
タリク・アリ・アーメド
ダボス: サウジアラビアの2030年万博の招致は一過性の短期的な投資案件ではなく、「サウジ市民、住民、ビジターの未来への投資」であると、リヤド王立委員会のファハド・アル・ラシードCEOが述べた。
「私たちは、会場がどのようなレガシーを残すのか、そしてそれをいかに活かし得るのかについて考え続けています。ただ何かを建てて、皆が荷物をまとめて去って終わりというわけにはいかないのです。私たち以降の未来にも活用され続けていかなければならないのです」。
「そういうわけで、私たちは、建造物のデザインを検討し、次に、未来の仕事、未来の教育、再教育に活用できるように、敷地の基本計画に建造物を組み込んでいます」と、アル・ラシード氏は付け加えた。
世界経済フォーラムの年次総会の付随イベントとしてダボス会場のプロムナードに設置されたCNBCパビリオンで行われた歓談で、アル・ラシード氏は受賞歴に輝くニュースキャスターのエマ・クロスビー氏と談話した。アル・ラシード氏は、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子のビジョン2030関連で既に行われている作業工程を考えると、2030年万博のインフラは完成に向けて無理なく進行すると述べた。
アル・ラシード氏は万博の構想は、しかし、外観や雰囲気だけに留まるものではなく、会場の残すレガシーにも向けられている。
「2030年万博が残すレガシーは建造物ではありません。それは、大規模な、これまでに無かったようなスケールの、関与であり参加でなければならないのです」。
「2030年万博は文字通り世界最大のイベントであり、私たちが心を砕いているのは、次のようなことです。来場者数が3,000万人、4,000万人というのは素晴らしいことで新記録ですが、それだけではなく、メタバースで10億人の人々に交流していただこうとしています。私たちはこの構想を実現しようと作業を進めています」。
このバーチャル万博は、リヤドを飛行機で訪問できない人々のためのものだが、RCRCのCEOはそれが単なるバーチャルツアー以上のものであると述べた。
「10億人に実際にアクセスして見いただく機会を提供できたら、それが1つ目の勝利になるでしょう。アクセスした後に、水資源やエネルギーの利用について何か実験的なことを行い、学びを得て、自宅で応用していただけたら、それが第2の勝利になります。このようにして大きな影響を及ぼすことができるわけです」。
「そして、取引業務や仕事、友人や仲間と会ったり、投資を得たりといったことすらもバーチャルにできれば第3の勝利です。それなので、繰り返しになりますが、活用していただくためには、誰にとっても有用なものでなければならないわけです」と、アル・ラシード氏は付け加えた。
それでも、来場者数が3,000万人に達したとしたら、2020年のドバイ万博の来場者数が6ヶ月で2,600万人だったことを勘案すると、これまでに無かった快挙ということになるだろう。
「素晴らしい会場、移動の便利さが必須となります。私たちは既にそうしたことに取り組んでいます。そして、地下鉄が会場に接続されるようになります。会場は空港のすぐ南です。なので、会場は事実上リヤド市街への入口というわけです。そして、14万の部屋と客室を開催までに用意します。つまり、万博は無理なく開催可能というわけです」と、アル・ラシード氏は述べた。
サウジアラビアは、最も神聖な2つのモスクに毎年数百万人のメッカのハッジの巡礼者が訪れることから、多数の訪問者を受け入れることの経験は積んでいる。
とは言うものの、複雑な万博会場の建設は安価ではない。この計画の実現のために、サウジアラビア政府から80億米ドルという途方もない投資が行われることになっている。
「非常に巨額の投資になります。完全に理にかなった投資だと信じています。私たちは、この投資に対して、投資収益率の目標値を設定しました。万博会期中とその前後に創出される雇用という社会経済的な目標も設定しています」。
「ですから、サウジアラビア政府は、建造物やインフラ、その他使い道が無くなってしまう無用の長物にお金を注ぎ込んでいるわけではないのです。私たちは実際にすべての投資について収益を求めています」と、アル・ラシード氏は続けて言った。
サウジ万博のテーマとなる「明日への展望」について、アル・ラシード氏は、「このテーマは、私たちが私たちの未来について責任を負わなければならないということを意味しています。国として、企業として、個人としてです」。
「これからの2、30年を見通し、得られるチャンス、また、課題を注視し、それらに取り組まなければなりません。私たちは機会と試練の両方を直視する必要があるのです」。
このテーマに沿って、3つのサブテーマが設定されている。異なる明日、気候変動対策、すべての繁栄である。
第1のサブテーマの全体像を伝えるために、アル・ラシード氏は、ロボット工学のおかげで200人の従業員が必要だった工場が3人の従業員だけで十分になった例を挙げた。
「工場の生産性は向上したわけですが、職を辞した197人の元従業員たちはどうなるのでしょうか? 再教育について考えなければなりません。私は、この問題に直面して、その対応ために社会経済的観点から何を行う必要があるのかをすぐに考えてみたのです」。
「第2のサブテーマである気候変動対策も同様です。私たちは何をする必要があるのでしょうか?各国が会合を開き、スーツで将来どうなるのか話し合うだけでなく、私個人がどのように貢献できるのかということではないでしょうか? 今までとは異なる水資源の有効活用とは個人レベルではどうすれば良いのでしょうか? エネルギーの場合はどうでしょうか?自分個人の果たせる役割とは何でしょうか?」
第3のサブテーマについて、アル・ラシード氏は、「すべての人に機会を提供するにはどうしたら良いのでしょうか? 受け取ってもらえなかったとしても、私たちはそれを提供しなければならないのです」。
首都リヤドは、既に気候変動対策と持続可能性への取り組みを開始しており、関連プロジェクトに700億米ドル以上の投資を行っている。
アル・ラシード氏は、「持続可能性に全力を尽くすことなく超成長戦略を発表することはできないと私たちは申し上げました。そこで、昨年、私たちは、実際に、偽りのない持続可能性戦略を発表しました」。
「私たちは私たちの環境を愛しています。私たちの都市を愛し、世界のために全力を尽くそうとしているのです。そして、私たちは自らのシステムを変え、全計画を変更しようとしています。2030年までに自動車の30%を電気自動車にして、50%を再生可能エネルギー駆動にします」。
この歓談には、多数のWEF出席者、ビジネス経営者、ジャーナリスト、投資家が参加した。
昨年10月にサウジアラビアは2030年万博の招致を申請した。ムハンマド・ビン・サルマン皇太子が博覧会国際事務局に書簡を送ったのだ。博覧会国際事務局は、1931年以来、国際博覧会の運営組織である。
サウジアラビアは、万博招致について、中国、フランス、トルコ、ギリシャ、アルメニア、キューバ、他に何十ものアフリカ諸国、イスラム協力機構 など世界中から60以上の国と組織からの強い支持を集めている。
サウジアラビアの首都リヤドは、韓国の釜山やイタリアのローマ、ウクライナのオデッサと2030年万博の招致を競い合っている。2023年11月に、1国1票のルールでの票決が博覧会国際事務局によって行われる。