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世界秩序は修正されるべきであり、置き換えられるべきではない

2024年1月26日、南アフリカによるイスラエルに対するジェノサイド裁判の暫定措置を発表するICJ裁判官団。(X: @CIJ_ICJ)
2024年1月26日、南アフリカによるイスラエルに対するジェノサイド裁判の暫定措置を発表するICJ裁判官団。(X: @CIJ_ICJ)
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03 Feb 2024 09:02:53 GMT9
03 Feb 2024 09:02:53 GMT9

先月、国際司法裁判所(ICJ)が、イスラエルはパレスチナ人へのジェノサイド(大量虐殺)行為に関する訴えに応じるべきだとの暫定的判断を下した。差し迫った問いは、次に何が起こるのかということだ。パレスチナとイスラエルの紛争、そしてイスラエルとハマスの戦争という範囲を越え、今後数週間は「国際的なルールに基づく秩序」にとって極めて重要な意味を持つ。

ICJの効力は長らく議論の的であった。理論上、国家の行動を牽制することができる唯一の国際裁判所でありながら、その判決の履行は合意を前提としたものであり、実質的に無力である。実際、国際法を構成する要素として、同裁判所は常に遵守に基づく機関として意図されており、強制力は持たない。

国連は、長引くイスラエルとパレスチナの紛争に和解をもたらすことができなかった。そして今、国際裁判所が招集されたが、おそらく和平をもたらすこともできないだろう。その状況の中で、ルールに基づく世界秩序は、政治的にも、外交的にも、そして今や司法的にも、深刻な危機に瀕しているのだ。

ICJは設立以来、192件の事件を審理してきた。直近の17件のうち16件は現在も進行中で、2018年以降に裁定が下されたのは今回の南アフリカ対イスラエルのケースのみである。この紛争の文脈では、国際システムの司法機関は間違いなく最強の交渉カードであった。隠してきた未使用のカードであり、最後の手段であったが、今は使用済となった。

アラブ世界が、裁判所にはガザの厳しい状況を変える能力がないという避けられない現実に屈したとき、ロシアのような国家は、中東における自らのプレゼンスと影響力をさらに拡大するための新たなカードを手に入れることになる。

ロシアは何年もの間、国際的な世界秩序の衰退を指摘し、米国をその原因として非難してきた。特に「パレスチナ問題」に焦点を当てた過去10年間のいくつかの国連安全保障理事会では、ロシアの代表は、紛争の政治的解決に向けた動きが止まっているのは米国の責任だと非難するのが常套手段であった。彼らは事実上、米国が支配する世界秩序は破綻したシステムだと宣言しているのだ。

ロシア自身がパレスチナ人や他の紛争の被害者に実質的な政治的・人道的支援を提供することは米国に比べてはるかに少ないにもかかわらず、ロシアはアラブを含む世界中で引き続きアピールし続け、支持を増している。

実際、昨年12月の調査では、ヨルダン国民の3分の1が、米国と対立した場合、ロシアに味方することを望むと回答している。これは、わずか4カ月前に尋ねたときの11パーセントからの上昇となる。一方、ヨルダン政府がアメリカを支持することを望むと答えたのは28%で、これはほぼ50パーセントからの減少となる。

このシステムは歴史的な貧困削減率に貢献し、数百万の少数民族に平等な権利のアクセスを提供し、数千の文化遺産を保存する手助けをしてきた。

モハメド・アブ・ダルホウム

同様に、 世論調査「アラブ・バロメーター」のデータによると、2023年秋にはチュニジア人の29%がジョー・バイデン米大統領の中東政策を良いと評価していたが、年末にはわずか6%に減少した。それに比べ、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の政策を良いと答えた人は、2023年の最後の4カ月間、で一貫して50%以上を維持していた。

他の地域でも同様の傾向があり、ロシアはそれを利用している。したがって、ロシアがその増大する魅力を利用して、国際ルールに基づく秩序に挑戦する方法と時期が問題となる。

既存の世界秩序には欠点があり、注意を払う必要がある。変化は確かに必要だが、すべての変化がそうではない。セルゲイ・カラガノフ氏とドミトリー・ススロフ氏による2018年の記事では、世界秩序は崩壊の時期にあり、新しい秩序を創造する可能性の扉が開かれていると主張している。そして彼らは、米国ではなくロシアがその新しい秩序を主導すべきだと信じている。

この主張は昨年10月、バイデン氏の演説に対するドミトリー・ペスコフ報道官の反応の中で繰り返された。バイデンは平和を築くために、新しい秩序で世界を団結させるべきだと述べた。バイデンが語る「新しい秩序」は変更や修正を意味するかもしれないが、「大ユーラシアパートナーシップ(GEP)」を前提とするロシアの「新しい秩序」はパラダイムシフトを予感させる。

この、ロシア中心の世界秩序へのシフトは、必ずしも彼らの宣言通りに平和と安定につながるとは限らない。例えば、ウクライナ、台湾、インド、韓国、日本などがこのパートナーシップに適合しない場合はどうなるのか。このように、この枠組みは本質的に「我々対彼ら」という実存的な難問を作り出しているのであり、その影響は、特に国家が同盟関係を決定するための短い時間枠を考慮した場合、深刻だ。

これはまた、個人の権利や自由、特にマイノリティ・グループにとっては逆効果である。新しい世界秩序の原則を「主要国」が決定することに重点を置くことは、世界中の何百万という人々の生活を危険にさらす可能性が高い。

現在の国際ルールに基づくシステムには欠点もあるものの、その成功もあった。このシステムは歴史的な貧困削減率に貢献し、数百万の少数民族に平等な権利のアクセスを提供し、数千の文化遺産を保存するなど、多くの注目すべき成果がある。

欠点についても、ロシアが提案するパラダイムシフトに伴う、破滅的かつ歪んだ世界的影響というリスクを取ることなく対処することができる。むしろ、現在の国際ルールに基づくシステムに必要なのは、国際法を守り、執行するための明確なメカニズムを制定し、誰も法を超えた存在にならないよう、平等を確保することである。

  • モハメド・アブ・ダルホウム氏はMENAACTIONの代表であり、NAMA戦略情報ソリューションズのシニアリサーチアナリストである。
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