



タフェガフテ(モロッコ):金曜日の夜にモロッコで地震が発生したとき、ハミド・ベン・ヘンナさんは、家族の夕食用のメロンを切るナイフを持ってくるよう、幼い息子のマルアン君に頼んだところだった。
週末が始まり、家族は子羊肉と野菜のタジン鍋を楽しんでおり、マルアン君は新学期にどのようなものが必要かを父親に話していた。
「そのときに地震が起きました」とベン・ヘンナさんは語った。部屋が揺れ始め、照明が消え、高アトラス山脈の人里離れた村にある昔ながらの家の天井から瓦礫が落ち始めた。
この地震は1900年以降ではモロッコ最強のもので、主にベン・ヘンナ一家が住むタフェガフテのような小さな山村で2,000人以上が命を落とした。
ベン・ヘンナさんともう一人の息子のムアド君は、家が倒壊し始めるところで、よろめきながら開いたドアから路地へ出た。そして、かろうじて妻のアミナさんと幼い娘のメリエムちゃんを助け出すことができた。しかし、粉塵が治まるにつれて、彼らはマルアン君が逃げ遅れたことに気づいた。
この8歳の少年は家の奥に駆け込んでおり、1メートルの瓦礫の下に横たわっていた。
翌日、ベン・ヘンナさんの兄弟が瓦礫の撤去を手伝うため、5時間離れたカサブランカから車で到着した後、マルアン君の小さな遺体はようやく回収された。
父親曰く、学校が大好きで元気いっぱいの男の子であったマルアン君は、土曜日の朝に埋葬された。
困窮
この一家はいま、悲しみに暮れているだけでなく、困窮に直面している。彼らの家財道具や身の回りの品は、すべて倒壊した家の残骸の中に横たわっており、厳しい山の寒さの中で、屋外で眠る3日目の夜を迎える。
ベン・ヘンナさんの収入源である、低料金で近所に荷物を運ぶのに使っていた三輪原付バイクは、落下してきた瓦礫に埋もれ、もう動かなくなってしまった。彼らの家の跡に続く路地は、落石で覆われている。
一家には地震の難を逃れたロバとヤギがいる。しかし、家畜の飼料は倒壊した倉庫に埋まってしまった。また、肉を冷蔵保存することができないため、この家畜を屠殺する意味はほとんどない。
タフェガフテで、今回の災害で無傷であった家はほとんどない。生存者らによると、村民約400人のうち80人近くが命を落とした。大きな瓦礫の山が村に点在している。ベン・ヘンナさんの知人一家は7人が亡くなった。
被災した家屋が倒壊せずにほぼ残った状態であったとしても、被災者が余震から安全に夜を過ごせるよう、小さな畑のオリーブの木の下に複数の家族が集まってシェルターを設置した
ファティマ・ブージディグさんは、落下してきた瓦礫で大きな被害を受けた赤い大型トラックの日陰で、夫とともに座っていた。近くにはロバが草を食んでいた。この夫婦は借金をしてこのトラックを購入したが、今後どうやって返済できるか途方に暮れている。
「暗闇の中で埃に覆われました。地震の音、岩や壁が落ちてくる音が聞こえました…今はご覧のとおり、村は瓦礫と化しています」と彼女は語った。
ロイター