Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter
  • Home
  • 中東
  • 輸出業者、深刻化する紅海での妨害を受けて貨物機の利用を模索

輸出業者、深刻化する紅海での妨害を受けて貨物機の利用を模索

2023年11月20日に公開された写真。紅海にてフーシ派の船に連行されるギャラクシー・リーダー社の貨物船。(フーシ派メディアからロイター通信への提供写真)
2023年11月20日に公開された写真。紅海にてフーシ派の船に連行されるギャラクシー・リーダー社の貨物船。(フーシ派メディアからロイター通信への提供写真)
Short Url:
21 Dec 2023 06:12:23 GMT9
21 Dec 2023 06:12:23 GMT9
  • イランの支援を受けるイエメンのフーシ派過激派は、イスラエルによるガザ地区への軍事攻撃に対してハマスへの支持を示すため、11月19日以来紅海で船舶への攻撃を激化させてきた
  • 同地域の安定化を狙いとして米国が創設に動いている新たな国際海軍連合に関しては、運輸企業に対してその内実は明らかにされていない

ロンドン/マドリード:紅海での相次ぐ攻撃により世界の貨物サプライチェーンに混乱が広がるなか、輸出業者は玩具、衣料品、お茶、自動車部品を小売業者に供給するため、空路、陸路、海路の代替案確立を急いでいる。

イランの支援を受けるイエメンのフーシ派過激派は、イスラエルによるガザ地区への軍事攻撃に対してハマスへの支持を示すため、11月19日以来紅海で船舶への攻撃を激化させてきた。

この攻撃により、スエズ運河経由で欧州および北米とアジアを繋ぐ主要交易路に混乱が起きている。企業が別の海路(これまでより距離が長くなることが多い)での製品の輸送を模索するなか、貨物輸送費は高騰し3倍以上になるケースも出てきている。

S&P グローバルの報告によると、こうした混乱が続けば、ウォルマートやIKEAなど世界最大手の小売企業に供給を行う消費財産業が最も大きな影響を受けるという。

OL USAのアラン・ベーア最高経営責任者(CEO)は各部署に対し、紅海での混乱は少なくとも90日は続くと見て備えを行うよう輸送・流通産業のクライアントに助言を行わせている。

「クリスマスの週末というのも良い材料ではありません」ベーア氏はそう話す。「ここから1月2日までは静かな期間が続き、その後は皆大騒ぎになるでしょう」

対応の早い企業は、複数の輸送手段を組み合わせる、いわゆるインターモーダル輸送への転換を試みているとヤン・クライン・ラスーズ氏は話す。クライン・ラスーズ氏はドイツの大手運送企業、ヘルマンワールドワイドロジスティクスの空輸部門で最高執行責任者(COO)を務めている。

衣料品や電子機器、テック製品といった消費財に関して空路と海路の混合ルートでのヘルマン社への需要が増えていると、クライン・ラスーズ氏は話す。これはたとえば、まず海路で貨物をドバイの港へ運び、そこから貨物機に積み替えるといった流れだ。

「この代替ルートなら、顧客は紅海の危険地帯や、アフリカ南端部を通る長距離航海を避けることができます」クライン・ラスーズ氏はロイター通信に対してそう語った。

緊急、または重要貨物を運ぶ企業は空路を利用するかもしれないが、コスト面を考えると一律の解決策にはならないとポール・ブラッシャー氏は話す。ブラッシャー氏はサプライチェーングループITSロジスティクスのドレージ・インターモーダル部門でバイスプレジデントを務めている。

歴史的な基準からすると未だにコンテナでの輸送費が安価な海路に比べ、空路での輸送コストはおよそ5~15倍になるとブライアン・バーク氏は言う。バーク氏はSEKOロジスティクスの国際最高商務責任者を務めている。

バーク氏によると、製品が店頭に届くまでの時間が2倍になれば、特にデザイナー衣料や高級電化製品などの高級製品を扱う輸送業者は空路に切り替えるケースが増えるはずだという。バーク氏自身も、既に顧客からそのような問い合わせを受けているという。

主要交易路

紅海地域では、欧州、中東、アジア間の製品を輸送する貨物船が年間約3万5000隻往来しており、世界のGDPに占める割合は約10%に上るとコーリー・ランスレム氏は話す。ランスレム氏は英国の海洋リスク諮問・セキュリティ企業ドライアド・グローバルのCEOだ。

ウォルマート、ターゲット、メイシーズ、ナイキといった米国の小売企業は、インドからコットン素材のシーツや電気歯ブラシ、中国やスリランカから靴などの製品を輸送する際にこのルートを利用している。

「脅威が続けば、燃料や欧州へ運ばれる製品の価格が大幅に高騰するでしょう。目的地にもよりますが、アフリカを回る迂回路では輸送にかかる期間が30日ほど増えることがその原因です」ランスレム氏はそう話す。

ドイツのディスカウントスーパーチェーンLidlの子会社Tailwind Shipping Linesは、Lidlや第三者の顧客向けに食品以外の製品の輸送を行っている。同社は、現時点ではアフリカ南端を回るルートで輸送を行っているという。

「私たちの目標は、できるかぎり予定通りの状態を保つことです」

同地域の安定化を狙いとして米国が創設に動いている新たな国際海軍連合に関しては、運輸企業に対してその内実は明らかになっていない。

スペインのファッション業界の情報筋がロイター通信に語ったところによると、航路を利用する運輸企業は顧客に対し、米国が主導するタスクフォースがさらなる攻撃を防ぎ、このルートの安全を再び確保できるかどうかに多くのことが懸かっていると話しているという。

欧州企業がスエズ運河を利用し、アジアからの衣料品を供給できることが重要だと前出の情報筋は話す。

紅海の治安問題のタイミングは、輸送業者にとって問題をさらに複雑化させるものだとジェブ・クルロー氏は語る。クルロー氏は法律事務所リード・スミスのパートナー弁護士として、運輸産業グループを担当している。

パナマ運河は深刻な干ばつにあえいでおり、通行可能な船舶の数を絞っている。さらに中国の旧正月により2月10日から17日にかけて工場が稼働を停止するため、それまでに製品の輸送を急がなければいけない事情もある。この旧正月の影響で、1カ月以上に渡って供給に問題が発生する可能性もある。

他方で大規模貨物船のオーナーは、紅海の混乱に影響を受けた貨物に対し、緊急のサーチャージなど料金の値上げを始めている。

20日、フランスの輸送企業CMA CGMは顧客に対し、紅海に面する各港を出入りする貨物に関して、20フィートコンテナ1台につき1575ドル、40フィートコンテナ1台につき2700ドル、冷凍コンテナおよび特殊機器1台につき3000ドルの料金を課すと通知した。

ロイター

特に人気
オススメ

return to top