
ナジア・フッサーリ
ベイルート:金曜日に公開された新作ドキュメンタリーはレバノンの人々が経験している貧困をあらわにする。深刻な経済・金融危機と新型コロナウイルス感染症のパンデミックとの闘いが続く国内の状況を映し出している。
人道支援機関ケア・インターナショナルが公開したドキュメンタリーは、レバノンの人々が直面する「複雑かつ危険な環境」に光をあてている。
映画にはベイルートとトリポリで暮らす5人が登場する。そのうちの1人、60歳のユセフ・ビタール氏は路上で眠る生活をし、家庭料理と屋根を夢みている。
かつてビタール氏は人出の多い日曜市で骨董品を販売し、良い暮らしをしていた。ところが、都市封鎖のために働いたり、稼いだりすることができなくなった。「私はどこへ行けばいいのか」と彼は問う。もう4か月間、シャワーを浴びていないという。
16歳のシャディは学校をやめ、父親を手伝って働き始めた。「週75,000レバノン・ポンド(59.75ドル)稼いでいる。日曜日にジュースとサンドイッチを買うため、少しだけとっておく」と言いながら、目に涙をためている。彼は携帯電話を50万レバノン・ポンドで売り、代金を父親に渡した。きちんとした衣類、電話、学校、車を望んでいる。
ケア・レバノン地域責任者のブジャール・ホシャ氏は、「ドキュメンタリーで、昨今多くのレバノン家庭が直面している複雑で危険な環境に少しでも光をあてたいと考えた。貧困線を下回る世帯が日に日に増し、懸念は高まっている。さらに状況は悪化すると予測される」。
ナディーンは11歳のときに失明した女性だ。果物と野菜の価格が異常に上がり、子どもたちに食べさせられなくなるのを「日課のように」心配している。
「隣人や教区も助けてくれるが、安心はできない。夢は視力を取り戻して子どもたちの顔を見ること」。
70歳のジャミラは3人の子どもの母親であり、祖母でもある。3年前、営んでいた仕立店の家賃が払えなくなり閉店した。
現在は自宅で仕事をしている。「以前は毎月17万レバノン・ポンドの収入があったが、今は10万レバノン・ポンド以下だ。家賃のために借金をしているのに、どうして電気代や発電機使用料を支払えるのか」。
16歳のヌーアは、幼い頃に両親が離婚して以来、祖母と暮らしている。彼女は祖母の苦労が減らないのを心配し、生活のために隣人から借金をしている。
「長い文章はなかなか読まれないが、映像ドキュメンタリーは人道問題を理解する上で適している」とホシャ氏はアラブニュースに説明した。「地元の組織の努力では助けきれないレバノンの状況を支援するために、この映画でできるだけ多くの寄付者に訴えることを目指している。世界がレバノンを救うには、現地で何が起こっているのかを知らなければならない」。
金曜日、未来運動のメンバーであるワリード・アル・バーリーニ議員は、壁に隠れている貧困は「社会的爆発」につながっていく、と警告した。
アル・バーリーニ議員は、レバノンで最も貧しい地域アッカール県の代表だ。「市民は日々、戦時中さえ経験しなかったような非日常を生きている。当局は速やかに救援体制を敷き、危機を脱出しなければ、手遅れになる」。
世界銀行の代表団は、金曜日にベイルートでレバノンのガジ・ワズニ財務大臣と会談した。
銀行のフェリード・ベルハジ中東・北アフリカ地域副総裁は、「特に貧しい人々に希望の光を与える」ためには、社会的セーフティネットが重要かつ不可欠だとされる、と話した。
ベルハジ副総裁は、「社会的セーフティネットの計画が実行される場合」、世界銀行として経済の影響を受ける家族を支援する資金を増やしていくと語った。
今月初旬、世界銀行は、レバノンの危機は過去150年間で特に深刻な危機だと述べている。