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原油市場は調整局面に入るが、ボラティリティが支配的

画像:AFP
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22 Aug 2022 07:08:12 GMT9
22 Aug 2022 07:08:12 GMT9

世界経済見通しの悪化は、引き続き市場心理に重くのしかかっている。対照的に、中国の経済活動が期待外れになる兆候や、欧州の大半で景気が低迷する兆候にもかかわらず、今後数カ月に供給が増加するとの見込みから、供給見通しは改善した。

最近の中国の鉱工業生産と小売販売の指標は、世界経済の短期的な道筋に弱気心理をもたらしており、原油価格の短期見通しに影響が及ぶ可能性がある。

最近、米国でジョー・バイデン大統領がインフレ抑制法に署名し、エネルギー安全保障と気候変動対策の分野に今後10年間で3700億ドルの支出を確保したことも、市場動向を変化させる要因になった。

イランとの核協議が進展したとの観測や、景気後退の懸念がますます強まったことで、ブレント指標は引き続き押し下げられた。

米国の住宅着工件数が予想を下回ったことも、エネルギー市場に長い影を落とした。住宅着工件数は米国経済の先行指標とみなされているためである。

米国のメキシコ湾にあるシェルとシェブロンの海上プラットホームの一部で短期間の停止後に生産が再開されたことも、供給面から弱気をもたらした。

サウジアラムコは、必要に応じて日量1200万バレルまで増産することを表明し、リビアが最近の生産停止後に日量120万バレル水準に常に留まっているにもかかわらず、弱気心理が強まった。

リビアの増産とカザフスタンのメンテナンス後の生産量回復により、短期的には世界の原油供給量が増加し、市場の懸念は和らぐだろう。

また、ディーゼル価格は、欧州の天然ガス不足が価格上昇を下支えしているため、時節柄2020年第4四半期まで高値を維持する。

今後数年にわたり、欧州のガス供給制約のために価格上昇が長引くことが予想される。

天然ガスを原料とする水素の供給が限界に近く、ディーゼルや、程度は低いもののガソリンの生産コストが上昇し、製品価格を押し上げる。

ガソリンと中間留分は、2019年の正味水準を超える供給力があるため、数四半期にわたり軟化する。

特に天然ガスの使用量がピークを迎える冬季には、天然ガスの供給が途絶する事態が予想される。天然ガス価格の上昇はディーゼル価格に相当な影響を及ぼすだろう。世界的な景気後退による下振れリスクも存在する。

2月24日のウクライナ侵攻開始後にEUがロシアに制裁を科して以来、海上輸送でのEUへの原油輸入は2022年4月以降わずかに減少している。

しかし、今後予定されるロシアに対する第6次の制裁措置が2022年12月5日までに完全に実施された場合、EUは原油輸入不足に直面する可能性がある。

ハンガリー、スロバキア、チェコ共和国など内陸部にあるいくつかのEU加盟国は、原油禁輸措置を一部免除されており、陸路のドルジバパイプライン経由で若干のロシア産原油の輸入を続ける。

この免除措置にもかかわらず、EUは12月5日までに、日量120万バレルの海上ルートでのロシア産原油輸入と、同50万バレルのドルジバパイプライン北枝経由での輸入の代替となる供給源を見つけなければならない。

EUの制裁が有効に実施された場合、12月にEUのロシア産原油輸入量は激減する。

現在の在庫水準や今年いっぱいの予想在庫水準に比べて、現在の市場はやや売られ過ぎの印象がある。そのため、イラン核協議に予想外の前進が見られないかぎり、原油価格の現在の下落傾向はすぐに終わり、価格が下支えされるようになるだろう。

今後数カ月に、イラン核協議の決裂、リビアでの計画外供給停止の増加、米国でのハリケーンに起因する供給停止が起こる可能性を考慮すると、価格リスクは高まりそうである。

ドイツのライン川の水位が低いため、内陸部の市場へのディーゼル搬入が困難になり、その結果、ディーゼルの需給バランスがさらにタイトになり、欧州のいくつかの地域で製品価格の上昇圧力が発生する可能性がある。

  • モハメド・アル・シャッティ氏はクウェートの石油アナリストである。
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