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大統領の「飽くなき権力欲」がレバノンを引き続き膠着状態に

2021年8月3日、ベイルート港爆発事故から1周年となる日の前日、レバノンのバーブダにある大統領府で、ミシェル・アウン・レバノン大統領。(ロイター)
2021年8月3日、ベイルート港爆発事故から1周年となる日の前日、レバノンのバーブダにある大統領府で、ミシェル・アウン・レバノン大統領。(ロイター)
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11 Aug 2021 04:08:10 GMT9
11 Aug 2021 04:08:10 GMT9
  • ミシェル・アウン大統領とナジーブ・ミカティ首相候補との新たな会談は設定されていない
  • 双方の主張はますますかけ離れ、今ではアウン大統領は内務省と司法省まで要求しているようだ

ナジャ・フーサリ

ベイルート:ハッサン・ディアブ首班政府が内閣総辞職してから1年が経過した。ベイルート港爆発事故の5日後に当たる2020年8月10日、ディアブ首相はレバノン国民に向けて演説を行い、「腐敗のシステムは国家より大きい」ことを理由に辞任を決断したと表明した。

以来、ディアブ氏は暫定首相の地位に就いているが、その政府は果てしない深みへと日々なだれ落ちていくこの国にあって決断ができない。

この暫定内閣の期間は、レバノン政治史上最長となっている。これまでに3人が首相候補に指名されたが、まだ組閣できていない。ミシェル・アウン大統領とナジーブ・ミカティ首相候補との新たな会談は設定されていない。

これまでの6回に及ぶ両者の会談に関して漏れ伝わってくる情報からは、双方の主張はますますかけ離れ、今ではアウン大統領は内務省と司法省まで要求しているようだ。

ナビーフ・ビッリー国民議会議長とヒズボラ内の盟友は、中央銀行の金融業務担当理事を務めるシーア派の人物を指名して財務省を乗っ取ろうとしたが、アウン大統領はこの提案を拒否した。大統領は中央銀行の口座に対する犯罪捜査を求めているためだ。

新型コロナウイルスの陽性者と接触したために自己隔離中のディアブ首相は、8月10日、レバノン国民に向けて次のように語った。「まだ組閣に成功していないが、次の内閣は国際通貨基金(IMF)との交渉を再開するはずだ。これは崩壊の一歩手前の現在の差し迫った状況から脱出する唯一の方法だ」

ディアブ首相は、「既存のいかなる政府も、外部からの支援と実行計画がなければ構造的な危機に対処できないだろう」と警告を発した。

未来運動グループの国会議員モハメド・ハジャール氏は、「これまで組閣に失敗しているのは、アウン大統領とその義理の息子である国会議員のジブラーン・バシール氏の一味が原因だ。2人はこの国を自分たちの利益に奉仕する、自分たちが采配を振れる国家に造り替えることを望んでいる。アウン大統領は内閣を支配したいと考えている。だから、議会選挙が実施されなければ、大統領は憲法に規定されているファトワ(勅令)で自身の任期を延長して、権力の座に留まることを望んでいる。アウン大統領は、1989年に分離主義者の内閣を乗っ取った出来事の再現をいとわない」とアラブニュースに語った。

ミカティ首相候補とアウン大統領の協議では、大統領が24名の閣僚のうち12名を要求している、とハジャール氏は主張した。「この話は真実だと請け合える。大統領は望む内閣を手に入れるまで、いくらでも新たな口実を見つけてくるだろう。大統領の基準は、義理の息子と大統領本人の利益だけだ。国家の利益などどうでもいい、ということだ」

現在起こっている事態に関してヒズボラはアウン大統領の味方だ、とハジャール氏はいう。「ヒズボラが政府を欲しているなら、アウン大統領やその政治グループに圧力をかけているだろう。だが、実際に目にする光景はそのようにはなっていない。それに、ヒズボラがレバノンの利益に注意を払っている、と私たちを納得させることなど不可能だ。ヒズボラはイランの利益のために活動している。ヒズボラはレバノンを崩壊しつつある状態に押しとどめて、これをイランが握っているカードにしている」

武装グループによる最近のイスラエルへのロケット砲攻撃については、アラビア海での緊張に応答して、ヒズボラが南部国境で緊張を高めるのは、イランへの奉仕以外の何物でもない」と述べた。

2020年9月に、アウン大統領は 「組閣できなければ、私たちは地獄に突き進むことになる」という警告を発している。当時、大統領はシーア派コミュニティに財務省を与えることを拒否して、自らのものにしようとしていた。

レバノン国民はアウン大統領の「地獄」というコメントを引用するようになっている。国民の首に巻かれている絞首刑のロープがきつくなってきているためだ。

10日、労働組合連合トップのビシャーラ・アル・アスマール氏は、ディーゼル燃料不足で多くの工場が操業を停止したという報告を受けたと明かした。それ以外の工場も、燃料がなくなり次第いずれ追随するという。

病院は、自家発電機を数日間運転させる量しかディーゼル燃料が残っていないと発表している。

10日、国際移住機関は、12万人の出稼ぎ労働者が、「レバノンを苦境に追いやっている経済崩壊の加速で、緊急人道支援を必要としている」と警告を発した。

一方、レバノンのガソリンの備蓄量はあと5日分しかない。2隻の船舶がレバノンへの入港許可を中央銀行から得たが、到着日すらまだ定まっていない。

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