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林前外相、アラブ諸国との関係を大切に

アラブニュース・ジャパンのインタビューに答える林芳正元外務大臣。(ANJ)
アラブニュース・ジャパンのインタビューに答える林芳正元外務大臣。(ANJ)
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18 Oct 2023 11:10:22 GMT9
18 Oct 2023 11:10:22 GMT9
  • 中東の安定を求めても「一夜にして解決することはない」と林芳正氏
  • ロシアのウクライナ侵略は世界を「歴史の岐路」に立たせる、と元外交官は考える

カルドン・アズハリ

東京:先般の内閣改造で外相の林芳正氏が岸田内閣から外れたことは、国内外の政治・外交関係者の多くを驚かせた。
後任の上川陽子氏は自民党の重鎮だが、林氏の退任に対する疑問の声は、彼が素晴らしい仕事をしていたことを示している。では、なぜ突然の交代となったのだろうか?林氏自身は驚かなかったという。
「私にとっては、2年前の茂木氏やその前の河野氏の時のように定期的な内閣改造にすぎない」と林氏はアラブニュース・ジャパンとのインタビューで語った。「外相としての任期はさほど短くなかったと思うが、多くの人が驚いたと聞いて本当に嬉しい」
「しかし私にとって、党に戻って党の仲間と共に仕事をし、調和に努めることは、政治的キャリアの面でもとても重要だ」
とはいえ、元財務相を父に持つ政治家一家に育った林氏が首相の夢を諦めたわけではない。これまでも最有力候補と目されてきた。
 
「今、私にとって最も重要なことは、岸田首相を支えることだ。総裁選では非常に困難な時期もあった。長年の目標としてきた私の夢は変わっていないが、準備や経験がもっと必要だ。備えておくことは重要だと思う」
「これまで6つの大臣職を経験した。大臣になることは、各人の努力によるかもしれない。しかし総裁選を何度も見てきて、努力だけでなく、人々との調和も必要だと思う。運やタイミングも重要。人々のために働き、派閥では座長を務めている。これは重要なステップだと考えている」
外相としての成果については、「アラブ世界と日本との協力の方向性をはっきり示すことができた。9月にはカイロを訪問、日・アラブ政治対話を開催し、経済協力の拡大や平和の定着、法の支配に基づく国際秩序の構築などで合意した」と述べた。「これら3つの柱に取り組み、アラブ世界と日本の枠組みを共に示した。ロシアによるウクライナ侵攻や中東での新たなダイナミズムの中で、パートナーシップを確認し共同声明に反映した。また初の日・GCC外相会合を開催することができた」
林氏はいくつもの政府要職を担ってきたが、いずれも挑戦だと考えている。 「どの職務も大きな挑戦で、毎回あらゆる課題に直面した。直近の外務省では、よい経験ばかりでなく、多くの課題もあった。最大の課題は、ロシアによるウクライナ侵攻だ」
「これにより国際社会の全体的な枠組みが変わりつつある。私たちは岸田首相と共に、歴史の岐路に立たされているのだと述べてきた。しかし、私たちが進むべき道は明らかで、秩序を維持し、決して武力によって現状を変えてはならないという原則がある。もしロシアが罰を受けることなく侵略に成功すれば、われわれはジャングルの時代に戻るだろう」
林氏は、ロシアが国連安保理で拒否権を行使する場合、G7の行動が影響力を持つことができるかもしれないと指摘した。「G7は元々はオイルショック後に創設され、世界経済について話し合う場として設けられた。ロシアとウクライナについてG7で多くの議論をしたが、私が直面した中でも最大の課題の一つだった」
中国については、林氏が共産主義国家を支持していると非難する声もあるが、彼は実用主義が第一だと信じている。
「最終的には、北京との交渉とコミュニケーションが必要だ。それが外交官としての私たちの仕事であるので、非常にセンシティブな中でも日中友好議員連盟の会長として対処してきた。しかし同時に友好関係を築いているだけではない。重要なことは、私たちが何をすべきかを彼らに直接伝えることであり、彼らの行動についても尋ねることだ」
 
「親中とは思っていない。日本は中国に対処し、経済関係を維持する必要があるということだ。しかし、友好的であれば全ての問題が解決するわけではく、国益追求のためには、中国に厳しい批判的な態度をとる必要もある」
目下、中東からのニュースはイスラエルとパレスチナの対立に集中しているが、林氏は中東は日本にとって重要だと述べた。
「今回の衝突が起きる前でさえ、対処すべき多くの問題があったと思う。だが同時に、サウジアラビアとイランの関係正常化のような良いニュースもある。私はヨルダンをはじめ、安定化に向け地域の礎となるべく尽力する中東の国々を訪問した。だからこそ、そのような国々と良好な関係を保っている。しかし、一晩で達成できるような解決策はなく、忍耐は必要だろう。イスラエルとパレスチナで起きていることには心が痛む」
外相として各国を歴訪し、アラブのさまざまな都市を訪れた林氏にとって、印象に残った場所はあるのだろうか?
「感銘を受けた国や都市はたくさんあるが、あえて一つ挙げるとするなら、私の地元・山口県萩市との交流プログラムがあるヨルダンのサルト市。長期的な関係で、萩市をモデルにしたというエコミュージアムを訪ねた。サルト市の長い歴史にも魅了された」
「古い民家や市場がまだ残っていた。歩いていると、町の人がとても親切で、気さくにバナナや野菜を分けてくれた。一緒に食事をしたり、握手をしたり、フレンドリーな人々との交流は楽しく、私の故郷や萩市を思い出した。アラブ諸国と日本の人と人とのつながりが大切だ」
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