
トルコ南東部に残っている損壊した建物をショベルカーが取り壊し、粉塵が舞い上がる。この地域を壊滅させた2月の大地震の被災者が現在直面している脅威がこの粉塵だ。
5万5000人以上の死者を出しトルコとシリアの各地を荒廃させた2月の地震で壊滅的被害を受けたハタイ県南部の都市サマンダーでは、灰色の細かい粉塵が地平線まで広がり、街を繭のように包み込んでいる。
サマンダー環境保護協会の創設者で会長のミシェル・アティク氏は、「私たちは地震を生き延びましたが、この粉塵に殺されてしまいます」とため息混じりに語る。
「これらの有害物質のせいで呼吸器疾患や肺がんになって死んでしまうでしょう」
地震から5ヶ月が経過したが、必要とされる瓦礫除去・再建作業の規模は依然として非常に大きい。260万棟近くの建物が破壊されたと政府は推計している。
国連環境計画によると、約2億1000万トンの瓦礫を除去する必要がある。
ちなみに、2001年9月11日にニューヨークで発生したテロでワールドトレードセンターの超高層ビルが崩壊した後に除去する必要があった瓦礫は約180万トンだった。
環境活動家や地元住民は、瓦礫除去と再建が急いで進められる中で重要な安全対策が見過ごされているのではないかと心配している。地元住民の健康、環境、経済などに有害な影響が出る可能性があるという不安だ。
サマンダー近郊のごみ廃棄場は、シリアと国境を接するハタイ県に設置されたいくつかのごみ廃棄場の一つだ。地中海やミルレイハ自然野鳥保護区に隣接した場所にある。同保護区は絶滅危惧種であるアオウミガメの営巣地となっている。
アンタキヤ地域にも別のごみ廃棄場がある。ヌール山脈の麓、オリーブの木が立ち並ぶ谷の近くだ。オリーブオイルはハタイ県の主要な収入源だが、廃棄物がオリーブの木に害を与えるのではないかと心配されている。
「リコンストラクト」という団体に所属する環境活動家のカグダス・カンさん(33)は、瓦礫を満載したトラックがサマンダーを出て国内最長級の砂浜に隣接する広大な野外ごみ廃棄場に向かう様子を眺めながら、「彼らはホースで水を撒くことさえしません」と言う。
「他にも候補地はありました(…)しかし、(瓦礫除去の)入札を勝ち取った企業が、燃料を節約するためにここを選んだのです」
「彼らは鉄などの金属を回収することしか考えていません」
「誰もマスクを着けていません。解体現場はカバーで覆われておらず、ホースで水を撒くことも行われていません。トラックの荷台もそうです。法律ではそうするよう決められているのですが」
カンさんが所属する環境団体は人間の鎖を作ってトラックを止めようとしたという。「しかし、警察に介入されました。18人が逮捕され、私は鎖骨を骨折しました」
地元住民は地震後に無数の問題に直面して疲れ切っており、動員に応じなかったという。しかし、彼らも自然保護活動家と同様に、瓦礫除去作業の影響について心配している。
サマンダー中心部の露天で野菜を売るミタット・ホカさん(64)は次のように語る。「まず子供たちが被害を受けており、たくさん咳をしています。私たちもです。風が強くなるとすぐ、全てが砂塵に覆われてしまいます」
スクーターで通りかかった定年退職者のメフメト・ヤジチさん(61)も、「全ての物を覆わなければなりません」と話す。「1日15~20回はテーブルを拭いています。30分ごとに拭かなければならないのです」
サマンダーから約26キロメートル(16マイル)離れたアンタキヤで医師をしているアリ・カナトリさんによると、既に「結膜炎、アレルギー、喘息、気管支炎」の患者が出ているという。
しかし、彼は何よりも、瓦礫や粉塵の中の有害物質によって地域でがんの増加などの長期的な影響が出るのではないかと心配している。
AFP