ラマ・アルハマウィ と レイナ・タクラ

リヤド：グローバルな人材を集め、石油依存を脱却して経済を多様化すべく、サウジアラビアはプレミアム居住プログラムに5つのカテゴリーを追加した。

2019年に発足したこのプログラムは、要件を満たす外国人にサウジアラビア国内での居住を認めるとともに、外国人税や扶養税の免除、ビザ不要の海外渡航、スポンサー不要の不動産所有権および企業経営権といった特典を提供するものだ。

このイニシアティブの目的は、同国で進む経済の転換をさらに加速させ、新たな雇用を創出し、知識移転を促すことであると、サウジ通信社は報じている。

Saudi Premium Residency Center launches 5 new products to attract the best minds and investments and empower the national economy.#SaudiPremiumResidency pic.twitter.com/cjbpBOm6og

— Foreign Ministry 🇸🇦 (@KSAmofaEN) January 10, 2024

応募要件

居住プログラムの各カテゴリー（特別技能、ギフテッド、投資家、起業家、不動産所有者）には、それぞれ規定の応募要件がある。各カテゴリーの1度きりの申請費用は4000サウジアラビア・リヤル（1066ドル）だ。

「プレミアム居住プログラムへの5つのカテゴリーの新設により、われわれはプロフェッショナルと投資家に新たな可能性の地平をひらいた。われわれの目的は、サウジアラビアを高度人材と投資の中心地に成長させるための同国の取り組みを推進することであり、知識に立脚した多様な経済という、われわれのヴィジョンを大きく前進させるだろう」と、プレミアム・レジデンシー・センターCEOのムハンマド・アル・スルタン氏はアラブニュースに語った。

「政府機関の壁を超えた戦略パートナーとの提携は、これらの居住プログラムの開発に不可欠だった。われわれは最低限の恩恵を超えた充実のプログラムを提供し、プレミアムな居住者が暮らし、働き、サウジアラビアの活気ある未来に貢献できる、完成された環境を用意する」と、アル・スルタン氏は述べた。

サウジ通信社の報道によれば、同氏はさらに「プレミアム居住資格をもつ人物の家族についても、要件を再検討し、両親を被扶養者に含められるように変更した。この変更は、われわれが現在取り組んでいる居住プログラムの強化の一環だ」と明かした。

恩恵

居住許可を得た外国人は今後、自身の家族のプレミアム居住許可を取得できるほか、企業経営、手数料なしの送金、親戚の招待などが可能になる。

「プレミアム居住プログラムの各カテゴリーにはそれぞれ有効期限が設定されており、また所有者には規定の諸条件を遵守することが求められる」と、アル・スルタン氏は説明する。

ほとんどのケースに共通の応募要件として、有効なパスポートと医師による最近の診断書を所有すること、国内申請者の場合はサウジアラビア国内に有効な住所があることが求められる。

「われわれはさらに被扶養者の年齢制限を25歳までに緩和した」と、アル・スルタン氏は国営放送局アル＝エフバリヤのインタビューで述べた。

投資家

投資家カテゴリーは、最初の2年間の居住期間のうちに700万サウジアラビア・リヤル以上を投資し、少なくとも10の雇用を創出した人々に永住権を与えるものだ。応募者には投資許可証が発行され、商業登記と法人設立定款の提示が義務づけられる。

多国籍デジタルイノベーション企業ユーリスコ（Eurisko）の共同創業者でCEOを務めるエドガルド・タウク氏は、「こうした条件はわたしのような投資家にとってきわめて魅力的だ。サウジアラビアに法人を設立できるだけでなく、そこを戦略拠点に指定できる」と述べる。

こうした追加的恩恵により、投資家向け居住プログラムは「地域と世界の投資家にとって垂涎の的となることは確実だ」と、タウク氏は言う。

サウジアラビアに拠点を置くイエローコア・プロダクションズ（Yelllowcore Productions）の創業者でクリエイティブプロデューサーを務めるジョージ・ハダッド氏は、居住プログラムに関する報道に次のようにコメントした：「映画・テレビ番組プロデューサーの立場から見て、サウジアラビアの新しいプレミアム居住プログラムは、成長市場へのアクセス、事業拡大の機会、同国の経済成長を追い風とした増収のチャンスをもたらすものだ」

