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戦争の懸念で停滞するレバノンのホスピタリティセクター

2023年11月10日、レバノンの海岸沿いの歴史的な都市ビブロスのレストランで客を待つスタッフ。(AFP)
2023年11月10日、レバノンの海岸沿いの歴史的な都市ビブロスのレストランで客を待つスタッフ。(AFP)
2023年11月10日、レバノンの歴史的な都市ビブロスの港に停泊する遊覧船。(AFP)
2023年11月10日、レバノンの歴史的な都市ビブロスの港に停泊する遊覧船。(AFP)
2023年11月10日、歴史的な港町ビブロスの、ほとんど閑散とした古い市場で、土産物店の前を通り過ぎる人々。(AFP)
2023年11月10日、歴史的な港町ビブロスの、ほとんど閑散とした古い市場で、土産物店の前を通り過ぎる人々。(AFP)
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17 Nov 2023 12:11:35 GMT9
17 Nov 2023 12:11:35 GMT9
  • 戦闘は今のところ南部に限定されているが、一部の欧米諸国やアラブ諸国は、紛争拡大を懸念し、自国民にレバノンから出国するよう勧告している
  • 戦争を恐れる多くの国内観光客も出費を控え、レストラン、カフェ、バー、商店に大きな打撃を与えている

ビブロス:バーテンダーのリチャード·アラム氏は、レバノンの海辺の町ビブロスにある自身のパブでほとんど酒を注いでいない。かつては賑やかだった通りも、イスラエル·ハマス戦争による国境の緊張に客が怯え、空っぽになってしまった。

「2週間前にこのウイスキーのボトルを開けたんですが、まだ空になっていません」と、ベイルートの北にある、世界遺産のある海岸沿いの町で、誰もいないバーのカウンターに立っていたアラム氏(19歳)は言った。

「以前は、毎日か一日おきに1本ずつ空になっていました」とアラム氏はAFPに語った。

経済崩壊から4年が経ったレバノンのレストラン、カフェ、ホテル、商店は、イスラエル·ハマス戦争と、それに関連するレバノン·イスラエル国境での敵対行為が続く中、経営を維持するという新たな課題に直面している。

ガザを拠点とする武装組織ハマスが10月7日にイスラエル南部を攻撃し、イスラエルの報復爆撃とガザでの地上攻撃を引き起こした。それ以来、レバノン南部の国境では、主にハマスと同盟関係にあるヒズボラとイスラエルの間で、死者を伴う衝突が起きており、その状況はエスカレートしている。

戦闘は今のところ南部に限定されているが、一部の欧米諸国やアラブ諸国は、紛争拡大を懸念し、自国民にレバノンから出国するよう勧告している。

レバノン北部の海岸にあるビブロスは「観光客に依存」していると、蝶ネクタイをつけ、スーツを着たアラム氏は言った。

「私たちの仕事は、1日に少なくとも40~50テーブルだったのが…せいぜい7テーブルにまで減ってしまいました」

近くにあるモナ·ムジャヘド氏の土産物店も、いつもは観光客や地元の人々で賑わっているが、今は客足がまばらだ。

ムジャヘド氏(60歳)は、土産物が手つかずのまま棚に並ぶ店の前でコーヒーを飲みながら、「仕事もお金もありません」と語った。

戦争を恐れる多くの国内観光客も出費を控え、レストラン、カフェ、バー、商店に大きな打撃を与えている。

2019年以来、レバノン人は世界銀行によって1850年代以降で世界最悪レベルと烙印を押された金融危機に苦しんでいる。人口のほとんどが貧困に追い込まれ、レストラン、カフェ、パブ、ナイトクラブの半数が閉鎖を余儀なくされたと、業界のシンジケートを率いるトニー·ラミー氏は話す。

ラミー氏によると、新型コロナウイルスの大流行、経済崩壊、2020年のベイルート港での大規模な爆発事故の後、夏に国外在住者がレバノンに戻ってきたことから、このセクターは最近回復し始めたばかりだったという。

レストラン、カフェ、ナイトクラブ、ペストリーショップのオーナーで構成されるシンジケートを率いるラミー氏は「私たちは、新たな勢いを得て、4年間の困難な日々から立ち直ろうとしていましたが、残念ながら戦争がすべてを台無しにしました」と語る。

「10月7日以降、客足は激減しています…平日は最大80%、週末は30~50%も落ち込んでいます」とラミー氏は述べた。

また、「南部の状況が悪化するかどうかは誰にも分かりませんし、誰も何も計画できません」と語り、「莫大な損失」が発生する可能性を警告した。

AFPの集計によると、国境を越えた衝突により、レバノンではヒズボラの戦闘員を中心に少なくとも88人が死亡し、その中には民間人10人も含まれているという。

イスラエル北部では、公式発表によると、兵士6人を含む9人が死亡している。

レバノンの国営航空会社であるミドル·イースト航空(MEA)は便数を減らし、同地域からベイルートへの乗客数は昨年比で54%減少したと、同航空会社の広報担当者リマ·マッカウィ氏は述べた。

また、ヨーロッパからのMEAの乗客も、昨年同期比で30%減少していると付け加えた。

ベイルートのかつては賑やかで活気のあったハムラ地区では、4つ星のホテル·キャバリエで何百件ものキャンセルがあった。

「(戦闘開始の)最初の週から、キャンセルが劇的に増えました」と、ホテル支配人のアイマン·ナセル·エル·ディーン氏(41歳)は閑散としたロビーで語った。

「新規予約はゼロです…これが長引けば大惨事になるでしょう」と同支配人は言った。

11月はホテルの65室のうち半数以上が予約で埋まっていたが、今ではスタッフが迎えるのはせいぜい1日に12人ほどだという。

ホテル·キャバリエは12月はオーバーブッキング状態で、ホテルはクリスマス休暇のラッシュを楽しみにしていた、と彼は付け加えた。

しかし、それは戦前の話である。

ホテルオーナーのシンジケートを率いるピエール·アシュカール氏によると、客室稼働率は約45%から0%~7%に急落したという。

各国が自国民にレバノンへの旅行を控えるよう勧告したため、「向こう2、3カ月の予約はキャンセルされています」とアシュカール氏は話す。

たとえハマス·イスラエル戦争が明日終結したとしても、「各国が渡航勧告を変更し、通常通りの業務に戻れるようになるまで、さらに1、2カ月が必要となります」とアシュカール氏は述べた。

しかしアシュカール氏は、1975年から1990年までの内戦、2006年のイスラエルとヒズボラの戦争、そして2020年のベイルート港爆発事故を経験したレバノンのホテルは、平穏が戻ればまた回復するだろうと楽観的な見方を示した。

「私たちは戦争の時代に生まれ育った意志の強い国民です」とアシュカール氏は述べた。「危機管理の長い経験がなければ、このセクターはとっくに破綻していたでしょう」

AFP

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