
ジルベゴズ:トルコとシリアの国境、オリーブの木々に囲まれて、人道支援物資を積んだトラックが列をなして、シリア紛争地域への入国許可を待っている。
支援物資の中には、おむつや毛布の他に、小麦粉、ブルグル、砂糖、ひよこ豆、栄養不良の子供のためのピーナッツペーストがそれぞれ入った15キロ(33ポンド)の袋もある。
国連は、シリア反体制派の最後の主要拠点に住む何百万人もの困窮した人々に支援物資を届けるため、毎月約800台のトラックをジルベゴズの検問所を通して送っている。
シリア側ではバブ・アル・ハワと呼ばれるこの国境検問所は、国連の支援物資をイドリブの拠点へ届けるための唯一の通過地点だ。
ところが、この検問所で7月10日から国連のトラックの通過が禁止されることになっており、イドリブの多くの人々が切実に必要としている支援物資が届かなくなることを多くの人が恐れている。
ダマスカスの体制の同盟国であるロシアは、国連安全保障理事会の決議において拒否権を行使して、越境搬入の許可を更新する努力を阻止すると脅しをかけている。
観測筋によると、ウクライナ侵攻に対する懲罰的制裁を受ける中で、ロシアはこれを交渉材料として利用している。
国境付近にある国連の積み替え基地を先週訪れた国連のマーク・カッツ人道副調整官は、「決議が更新されなければ大惨事になると思う」と言う。
シリア内戦の開始から11年、トルコ国境のイドリブの拠点では、300万人が武装勢力の支配のもとで暮らしている。
その半数は故郷を追われて国内の別の場所に移住した人たちで、国際援助に大きく依存している。
リンダ・トーマスグリーンフィールド米国連大使も木曜日に現地を訪れ、支援物資がバブ・アル・ハワを通過できなくなった場合に起こる事態を懸念していると述べた。
「人々がさらに苦しむことになる」と彼女は言う。
ロシアは、支援物資は代わりに紛争線を横切ってダマスカスの体制が支配する国内地域を通ればいいと主張している。しかし、それでは反体制派掌握地域への支援が大幅に減ってしまうと批判者は指摘する。
トルコのハタイ県では、シリアの救援隊員のアマル・アル・セルモ氏が、訪問中の国連大使にイドリブ内の状況を説明し、越境許可が更新されなければ悲惨なことになると訴えた。
「この命令には他の選択肢がない。越境支援は選択肢にない」と、ホワイト・ヘルメットのメンバーは言う。この組織は、反体制派掌握地域に対するロシアによる空爆後に民間人の救援活動を行ったことで最も良く知られる。
反体制派を支援するトルコは特に、シリアへの支援物資の流れを維持したいと思っている。既に370万人いる国内の難民をこれ以上増やしたくないからだ。
トルコ政府は既に、シリアのクルド人勢力から奪取した国境沿いの東側一帯の土地に100万人のシリア人を帰す計画を発表しているが、この計画はダマスカスの体制を怒らせた。
ジルベゴズでトラックが1つずつ調べられている時、トルコ政府関係者のオルハン・アクトゥルク氏は人々を安心させようと努めた。
「私たちの地元のNGOは、何があっても支援物資を届け続けるつもりだ」と、当該地域周辺にあるハタイ県の副県知事は言う。
ある人道支援関係者によると、トルコ赤新月社が国連に代わって全ての支援物資を運ぶことを申し出たという。
毎月平均500台のトラックを国境の向こうに送っているトルコ赤新月社のケレム・クヌク代表からは、すぐにはコメントがなかった。
しかし、ヒューマン・ライツ・ウォッチのシリア研究者であるサラ・カヤリ氏は懐疑的だ。
「国連の越境搬入に代わる実行可能な選択肢」がほとんどないと彼女は言う。
トルコの慈善団体やその他の国際NGOにとっては、国連の活動範囲に匹敵することは難しいし、国連に対する支援者の信頼と同じくらいの信頼を得ることさえ困難だろうと、彼女は言う。
イドリブの避難民キャンプにいる39才のモハマド・ハルモウシュ氏は、自分と妻と6人の子供たちは海外からの支援物資に頼っていると言う。
「支援物資は私たちにとって非常に重要だ。もし止まったら悲惨なことになる」と彼は言う。
AFP