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人道的休止は最低限必要なこと

2023年12月18日月曜日、イスラエルからガザ地区へのケレム・シャローム交差点に入る人道支援トラック。(AP)
2023年12月18日月曜日、イスラエルからガザ地区へのケレム・シャローム交差点に入る人道支援トラック。(AP)
インドネシアの病院船(X)
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25 Dec 2023 03:12:06 GMT9
25 Dec 2023 03:12:06 GMT9
  • 国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のジュリエット・トーマ広報部長が、現在のガザへの援助は不十分だと述べた。
  • イスラエルの砲撃により、UNRWA職員136人が死亡、UNRWA施設170カ所が標的となったとトーマ氏

ルーカス・チャップマン

アテネ:2カ月以上にわたって、ガザ地区はここ最近では最悪レベルの深刻な人道被害に苦しんでいる。犠牲者を出したハマスによる10月7日の攻撃を受けて始まったイスラエルの報復作戦や爆撃による死者数は、2万人を超えた。最近の暴力以前から苦しい状態で生き延びてきたガザ地区は今、危機に瀕している。

ガザに支援が寄せられていないというわけではない。サウジアラビアの支援機関KSreliefだけでも、航空機33機と船舶4隻をエジプトに派遣し、ガザ市民に支援を提供してきた。しかし国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)で通信部長を務めるジュリエット・トーマ氏は、「ガザに向けられている国際支援は足りておらず、戦争開始以来不足している」と話す。

シリア、イラク、リビア、スーダン、イエメンといった戦地で国連職員として20年以上に渡って活動してきたトーマ氏は、ガザ危機の規模は「前代未聞」だと言う。

10月7日の戦争勃発から最初の2週間、ガザは「完全な包囲」状態にあり、支援や商品が一切届かない状態にあったと説明する。10月21日になってようやく最初の支援が痛ましいほどゆっくりと届くようになったが、支援が届けられるのはこれまで国連支援の輸送に使われてきたイスラエルと国境を接するケレム・シャローム検問所ではなく、エジプトと国境を接するラファ検問所を通じてのみだった。

現在ガザには1日100台のトラックが入っている。これはかなりの数字に思えるかもしれないが、トーマ氏によると1日500台――これでもガザ市民が生き延びるためには最低限の量である――だった今回の戦争以前の支援レベルを遥かに下回っているという。

「ガザには最低でも1日500台のトラックが必要です。これは人道支援だけの話ではありません。人道支援だけでは成り立たないからです。市場が再開し自ら復興するためには、送られてきた商品に対するリターンが必要です」トーマ氏はそう話す。

最近ガザを訪れたトーマ氏は、かつてガザ市民に商品を提供していた「色鮮やかで活気あふれる市場」が完全に閉じられていたと語る。

2023年12月18日月曜日、イスラエルからガザ地区へのケレム・シャローム交差点に入る人道支援トラック。(AP)

「あらゆる店舗が、あらゆる薬局が閉じていました。いくつか営業しているパン屋や青果店はありました。しかしそれ以外に、民間セクターというものは存在していませんでした」トウマ氏はそう説明する。

イスラエルがケレム・シャローム検問所経由でガザへの商品の輸送を認めるようになったのは、包囲が始まって10週間以上が経過した12月18日になってからだった。国境検問所がガザ市民に圧力をかける手段として利用されるのはこれが初めてではなく、直近のイスラエル・ハマス戦争が始まるわずか1カ月前にも、ケレム・シャローム検問所で爆発物の密輸未遂があったとして、イスラエルは同検問所からの商業輸出を全面停止させていた。これにより、通常であれば商品や資材をヨルダン川西岸地区に輸出している多くの業者が大きな損失を被った。

「ガザでは、食品、燃料、水が戦争の兵器として利用されています」トーマ氏はそう話す。

「人々はすべてを失い、文字通りあらゆるものを必要としています。真夜中に何も持たずに逃げ出した人もいます。彼らは着ている服以外は何も持たずに避難所にやってきました。45日以上服を着替えていない人にも会いました」トーマ氏はそう続ける。

適切な衣服や避難所の資材不足は、ガザの天候が厳しさを増すなかでより致命的になってきている。UNRWAは、脆いテントの中で大雨によってずぶ濡れになっている難民の姿を収めた映像を公開した。同地区は、1月には気温10℃を下回ると見られている。

11月末には、カタールとエジプトの交渉により、イスラエルに収監されているパレスチナ人の解放と引き換えに、ハマスが10月7日に拉致した人質の解放に応じる形で、待望の一時停戦が実現した。

フィリップ・ラザリーニUNRWA事務次長、ジュリエット・トーマUNRWA広報部長

トーマ氏は、この停戦は「非常に歓迎すべきことで、ガザの人々にとって大きな小休止だった」と言う。

「この停戦で人道コミュニティは支援を増やし、ガザ地区北部を中心にこれまで立ち入ることができなかった区域に入ることができました」

それでも停戦は、ガザ地区の完全な人道破壊を防ぐためのわずかな一歩に過ぎないとトーマ氏は補足する。

「停戦は最低限必要なことです。最近実現したものと同様の一時停戦、中期的な人道停戦、そして長期的には、世界的に見ても近年では史上最長レベルの危機に対する平和的解決の実現が必要です」トーマ氏はそう語る。

「私より遥かに長くUNRWAに携わってきた方も、こんな状況は今まで目の当たりにしたことがないと断言しています」トーマ氏はそう続ける。

国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のジュリエット・トーマ広報部長とガザの避難民

 

トーマ氏によると、UNRWAは今回の戦争で同組織の施設に対して170回の攻撃が行われており、人道セクターの完全な破壊は家を追われた人々に大きな被害をもたらし、UNRWAの機能を限界に追い込んでいるという。

「140万人もの人を施設に受け入れることになるなど、まったく想像していませんでした。受け入れを予定していたのはわずか45万人でした。ですから現在では、予定の8~9倍の人数を受け入れていることになります。破壊の規模、速度、度合いは前代未聞です」

UNRWA職員も無慈悲な爆撃で犠牲となっており、同組織は10月7日以来136人の職員が犠牲になったと発表している。これは国連にとって、紛争における職員の犠牲者の数としては史上最大となっている。トーマ氏によると、現在はUNRWAの職員たちも70%が住居を失い、国連の避難所で生活を送っているという。

イスラエルの軍事行動で死亡、負傷、住居の喪失といった被害を受けた職員に関して、UNRWAとして告訴や何らかの法的措置を取る予定はあるかという問いに対し、トーマ氏は「まだ分からない」と述べた。

しかしトーマ氏は、次のように述べた。「戦争が終わったら、何が起きたのかについて調査を行い、責任説明が果たされるべきです。我々職員の被害も含め、ガザ全域での違反行為を調査すべきです」

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