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ソフィ・チャン「Ocean of Secrets」で世界的成功を収めたアラブ人漫画家

この漫画は、大西洋で溺れたことで人生が一変した孤児のリエを中心に展開する。(提供)
この漫画は、大西洋で溺れたことで人生が一変した孤児のリエを中心に展開する。(提供)
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06 Apr 2024 09:04:59 GMT9
06 Apr 2024 09:04:59 GMT9

アミン・アッバス

ドバイ:ソフィー・チャンさんは、才能あるイラク人アーティストであり、アメリカの漫画出版社TOKYOPOPから、世界的に出版された漫画シリーズ「Ocean of Secrets」の作者である。

この漫画家はアラブニュース・ジャパンの独占取材に応じ、「Ocean of Secrets」制作の経緯と挑戦について次のように語った「2009年、大学1年生のときにアイデアを思いついたんです。最初にスケッチしたキャラクターはリエで、現在のスタイルに落ち着くまで、数年間スタイルは変わり続けました」

「(漫画の)スケッチを始めたのは18歳のとき。絵が上達するにつれて、伝統的な手法から、タブレットを使ったデジタルの手法にに切り替えました。2015年に発表したプロジェクトは2つあって、1つは自費出版した漫画、もう1つはPenguin Random house publishingのIMPACTから出版した、漫画の書き方の教本です。私はYouTubeでオンライン教本を作りながら学びました。そうすることで多くのサポートや感想、そして諦めない理由も得ることができました」と彼女は続けた。

この漫画は、大西洋で溺れたことで人生が一変した孤児のリエを中心に展開する。彼女は2人の家出少女に助けられ、王国から空飛ぶ船で旅立つ。その後の出来事は、主人公の突然の運命の転換を描き、彼女は新しい人生の役割に適応し、その過程で生まれる葛藤、友情、対立などを描いている。

作者は、学費ローンを返済するために、フルタイムのエンジニアの仕事をしながら、漫画を執筆していた「締め切りを守るのは、かなり大変でした」と彼女は振り返る。「ローンが完済した後は、漫画制作に専念するために仕事を辞めました」

彼女はTOKYOPOPの創設者であるステュー・レヴィ氏からメールを受け取った。「私の漫画が世界的に有名な出版社の目に留まったことは、本当に嬉しかったし、興奮しました。数週間後、ビデオ通話で、私の作品が出版することが決定しました。これで私の本が世界中の書店に並ぶことになり、感激しました。その後、世界各地で開催されたコミコンに招待され、多くの人にインスピレーションを与えることができました。TOKYOPOPが漫画をドイツ語に翻訳してくれたので、2019年にライプチヒで開催されるコミコンでサイン会もしました」と彼女は続けた。

漫画「Ocean of Secrets」を読んだファン達の感想や反応について、彼女は「最初はほとんど批判がなく、ほとんどが好意的でした。でも、この漫画が人気を博すにつれ、評価は分かれるようになりました。若い頃は、悪い評価で落ち込むこともありましたが、それをきっかけに自分の画風にさらに磨きをかけ、デッサン力や構成力を高めることを学びました」と語った。

彼女は「Manga Workshop Characters:How to Draw and Color Faces and Figures 」を2015年に出版した。この本はフランス語、スペイン語、中国語に翻訳されている。

「漫画のキャラクターをどのように作るか、初心者に優しいステップ・バイ・ステップのデモンストレーションです 」と彼女は説明し「執筆当時、私自身も学んでいる最中だったので、スキルが向上し、画風も少し変わりました。この本は漫画を描く際、これから挑戦しようする人たちにとって、インスピレーションを与えてくれる情報源であり、わかりやすい教本になると思います」と続けた。

彼女は、常に日本のアニメからインスピレーションを受けてきた。そして子供の頃、アラビア語の吹き替え番組を楽しんでいたという。「10代にになってからは、デジモン、名探偵コナン、ハンター×ハンターなど、他の番組にも夢中になりました。私は物語を書くのが好きなので、このような形のストーリーに驚きました。15歳の時にロンドンを訪れた際、書店で偶然漫画本を見つけました。漫画が何であるかは知っていましたが、実際の印刷物を見たのはそれが初めてでした。そのとき、いつか自分のシリーズをこの棚に並べたいという夢を抱いたんです」とアラブニュース・ジャパンに語った。

アーティストが直面した困難のひとつは、言葉の壁だった。「漫画の一連の書き方を理解し、研究するために、日本語を勉強しなければならなかった。他の技術的な挑戦は、自費出版した本を印刷するときでした。プリンターを使った経験がなかったので、印刷の過程で多くの問題がありました。そして自分の店を経営するのは、出張が多かったので、それなりのハードルがありました」と彼女は続けた。

さらに、彼女は「The Moral Scale」というタイトルの新しいSF漫画で、シムシムという作家とコラボしている。物語の中心は、社会心理学者のヨウタと、彼の友人で有能なAIコーダーのリオンだ。舞台は、極端な社会的不平等と不正義が目立つディストピア的未来。

「主人公は友人とともに、崩壊寸前の社会を救うための解決策を模索していく。物語とアートの両方でかなり研鑽を重ね、過去の漫画で学んだ感想も、この作品に役立ちました」と彼女は語った。

現在、このシリーズの完結に全力を注いでいるソフィさんは「私とシムシムは最近少しお休みしていたのですが、また再開して、より多くの読者と関われることに感激しています」と彼女はアラブニュース・ジャパンに語った。

漫画を描くことに興味がある人には、短いストーリーをオンラインで共有して感想を受けるのがベストだと彼女は勧める。「読者を増やし、感想を受けることは、漫画家として成長する上で非常に貴重なことです。いろいろな画風やテクニックを試して、自分に合ったものを見つけてください。個性的なキャラクターを描くことで、自分の作風がわかりやすくなり、他の作品との差別化につながります。物語の構成や、効果的な語り方についても学んでください」

「マンガを作ることは旅です。練習と努力で上達します。描き続け、新しいテクニックを探求することで、困難を乗り越えることができます」と彼女は続けた。

まだ来日したことはないが、この夏、東京と京都を訪れる予定だ。「Ocean of Secrets」はアマゾンで購入できる。

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