
ガザ: 14年ぶりに初めて自分の農地に戻ったパレスチナ人の農民ナセル・アブ・イサイードさんは、かつて実り豊かであったその土地で起きた紛争がもたらした大きな損害について調査した。
「無数の穴と枯れた雑草で覆われた空き地と化していました。」と、かつてイスラエルとガザの不安定な国境沿いの地域で果物を栽培していたアブ・イサイードさんは述べた。
彼は、赤十字国際委員会(ICRC)が立ち上げたプロジェクトに基づき、作物を栽培するためにイスラエルとの国境沿いにある自分達の農地へのアクセスを回復した約600人のパレスチナ人農民の中の1人である。
イスラエルは安全保障上の懸念を理由に、長年にわたって長さ40kmの国境の壁沿いの100m×300mの土地をハマスが支配するガザ地区のパレスチナ人の立ち入り禁止区域に指定してきた。
パレスチナ人は、この政策が農民から農地の大部分と生計手段を奪い、200万人の人口密集地であるガザ地区の居住スペースを減少させていると主張している。
2015年に立ち上げられたICRCのプロジェクトの下、ハマス政権の内務省は、国境地帯の2,500エーカーの土地の40%の地域から不発弾やその他の戦争の遺物を除去してきている。
アブ・イサイードさんは、昨年8月に始まり、5月の収穫を経て終了する第3段階のICRCプロジェクトで農地が修復された90人の農民の中の1人である。ICRCの発表によれば、全体で約580人の農民が自分たちの農地へのアクセスを回復したという。
イスラエル当局、ガザ地区の農業省、地方自治体、農民委員会が協力して企画した取り組みの一環として、ICRCが雇用した労働者たちが農地を耕し、肥料を与え、小麦の種を蒔いた。
「私たちは、毎回死の危険を冒してこの農地に入っているのです。」と、71才のサーヘイ・アブマンデールさんは、すぐ間近で国境のイスラエル軍の監視の目が光っていることを指摘しながら述べた。彼の一家は、12エーカーの農地を所有し、エンドウ豆、大豆、小麦、レンズ豆などを栽培していた。
他のパレスチナの農民と同様、アブマンデールさんも、イスラエル国内の農家が散布した除草剤が風にのって国境を越えてガザに持ち込まれ、パレスチナの農地に害を及ぼしていることに不満を漏らしている。
農民たちは、その除草剤が彼らの作物をだめにしているとしており、 ガザ地区の農業省は、昨年12月以降の損失は125万ドルに達すると見積もっている。
ICRCのガザ地区の広報担当スヘア・ザッカウトさんは、この問題についてはイスラエル側と話し合い中であるとした上で、「安全保障上の懸念と除草剤が地元の人々の健康、環境、生活に及ぼす影響との間にはバランスが存在すべきであると考えています。」と、ロイターに対し語っている。
ロイター