ハダッド氏は、新たな政策が自身の分野の成長にもたらす影響について、「映画・テレビ番組制作業界においては、制作拠点の設立と拡大、タレントとリソースの獲得、地域と世界のビジネスチャンスの開拓がより容易になるだろう」と、期待を示した。

起業家

このカテゴリーの応募者は、2人の社員を特別技能カテゴリーの居住者として推薦できる。

区分1の起業家居住資格の場合、有効期限は5年間に固定され、1度に限り更新が可能だ（その時点での要件を満たし、かつ過去5年間の間に少なくとも30カ月にわたってサウジアラビアに居住していたことが条件となる）。応募者は、認可を得た機関から少なくとも40万サウジアラビア・リヤルの投資を受け、スタートアップの株式の少なくとも20％を保有している必要がある。

「われわれのコミットメントの観点からみて、事業投資家への居住許可に関する重要な基準は、サウジ国民への就労機会の提供だ」と、アル・スルタン氏は説明する。

第2区分の場合、最初の1年に少なくとも10の雇用を創出し、2年目にさらに10以上の雇用を創出した起業家には、直接的に永住権が与えられる。他の要件として、最低1500万サウジアラビア・リヤルの投資と、自社株の少なくとも10％を保有していることの証明が必要となる。

不動産所有者

この居住者カテゴリーは、不動産の所有権または用役権と紐付けされている。最低400万サウジアラビア・リヤル相当の不動産を所有しており、現時点あるいは将来の貸付金がないことが条件だ。また、不動産の所有権または用役権が不動産融資に利用されていないこと、不動産の種類が住宅または開発地であり、未開発地や未改良地でないことも必須となる。最後に、不動産評価はサウジアラビアの公的評価機関であるタキーム（Taqeem）が実施することになっている。

「すべての国々からの応募を歓迎する。われわれの狙いは多様なセクターにおけるスキルのギャップを埋めることであり、要件や目的にあてはまる候補者の方々にぜひ応募していただきたい」と、アル・スルタン氏は呼びかけた。

1年間のみ有効の居住プログラムでは、年間10万サウジアラビア・リヤルの費用と財政能力の証明が求められる。無期限の永住プログラムの場合、費用は80万サウジアラビア・リヤルで、同じく財政状況の健全性の証明が必要だ。

「サウジアラビアは仕事と投資の場であるだけでなく、イノベーション、文化、ビジネスが手を取り合って繁栄する、可能性に満ちた国だ。これらのプレミアム居住プログラムは、われわれの転換と成長の道程をともに歩もうという、世界への招待状なのだ」と、アル・スルタン氏はアラブニュースに語った。

特別技能

5年間有効の特別技能居住許可を得るには、応募者には医療または科学に関わる専門職に就いていること、月収が3万5000サウジアラビア・リヤル以上（研究者の場合は月収1万4000サウジアラビア・リヤル以上）であることが求められる。

企業の幹部社員が特別技能カテゴリーの居住許可を得るには、幹部レベルの雇用契約の証明と、月収8万サウジアラビア・リヤル以上の証明が必要となる。

「これらの居住プログラムは単なる許可ではなく、わが国の未来を築くためのコミットメントだ。特別な技能をもつ人々、起業家、投資家を集めることで、経済を活性化するだけでなく、文化と科学を取り巻く環境をより豊かにできる」と、アル・スルタン氏は述べた。

ギフテッド

このカテゴリーの居住許可は5年間にわたり有効で、2つの下位区分がある。第1区分の応募資格をもつのは、サウジアラビアの文化省およびスポーツ省が認めた賞の候補者および受賞者だ。第2区分では、両省が定める最低適格基準を満たすことが条件となる。

サウジアラビア生まれで米国国籍者のトッド・アルバート・ニムズ氏は、今回の発表に胸を躍らせる。アラブニュースの取材に応じ、彼は次のように語った：「サウジアラビアは心の故郷です。幼少期のわたしに多くを与えてくれました。映画・演劇・芸術界のクリエイティブ専門職として、米国からサウジアラビアに戻り、母国のこうした業界の成長を支援することで恩返しができることを、とても幸運に思います」

リヤドのクラウドゲーム企業で経理財務部長を務めるモーシン・アリ・カーン氏も同意見だ。プレミアム居住プログラムへの5つの新カテゴリーの導入は、サウジアラビアに大いに発展をもたらすだろうと、彼は述べ、とりわけ特別技能者の移住が、同国の研究開発イニシアティブに好影響を与えるという考えを示した。