イスタンブール: 20年にわたるエルドアン大統領のトルコ支配を打倒する絶好のチャンスとばかりに、反対派は5月の選挙ですべての投票が集計されるよう尽力し、接戦が予想される投票での改ざんを防ごうとしている。
2月に南東部で発生した大地震では約5万人が死亡し数百万人が家を失うという大惨事が発生し、リスクが高まる不正行為に対し懸念が強まっている。
トルコ南部の学生、イートさん(26歳)は、震災で亡くなった両親の名前で投票しようとする人がいないか確認するため、5月14日の選挙日には故郷のアンタキヤで投票を見守るつもりだと話した。
「自分の代わりに投票する人がいないことを確認するため、投票箱の前で待ちます」とイートさんは言った。
イートさんの両親は、瓦礫の中から遺体が発見されなかったため、正式には死亡が確認されていない。イートさんは自身のフルネームは明かさなかったが、両親はまだ有権者として登録されているという。
今回の選挙は、地震が発生した時点で既に経済危機への批判にさらされていたエルドアン氏にとって、これまでで最も困難な政治的課題となる。各世論調査では野党候補のケマル・キリクダログル氏に差をつけられているが、戦いは依然厳しく、選挙戦は始まったばかりだ。
民主主義進歩党(DEVA)の副党首であるイドリス・シャヒン氏は、大統領の失脚を望む6つの野党の同盟が、投票監視のために弁護士などの専門家を採用するなど、自由で公正な選挙を守るための対策を計画していると語った。
DEVAの職員は、12月31日からの選挙人名簿と地震地域の更新された名簿を比較しているといい、転居者が新居で登録されているか、死亡者が削除されているかなどを確認しているという。
シャヒン氏は、「地震で亡くなった方々の名前で投票を行おうとしても、まだ死亡者は記録から削除されていないため、選挙監視人はそれを防ぐことができるはずです」と付け加えた。
「被災地には、生死不明の市民がいます。私たちメンバーはこれらの記録について注意する必要があります」と同氏は述べ、その数は最大で3,000~5,000人の間で推移するであろうと付け加えた。
野党は過去に、最高選挙管理委員会(YSK)の措置に対する批判や、国内の報道機関に対するエルドアン氏の影響力など、選挙違反を訴えてきた。
世界の選挙を比較する学術研究調査「Electoral Integrity Project(EIP)」によると、トルコは2019年に167カ国中123位となった。
しかし、直近の2018年の大統領選挙では大きな不正の告発はなく、野党候補が敗北宣言をした。エルドアン氏の公正発展党(AKP)は、民意を尊重した自由で公正な選挙を約束するとしている。
トルコの選挙は通常、人口8,500万人の国内各地で数十万人のボランティアによって監視されている。
野党とNGOは、被災地から300万人以上の人々が集団移動することで、一層の懸念が生じるとしている。今回の地震で、1,400万人が住む11の県が壊滅的な被害を受けた。
世論調査会社コンダ社のベキル・アウルドゥル取締役は、「このような災害の後では、選挙記録の正確な更新や投票箱のセキュリティに問題があります」と語った。
「実際に転居する人は何人いるのでしょうか?どれくらいの人が選挙人名簿に正確に登録されるのでしょうか?」
YSKは、南東部での選挙実施に支障はないとし、一時避難施設の有権者向けに投票箱を設置し、転居者が登録住所を容易に変更できるようにするなどの追加措置を発表している。
選挙の安全性に特化したNGOであるVote and Beyondは、20万個の投票箱それぞれの記録の照合システムの監視人として、約10万人のボランティアを委託する予定だ。
エルドアン氏の公正発展党(AKP)も選挙監視人を委託するとしている。
親クルド派の国民民主党(HDP)のメフメト・リュシュトゥ・ティリアキ氏は、被災地では約900万人の有権者が登録されていると述べた。30万人から50万人が居住地を移したと思われるが、被災地を離れた人の多くは住所変更していないとティリアキ氏は付け加えた。
イートさんにとって、震災と震災への政府の対応の遅さは、投票方法を決断する上で重くのしかかっている。
「私の両親は守られていなかったし、助けも来ませんでした。今回、私もこの責任を背負って投票します」とイートさんは語った。