アリー・カレド、ドバイ
サウジアラビア人レスラーのマンスールは初めて真の WWE スーパースターであることを実感した瞬間を一生忘れることはないだろう。
「素晴らしかった。大ステージで 1 対 1 のマッチを戦ったのは初めてで、それが生まれ故郷の 60,000 人の観衆の前でだったのだから」と彼は言う。「家族が来ていた。友人が来ていた。何年も会っていなかった人たちが来ていた。あれほどのスケールの試合で試されることは今までなかったので試合前はとてもナーバスになっていた」
時は 2019 年 10 月 31 日。リヤドのキング・ファハド国際スタジアムで開催されたクラウンジュエルのリング上で待っていたのは、 WWE の伝説でありマンスール(本名マンスール・アル=シェヘール)がインスピレーションであるとみなすセザーロだった。
「リング上に立ってリヤドの観衆が目に入り、父・兄・姉の目を見つめた瞬間に私はこのために生まれたのだと悟った」と彼は言う。
「非常に優れたアスリートであるセザーロのようなレスラーと戦うことは素晴らしいことだった。私はそれまで試される機会がほとんどなかったので、多くの人はどんな試合になるか想像もつかなかったかもしれない。私は多くの人を驚かせたことだろう。私が勝ったからではなく試合がとてもエキサイティングだったからであり、そのことで多くの人が大いに喜んだと思う。あの試合のことは大変誇りに思う」
そして今、彼が辿った歩みを他のサウジアラビア人レスラーたちが繰り返す機会が与えられようとしている。
WWE はリヤドで 2 月 27 日に開催されるスーパーショーダウンを前にして、サウジアラビアに 6 月初旬に戻りリヤドで 4 日間の一般公開トライアウトを開催して次世代スーパースターの発掘を行うと発表した。最大で 50 人のサウジアラビア王国のアスリートが自身の能力を見せるチャンスを与えられ、 WWE のタレント育成契約及びフルタイム・トレーニングの権利を懸けて競い合うという。
WWE 最高執行役員のポール・ ”トリプル H” ・レヴェックは「サウジアラビアでの様々な WWE イベントにおいてすでに有意義な役割を果たしているマンスールという傑出したタレントを始め、中東からアスリートのエリートたちを多く集めた 2018 年の第一回目のトライアウトの成功から、サウジアラビアに戻ることが非常に楽しみだ」と語る。
「 WWE のスーパースターになる夢を持っているサウジアラビアの全てのアスリートとパフォーマーに対して伝えたい。 WWE はあなたの夢を叶える手助けをするためにリヤドに来るのだ。これがその機会を掴み、いつの日か WWE のスーパースターとして何千人ものファンがあなたの名前を連呼する中入場するチャンスなのだ、と」
すでに爪痕を残したマンスールはこれからはリング上におけるサプライズとなることはない。
「確かにそうだ」と彼は笑いながら語る。「私はそれに賭けていたし、セザーロですら『この若者が誰だか知らない』と言っていた。何年分もの動画が存在するセザーロと比べて、私に関する動画はほとんど無いので、私が何を繰り出すのかはわからなかっただろう。私はスーパーショーダウンで試合をすることは知っているが、相手が誰になるかはまだ知らない。ただ今回は、お互いを探り合いどのような試合になるかがわかった状態で戦うという、もう少し同等な立場での試合になる気がする」
意外性は失われたかもしれないが、それは徐々にリスペクトへと取って代わったと言える。マンスールにとってそれは諸刃の剣だ。
「今回リングを共にする相手はより準備が出来ており、用心深く、注意深いだろうと思う」と彼は言う。「私にホームタウンのアドバンテージがあることを知っているだろう。しかし私はできることを全て繰り出したわけではないので、まだ驚きは残っているし、それを彼らは知ることになるだろう。セザーロにとって私はリングにもまともに立ったことのないただの NXT の育成選手だったのだ。今となっては彼らはこの若者が危険であることを知っているので、このチャレンジを楽しみにしている」
サウジアラビアのプロレスファンが試合の夜には再びマンスールを応援することは間違いないことであり、それは今回さらに多きな声援となるかもしれない。
「今だから言えるが、私が受けた打撃は、観衆の応援がなかったら立ち上がることができないようなものだった」と彼は認める。「何千人もの人々の勝利への意思とインスピレーションを感じることはまるで別世界の感覚だ。正直、私は観衆全員が勝って欲しいとする側と全員が負けて欲しいとする側、どちらの側にも立ってきた。どちらも不思議な方法で平等にインスピレーションになるんだ」
「リヤドのファンが見せたような情熱はこれまで見たことがなかった」
マンスールはスーパーショーダウンの先に、彼の故郷での 6 月の WWE トライアウトに対して特別な興味を持っている。
2018 年 4 月の第一回目の WWE タレント・トライアウトにおいてはマンスール自身とファイサル・クルディ、フセイン・アル=ダガルのサウジアラビア人 3 名が WWE 育成教育を勝ち取った。マンスールはのちに昨年 6 月のジェッダでの WWE スーパーショーダウンで史上初の 50 名バトルロワイヤルを勝ち抜き、そして 10 月のクラウンジュエルにおいても勝利した。
「私は非常に興奮しているし、トライアウトには行きたいと思っている」と彼は言う。「私が参加した 2018 年の第一回目のトライアウトは私にとって人生で最も素晴らしい経験のひとつだった。とてつもない成功を収めることや絶望的な失敗をすることが人々にとってどのようなものであるかをこの目でみることができた。その歴史により多くの人が参加することができるのは素晴らしいことだ」
アメリカで何度もリングに立つ経験をしているマンスールはトライアウトに参加できて「光栄であり恵まれていた」と感じているという。他の同胞も夢を実現できることを彼は願っている。
「これは世界最高の仕事であり、より多くのサウジアラビア人と共に働けるのであればそれは私にとってとても大きな栄誉だ」
次世代サウジアラビア人レスラーの卵に対してマンスールは実用的なアドバイスと形象的なアドバイスの 2 つを持っているという。
「実用的なアドバイスはコーチ陣が言うことを注意深く聞くことだ」と彼は言う。「彼らがこうしろと言ったことを完璧にこなせば、あなたに対してはコーチすることができ、あなたには柔軟性があり、パフォーマンスセンターに行ったらあなたはすぐにやることを覚えるのだということを彼らに知らせることになる。リングに上がるのが早くなるのだ」
より形象的なアドバイスは人生で 1 度のこの好機の真価を認めることだという。
「WWE のスーパースターになるというこの仕事には多くの人の多くの犠牲を必要とする。これは単なる遊びではない」とマンスールは言う。「これはあなたが大好きなことであり、もし悩んでいるのであれば、最後にはそのことがあなたのチャンスを損なうことになるのだ。私は言っておきたい。プロレスを始めてそれが一生やりたいと思うようなことでないのであれば、考え直した方がいい。ある特定の人にとっては、これは世界最高の仕事なのだ」