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ガザ地区保健省、イスラエルとハマスの戦争で2万9000人以上のパレスチナ人が死亡と発表

2024年2月19日月曜日、イスラエル南部のガザ地区境界にある場所で、写真撮影のためポーズをとるイスラエルの女性兵士。(AP)
2024年2月19日月曜日、イスラエル南部のガザ地区境界にある場所で、写真撮影のためポーズをとるイスラエルの女性兵士。(AP)
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20 Feb 2024 09:02:37 GMT9
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  • 国連人権高等弁務官は、イスラエルに拘束されている数百人に上る成年・未成年のパレスチナ人女性について懸念を表明した
  • イスラエルは、パレスチナの武装勢力について1万人以上を殺害したと発表しているが、その数字について根拠を示していない

ガザ地区ラファ:ガザ地区保健省の19日の発表によると、昨年10月7日以降、ガザにおけるイスラエルの攻撃で死亡したパレスチナ人は2万9000人を超えたという。近年の歴史上最も多くの死者を出した破滅的な軍事作戦の1つである今回の軍事衝突にとって、新たな重大な節目となった。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、10月7日に武装組織ハマスがイスラエル人コミュニティへ攻撃を実施して以来、ハマスに対する「完全勝利」を果たすまで攻勢を続けると宣言している。ネタニヤフ氏とイスラエル軍は、エジプトとの国境地帯にある最南端の町ラファにまもなく軍隊を移動させると発表している。ラファには、ガザに住む230万人のうち半数以上が、他の地域での戦闘から逃れるために避難している。

イスラエルの最大の同盟国であるアメリカは、仲介役のエジプトとカタールと協力して、いまだに再び停戦と人質解放の合意を取りつけようとしている。しかしそうした取り組みはここ数日行き詰まっているようで、加えてネタニヤフ首相はカタールの怒りを買った。カタールに対し、ハマスに圧力をかけるよう呼びかけ、同国がハマスに資金を提供していると示唆したのだ。

2024年2月19日、パレスチナの武装組織ハマスとイスラエルとの戦闘が続く中、ガザ地区南部にあるラファ東部でイスラエル軍の砲撃があった後、建物の消火活動に当たるパレスチナ民間防衛チームのメンバー。(AFP)

また今回の紛争により、イスラエルとレバノンの武装組織ヒズボラとの間で、毎日のように砲撃の応酬が繰り広げられる事態となっている。この衝突はたびたび紛争の激化が危惧されている。

レバノンの国営メディアによると、イスラエル軍機が19日、南部の港湾都市サイダの近郊で、主要都市近郊では最大規模となる空爆を少なくとも2回実施し、14人が負傷したという。イスラエル軍はサイダ近郊にあるヒズボラの武器庫への攻撃を実施したと発表した。これは、19日未明のドローン攻撃への報復だという。ドローンはイスラエル北部の都市ティベリア近郊の空き地で爆発した。

ガザでは、同地区保健省の発表によれば、開戦以来の死者数が2万9092人に上り、その約3分の2が女性と子どもだという。6万9000人を超えるパレスチナ人が負傷し、ガザの病院では医療崩壊が起き、部分的であっても機能している病院は全体の半数以下となっている。同省は、この集計において民間人と戦闘員を区別していない。

今回の戦争の発端は、10月7日にハマス率いる武装勢力がガザからイスラエル南部に突入し、約1200人を殺害(そのほとんどが民間人)し、約250人の男性、女性、子どもを人質に取ったことだった。昨年11月にイスラエルが拘束するパレスチナ人との交換で人質の解放が行われた後も、約130人が人質となったままであり、そのうち4分の1は死亡したと見られている。

イスラエルとハマスの間で紛争が続き、ガザ地区住民が危機的なレベルの飢餓に直面する中、イスラエルの検問所付近で支援トラックから手に入れた小麦粉の袋を運ぶパレスチナ人(2024年2月19日ガザ市)。(ロイター)

イスラエル軍は19日、最年少の人質とみられる男の子とその兄と母親が、10月7日に誘拐された直後、ガザ南部の都市ハーン・ユーニスの通りで連れて行かれる様子が映った映像を公開した。

この映像は、シリ・ビバスさんと2人の幼い男の子、アリエル君(4歳)とクフィル君(当時生後9ヶ月)が最初に拉致された後も生存していたことを示す証拠となる。2人の男の子は、現在も捕らわれている唯一の子どもであり、母親とともに拉致されていた。

イスラエル軍首席報道官のダニエル・ハガリ少将は、軍は一家の安否について「とても心配している」と語った。ハガリ少将によれば、軍はハーンユーニスでの攻撃で押収した監視カメラにこの映像が映っているのを発見したという。

ガザ地区境界付近のイスラエル南部の場所から撮影された写真に映る、パレスチナ武装組織ハマスとイスラエルの戦闘が続く中、境界を越えてガザ北部に向かうイスラエルの戦車(2024年2月19日)。(AFP)

