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「OPECプラス」会合 ― 原油市場のリバランスに向けた正しい一歩

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08 Jun 2020 09:06:21 GMT9
08 Jun 2020 09:06:21 GMT9

石油輸出国機構(OPEC)とロシアを中心としたOPEC非加盟国10カ国が3年半にわたり開催してきた「OPECプラス」会合は土曜日、予定どおり終了した。

「OPEC プラス」は、4月に決定した歴史的規模の協調減産について、7月31日までさらに1カ月延長することを決めた。

メキシコの日量10万バレルが終了となるため、新たな減産量は日量970万バレルではなく日量960万バレルとなった。これでも依然として7月に予定されていた当初の減産量を190万バレル上回る。

4月には、減産量を2020年7月から12月までの間に770万バレルに段階的に緩和することで合意していた。さらに2020年4月30日までは日量580万バレルで合意した。

共同声明では、サウジアラビア、UAE、クウェート、オマーンが6月に実施した120万バレルの追加減産と、カナダとノルウェーによるさらなる減産の貢献に対し感謝の念が示された。

湾岸協力会議(GCC)加盟国による追加減産の延長は、市場がリバランスし始めている兆候として、6月以降に終了する予定である。

ロシアと特にサウジアラビアは、加盟国間の不履行の割合を抑制しようとしていたため、合意への道のりに障害がなかったわけではなかった。最大の原因はイラク、ナイジェリア、カザフスタン、アンゴラで、これらの国で合わせて日量100万バレル以上の不履行があり、これにより履行率は77%にまで低下した。減産割り当てを履行できなかった国々の中でも、イラクは圧倒的に最大の遅れをとっていた。

この共同声明によると、これらの国々は7月、8月、9月の減産割り当ての不履行を埋め合わせる意思があるという。ナイジェリアのティミプレ・シルバ石油相は、「我が国は減産量割り当て履行を達成できない国による埋め合わせの考えに同意した。」と公式見解を述べた。

OPECプラス」は、その迅速かつ断固とした行動により、石油業界全体に大きな貢献をしたことは明らかである。

コーネリア・マイヤー

サウジアラビアのアブドゥルアジズ・ビン・サルマンエネルギー相とロシアのアレクサンダー・ノヴァク相が議長を務める共同閣僚監視委員会(JMMC)が月1回のペースで会合を開くことになり、ロシアもサウジアラビアも履行状況を厳しく監視することになるだろう。

これはOPECにとって大きな勝利であり、減産の延長を主張し続け、減産の履行に固執していたアブドゥルアジズ王子にとっては特にそうである。サウジアラビアが不履行を埋め合わせするのは不公平であるだけでなく、これは収入の面だけでなく市場シェアの面でも費用がかかる、という彼の指摘は理にかなっている。

「OPECプラス」は、世界全体の在庫が約10億バレルに達する中、市場のバランスを整えるため、減産の第一段階を延長するという唯一の責任ある行動をとった。経済のロックダウンが解除され、特に中国の消費は世界的大流行以前のレベルに近づいているものの、在庫は依然として高水準にある。特にディーゼルとジェット燃料がそうである。ディーゼルは経済活動の重要な指標である。

OPECとIEAは2020年の需要縮小を日量860万バレルから910万バレルと予測した。それは4月に行われた1月の水準からの急激な30%の減少よりも少ないかもしれないが、依然として歴史的な需要の減少である。これらの記録的な数字の回復は大変困難なものとなるだろう。そしてその速度は、世界の景気回復の形とその速度に左右されるだろう。アブドルアジズ王子の言葉を借りれば 「我々には将来を慎重に楽観視できる理由がある。しかし、我々はまだ森の中から抜け出したわけではない。」

土曜日の会合では、ロシアもサウジアラビアも、市場シェアのための短い戦争が繰り返されることを望んでいないことが強調され、景気後退と相まって石油市場に壊滅的な影響を与えた。このことが、今回の減産が合意された4月会合の開催につながった。

金曜日、ドナルド・トランプ米大統領は、アメリカのエネルギー産業を救ってくれたとロシアとサウジアラビアに感謝の意を表明した。トランプ大統領はこれまでの会合の中で、4月の合意に至る間で役割を果たしており、今回の会談前にはサウジアラビアのモハメド・ビン・サルマン皇太子やロシアのウラジーミル・プーチン大統領との電話会談も行っていた。

会談後、ダン・ブルイレット米エネルギー長官はこのようにツイートした。「石油需要の回復が続き、世界経済が再開する中、重要な合意に至った本日の『OPECプラス』の合意に拍手を送る。」

これだけの称賛されている中でも、生産者やアナリストは米国のシェールオイルの見通しを注視しなければならないだろう。価格が上昇すると、一部のシェールオイル生産は再び採算が取れるようになり、米国では閉鎖されていたリグが次々と稼働するようになる。この展開の速さは、原油価格の軌道に左右されるだろう。国内の政治的動向によっては、リビアはもう一つのワイルドカードとなる可能性がある。

ブレントは「OPECプラス」会合の結果を受けて反応が良く、中央ヨーロッパ標準時の日曜日の早朝までに、5.8%増のバレル当たり42.3ドルに達した。同時にWTIは4月20日に5月先物がロールオーバーされた際のマイナス37ドルを大きく上回る39.55ドルとなり、40ドル台に接近した。

「OPECプラス」が、その迅速かつ断固とした行動により、石油業界全体に大きな貢献をしたことは明らかである。

問題は、この回復がどれだけ持続可能かということである。そしてそれは、原油価格の上昇により、需要と上昇した供給量の両方がどれだけ市場に影響を与えるかにかかっている。

・コーネリア・マイヤーは、ビジネスコンサルタント、マクロ経済学者、エネルギーの専門家である。ツイッター@MeyerResources

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