
ナジャ・ホウサリ
ベイルート:レバノンのスーパー経営者たちは、顧客への新しい支払システム導入に関し、レバノン銀行が取った「強硬策」を非難した。
スーパー経営者組合のナビル・ファヘド代表によると、レバノン中央銀行が実施した変更のせいで、市場の「低流動性」を理由として、購入金額の50%を現金、50%を銀行カードで支払うよう要求されているという。
この動きは、ガソリンスタンドのオーナーたちが全額カードによる燃料代金の支払いを拒否する決定を出した同日に起きた。
経済学者のジャセム・アジャカ博士は、この決定がもたらす影響について、「物価が上昇する一方で、市民が銀行から引き出せるレバノン・ポンドの紙幣額は制限されている。この状況が続く限り、経済的に壊滅的な状態だ」と述べた。
同氏は、「このような状況下では、人々の消費も減少するため、GDP低下と経済の大きな収縮が引き起こされる」と主張した。
経済社会評議会のシャルル・アルビド議長は、「レバノンはインフレ不況に陥っている。つまり、消費と経済の動きが滞っている」と述べた。
エネルギー・運輸分野の運用価格も上昇していることから、同氏は「政府レベルで雇用者や労働者と共に解決策を考え、それを実行できるよう、現実的な参加型対話を今すぐ開始する必要がある」と述べた。
同氏はまた、「魔法のように素早く実行できる解決策はない」とも述べた。
その一方、レバノン銀行協会は、軍を含む公共部門の従業員に対し、政府承認の給付金を支払う予定だ。
この給付金は、月給の半額を追加するのと同等の額で、最低150万レバノン・ポンド(993ドル)から最高300万ポンドとなっている。うち6割は現金で支払われ、残りの4割は銀行カードや小切手など、その他の手段で振り込まれる。
行政職員協会のナワル・ナスル会長は、「もうこのようにばかげた大規模な施策を実行する余裕は、我々にはない」と語った。
同氏は、「人々はこれまで一日中働いてきたが、このような施策が適用されたら、それをやめるだろう」と述べた。
世界の石油危機と、それを深刻化させているロシアのウクライナ侵攻の影響は、レバノンにも及んでいる。
地中海沿岸国であるレバノンでは、1ガロンのガソリンが現在50万ポンドもするため、現金支払いが要求されている。
自家用発電機所有者グループのアブド・サーデ代表は土曜、「発電機に使用するディーゼル油の価格が上がっており、月々の利用料金も30%~40%上がるだろう」と警告した。
ディーゼル油の価格は、現在80万~200万ポンドの範疇にあるが、消費量によってはさらに値上がりする可能性もあるという。
サーデ氏は、「3月15日以降は、人々が消費額を支払えなくなり、(流動性が)過小化することで、ほとんどの地域で発電機が停止する可能性がある」と付け加えた。
レバノンは、2年前から深刻な経済危機に直面しており、海外への銀行送金が出来なくなっており、新たな預金管理の規則を導入した銀行もある。
レバノン・ポンドやドルでの引き出し上限額は、もはや国民が必要な額に見合うものではなくなっている。
貿易業者たちは、輸入業者に商品代金を現金で支払っており、このような施策に頼らざるを得なかったと主張する。
アジャカ博士は、「なぜ現金支払いをするか?第一に、供給先が現金支払いしか認めないからだ。つまり問題は供給先にあり、その理由を調査する必要がある。第二に、貿易業者は違法業者と取引しているからだ。第三に、状況が悪化したときの安全策として、現金を持っておきたいからだ」と説明する。
アジャカ博士の指摘によると、貿易業者は「銀行は、毎日の売上を銀行に預け、従業員の給与支払いを現金で送金するよう要求している」と主張している。
さらにアジャカ博士は、「現金に頼ることで脱税が増えた。貿易業者たちは売上を少なく申告し、銀行部門から経済に還元される財源を奪っている」と指摘した。
ベイルートのある銀行の支店長は、匿名を条件にアラブニュースの取材に答え、「レバノン銀行は、ドル為替レートを操作する闇市場抑制を目的とする措置に加えて、レバノン・リラ(ポンド)から市場を切り離すためにバンキングテキストを促進している」と述べた。
「同時に、レバノン・リラの流動化を求める銀行の要請には応じず、流動性は市場に求めるよう各銀行に要請することを決定した」
同支店長は、「レバノン中央銀行は、大量に出て行ったリラが流通を通じて中央銀行に戻ることはなく、流動化しなかったと考えている。では、大量のリラはどこに行ったのか?倉庫にしまい込まれたか、闇市場に流れたかのどちらかだ」と付け加えた。
同情報筋によると、「ギリシャも経済危機の際に同じ措置を取ったが、長期間の適用は無理だ」という。
アジャカか博士は、当局が貿易業者に対し、銀行カードによる支払いを義務付ける法律や政令を出す可能性が高いとみている。今のまま、現金払いを続けることはできないからだ。