に用いられ、WHO必須医薬品モデル・リストに掲載されている。
WHOの警告によると、「患者への被害を防ぐため、当該の汚染された薬剤を発見し、流通経路から取り除くことが重要である」
WHOの声明はまた、「この製品の影響を受ける可能性の高い地域と国のサプライチェーンにおける、さらなる監視と継続的努力」を求めた。
レバノン保健省は28日、Methothrexの販売を禁止する命令を出し、国内での流通を止めるための措置を講じた。
もっとも、保健省によると、この薬剤はそもそもレバノンで登録されておらず、違法な手段で国内に持ち込まれているという。
レバノン経済の悪化と金融危機により、密輸薬物・薬品の市場は拡大しており、当局は公衆衛生への脅威になりつつあると危惧している。
保健省は患者に対し、出どころの不明な薬を購入しないよう警告しており、安全確保と汚染製品の使用の回避のため、保健省のサイトに掲載されている登録医薬品のリストを確認するよう呼びかけている。
レバノン薬剤師組合のトップ、ジョー・サルーム氏によると、汚染された薬剤のもっとも最近製造されたロットは国内に密輸入されている可能性が高い。
サルーム氏は薬の密輸を「患者を意図的に殺す行為だ」と形容した。
同氏は密輸された薬は保健省の登録リストにないものだが、目下国内で広く出回っていると話した。
「これらの薬は国際的基準を満たしておらず、密輸を許している人々は意図的に患者を殺しているも同然です。ですから、我々は病気で苦しむ人々のために安全な医薬品を早急に確保し、患者が正規の医薬品を購入できるよう支援しなければなりません」と氏は続けた。
レバノン議会保健委員会のビラル・アブドゥラー議長はアラブニュースに次のように語った。「国境と港をコントロールできていないのが現状です。入って来る多くの医薬品が期限切れか、汚染されています。そして、使用した患者が深刻な副作用で病院に駆け込んで初めて、そのような薬の存在が発覚するのです」
レバノン医療当局が販売を禁止した製品名に言及しながら、アブドゥラー氏は以下のように述べた。「密輸業者から始まる流通チェーンが存在し、そこには販売業者や、正規品と同じ有効成分を含む代替品を処方する薬剤師も連なっています」
アブドゥラー氏によると、医薬品の密輸には組織犯罪ギャングが関与している。「これらの者たちは宗教とも、政治や派閥とも無関係です。ただ危機を利用して、不正に金儲けをしたいだけなのです」
アブドゥラー氏はすべての国境と港を担当する治安・監視機関に対し、この問題に対処する第一歩として、手続きの厳格化を求めた。
同じく議会の保健委員会に所属するファディ・アラマ氏はアラブニュースに、保健省が策を講じているにもかかわらず、レバノンの医薬品市場は統制が困難だと話した。
「この件には早急な対応が必要です。保健省には十分な監視体制が整っており、これによって危険な医薬品を市場から取り除くことができるでしょう」