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リモートワークの世界の課題とメリット

世界中の多くの労働者がリモートワークをある程度維持することを望んでいる(Getty Images)
世界中の多くの労働者がリモートワークをある程度維持することを望んでいる(Getty Images)
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09 Nov 2021 03:11:11 GMT9

リモートワークは世界中でパンデミックの収束後も引き続き大きなトレンドとなろうとしている。課題を徐々に解消しながら新たなチャンスと期待を活かす就労環境の作り方を検討する前向きな会社は、大きくリードすることになるだろう。パンデミック以前の働き方への回帰を目指す多くの企業は後れを取りそうである。

新型コロナウイルス感染症により、多くの人々が在宅で働かざるを得なくなった。インターネット接続環境があり、対面で働く必要がない人々は、数か月かけてリモートワークに適応した。今では、世界中の多くの労働者がリモートワークをある程度維持することを望んでいる。Ipsosの世界的な調査によると、66%の人々は、パンデミック後に雇用主がよりフレキシブルな働き方を許可することを望んでおり、およそ3分の1の人々は、雇用主がオフィスでのフルタイム勤務に戻ることを要求する場合には辞職を真剣に検討すると答えている。

勤務時間の全てをリモートで働きたいと思う人がいる一方で、多くの人はハイブリッド方式を好んでいる。Ipsosの世論調査で、人々は平均で1週間のうち2.5日を在宅で働きたいと望んでいることが分かった。McKinseyの研究によると、52%の人がパンデミック後にハイブリッド型の選択肢を望んでおり、11%の人は勤務時間の全てをリモートワークにしたいと望んでいる。雇用主はこれらの変化に対応していかなくてはならないだろう。Gartner による予想では、2022年には世界中の全労働者のうち31%がリモート(完全リモートもしくはハイブリッド方式)で働くことが示唆されている。

Gartnerは、労働人口の53%がリモートワークをしている米国がリモートワークを先導すると予想している。 米国ではよりフレキシブルな就労形態への需要が非常に大きい。最近のGallupの世論調査 によって、米国のフルタイム被雇用者の45%が現在少なくとも一部の時間は在宅で働いていることが分かった。この調査によって、米国の労働者のうち現在リモートワークをしている人の91%はパンデミック収束後も少なくとも部分的にテレワークを継続したいと望んでおり、54%の人はハイブリッド方式を好み、37%の人は完全なリモートワークを望んでいることも分かった。ビジネストレンドの専門家らの間では、米国では将来的にハイブリッド方式の働き方が主要となるだろうということで広く意見が一致している。

アメリカ人だけがリモートワークに関心を持っているわけではない。McKinseyの研究とIpsosの調査によって、世界の他の多くの地域における大きな関心が浮き彫りになった。例えばサウジアラビアでは、Ipsosによると人々は平均して1週間のうち3.3日をリモートで働きたいと答えている。

調査では、多くの会社役員はリモートワークについて従業員ほどの熱意を持っていないことが示されている。2020年後半のPwCの調査で、米国の会社役員のうち物理的オフィスを完全に離れたいと考えている割合はわずか13%であることが分かっている。またこの調査によって、68%の会社役員が従業員に少なくとも週に3日はオフィスに来て欲しいと考えていることも分かったが、一方で多くの従業員はもっと少ないオフィス勤務を好んでいる。それにもかかわらず、多くのビジネスリーダーは長期的な選択肢に目を向け、オフィス空間の必要性を再考している。

リモートワークには多くのメリットがある。被雇用者は自分の仕事と個人的責任をより上手く管理することができる。これは特に子供や高齢の家族の世話をする人々によく当てはまる。多くの場所、とりわけ都市では、テレワークによって通勤にかかる時間とお金を節約できる。リモートワークは交通渋滞の緩和にも大きな役割を果たし得る。多くの人は在宅で働く時により生産性が高くなる。仕事を100%テレワークでできるならば、企業は世界中のどこにいる人でも雇用でき、被雇用者はもっと自由に好きな場所に住むことができる。企業は不動産の面積を減らすことで費用の節約もできる。

デメリットもある。リモートワークでは同僚と関係を構築するのは難しくなる。おそらく在宅で働くことによって連携が減り、特に異なるチーム間での連携は少なくなるだろう。多くの会社役員は、物理的空間の共有を抜きにした企業文化の醸成について懸念している。被雇用者は明確な境界線と期待が無く、疲れ果ててしまう可能性がある。リモートワークには信頼できる高速なインターネット接続と、個々人の仕事がはかどる自宅もしくは場所が必要となる。

適切なバランスを見つけるのは難しい。リモートワークによるメリットが大きい人もいれば、そうでない人もいる。性格の違いによって、オフィスで働くのが得意な人と、在宅で働くのが得意な人がいる。オフィス内で尊敬され、権限を与えられていると感じている人はオフィスを好む傾向があり、これが多くの管理職がオフィスに戻るのを個人的に好む大きな要因のひとつである。世論調査は若者の間の意見の相違を示唆しており、フレキシブルであることを優先する人と、オフィスのメリットを望む人がいる。複数の調査によって、子を持つ親たちはリモートワークを好むことが示されている。また、長距離通勤の人々にとってはリモートワークのメリットが大きいと思われる。

オフィスは組織の対面活動における独自のニーズに合わせてデザインしつつ、可能な部分ではフレキシブルなリモートワークを許可するべきだ。

ケリー・ボイド・アンダーソン

経済と社会は過渡期にある。ビジネスリーダーにとっては、長期的プランを立てるのが難しい時期だが、リモートワークがそれぞれの会社にもたらすチャンスと課題を注意深く検討することが非常に重要だ。今先を見越した計画に取り組む組織は、才能ある人材の新規雇用と維持、そして新たなテクノロジーとビジネス手法による恩恵の享受に最適なポジションを得られるだろう。

経営戦略の専門家たちは、多様な提案をしてきた。雇用主は従業員の声に耳を傾け、そのニーズと好みについてよく考えるべきだ。企業はリモートワークをオフィス内での勤務と同様に評価しなくてはならない。リモートもしくはハイブリッド勤務のチームを率いることになる管理職への教育は不可欠だ。企業はスケジュール管理やコミュニケーション、連携、サイバーセキュリティに役立つソフトウェアへの投資を検討するべきだ。

オフィスは組織の対面活動における独自のニーズに合わせてデザインしつつ、可能な部分ではフレキシブルなリモートワークを許可するべきだ。注意深く検討することで、オンラインで企業文化を醸成することが可能となる。

今は創造的適応の時である。よりフレキシブルな形で共に働く方法を見つけ出す役員・管理職・従業員は、ポストパンデミックの世界で成功する準備が万全となるだろう。

  • ケリー・ボイド・アンダーソン氏は著作家で、国際安全保障問題と中東の政治・ビジネス上のリスクに関するプロフェッショナル・アナリストとして18年以上の経験を有する政治リスクコンサルタントである。オックスフォード・アナリティカのアドバイザリー次長などの経歴を持つ。 Twitter:@KBAresearch

 

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