映像には、毛布に包まれたビバスさんがアリエル君を抱え、拉致実行犯に砂利道を通って連れて行かれる様子が映っているように見える。軍によると、クフィル君はベビースリングに入れられていて毛布の下に隠れて見えないと考えられるという。

歯のない笑顔を浮かべる赤髪のクフィル君は、イスラエル全土で、今なおガザで拘束されている人質に対する無力感と怒りを象徴する存在となっている。一家の父親ヤルデン・ビバスさんも今なお拘束されている。

ビバスさん一家の親族は声明で、映像は「私たちの心を引き裂く」と述べた。親族は交渉を行って人質全員を解放するよう必死に訴えた。今年1月、一家と数百人の活動家たちは、一家が「世界で最も悲しい誕生日パーティー」と呼ぶ、クフィル君の1歳の誕生日を祝う誕生日会を開いた。

戦争が始まって以降何千人ものパレスチナ人がイスラエルに拘束されているが、イスラエルの人権団体の報告書によれば、イスラエルの監獄に拘束されているパレスチナ人が看守から毎日暴力を受けているという。看守は独房に入って、収監者に挑発されたわけでもないのに警棒や拳で殴ったり蹴ったりするなど、拷問に相当する虐待を行っているという。「人権のための医師団・イスラエル」の19日の報告書によれば、看守に小便をかけられたり、イスラエル国旗にキスさせられたり、裸にさせられたりしたと収監者が訴えているという。さらに収容されている独房は過密状態であり、収監者は長期間水を与えられていないという。

国連人権高等弁務官は、イスラエルに拘束されている数百人に上る成年・未成年のパレスチナ人女性について懸念を表明した。高等弁務官によれば、少なくとも2人がレイプされ、他に「さまざまな形の性的暴行を受けた」との信頼に足る報告があるという。そうした性的暴行には、男性警官によって裸にされ身体検査を受けさせられる、「屈辱的な状況で」写真を撮られるといったものがある。

イスラエルは、パレスチナの武装勢力について1万人以上を殺害したと発表しているが、その数字について根拠を示していない。イスラエル軍は、民間人に危害を加えないようにしていると主張し、多くの死者が出ているのはハマスのせいであって、ハマスが人口密度の高い住宅街で戦闘を行っているためだとしている。同軍によれば、昨年10月下旬の地上侵攻開始以降、236人の兵士が死亡したという。

ネタニヤフ首相を首班とし3人で構成される戦時内閣に参加するベニー・ガンツ氏は、18日、イスラム教の聖なる月「ラマダン」が始まるまでに人質が解放されなければ、攻撃をラファにまで拡大させると警告した。今年のラマダンは3月10日頃に始まると予想されている。

イスラエルはラファから民間人を避難させる計画を策定中だと発表しているが、大部分が破壊され、荒廃した領土のどこに民間人を避難させるのかは明らかではない。エジプトは国境を封鎖しており、パレスチナ人が大量に流入する事態になれば、数十年来続くイスラエルとの平和条約の根幹を揺るがしかねないと警鐘を鳴らしている。

国連当局者によれば、すでに戦争によってガザに住むパレスチナ人の約80%が家を追われ、4分の1が飢餓状態になっているという。

アメリカは依然として一時的な停戦と人質解放を求め、こうした立場と相容れないために即時停戦を求める国連安保理決議には拒否権を発動すると主張している。

アルジャジーラのインタビューでハマス高官ハリル・アルハヤ氏は、これまでのハマスの要求を繰り返して、残りの人質の解放にはイスラエルの攻撃停止、イスラエル軍のガザからの撤退、ハマス幹部を含むパレスチナ人の囚人数百人の釈放が必要だと主張した。またアルハヤ氏は、この地域の安定は、完全な主権を有するパレスチナ国家の樹立にかかっていると述べた。しかし、その国境をどう定めるべきかについては明言しなかった。

ネタニヤフ首相はハマスの要求を拒否している。ネタニヤフ氏は、アメリカのユダヤ人指導者たちを前にした18日の演説で、昨年の停戦と人質解放の合意仲介で重要な役割を果たしたカタールに圧力をかけるべきだと主張した。

「他の国にはできなくともカタールはハマスに圧力をかけることができるんです。カタールはハマスの指導者を受け入れており、ハマスも資金面でカタールに依存しています」。ネタニヤフ氏はそう語った。「我々は人質の解放を望んでいるのですから、カタールにハマスに圧力をかけるよう強く求めていただきたいです」

カタール外務省のマジェド・アル・アンサリ報道官は、ネタニヤフ首相の発言について「紛争を長引かせようとする新たな試みであり、そうした行動に出る理由は誰の目にも明らかだ」と一蹴し、ネタニヤフ氏の国内政治上の問題が理由だと示唆した。

カタールはハマスへの資金提供について否定し、近年のガザへの援助はイスラエル、アメリカ、その他の当事者との全面的な協調のもとで行われたとしている。

「イスラエルの首相は、カタールが初日から仲介努力、危機の終結、人質の解放に向けて尽力してきたことを十分理解しているはずだ」と同報道官は語った。

AP

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