Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter
  • Home
  • 中東
  • ガザ地区の医師、人道支援物資運搬中の車列を巡る惨劇の負傷者の80%は銃創を受けていた

ガザ地区の医師、人道支援物資運搬中の車列を巡る惨劇の負傷者の80%は銃創を受けていた

イスラエルとハマスの紛争が継続する最中、アルシファ病院のベッドに横たわるパレスチナ人男性。ガザ地区の保健当局の職員によると、この男性は、援助物資を待っている間にイスラエル軍から銃撃を受けたのだという。ガザ市。2024年3月1日。(ロイター通信)
イスラエルとハマスの紛争が継続する最中、アルシファ病院のベッドに横たわるパレスチナ人男性。ガザ地区の保健当局の職員によると、この男性は、援助物資を待っている間にイスラエル軍から銃撃を受けたのだという。ガザ市。2024年3月1日。(ロイター通信)
Short Url:
02 Mar 2024 08:03:28 GMT9
02 Mar 2024 08:03:28 GMT9
  • 2023年10月下旬にイスラエル軍が地上攻撃を開始して以来孤立状態でほぼ壊滅しているガザ地区北部には、依然として数十万人のパレスチナ人が残存しており、飢餓がさらに深刻化していると、国連当局者らは、述べている

ガザ地区、ラファ:人道支援物資運搬中の車列を巡る惨劇で負傷したパレスチナ人たちの一部を治療したガザ市の病院の院長は、3月2日、負傷者たちの80%以上が銃創を受けており、イスラエル軍による激しい銃撃があったと考えられると述べた。

ガザ地区の保健当局者らによると、3月1日、少なくとも115人が死亡、750人以上が負傷したという。目撃者が語るところによると、大勢の群衆が運搬中の車列から支援物資を引き出そうと先を争っている最中に、近傍のイスラエル軍部隊が発砲したのだという。イスラエル側は、ガザ地区の絶望的な状況にあるパレスチナ人たちが支援物資を載せたトラックに殺到したため群衆の人数が急増し、その結果踏み潰された人々が死に至ったと発表した。イスラエル側は、群衆が威嚇的に近づいてきたため、現地の部隊は警告射撃を行ったと述べている。

アルオウダ病院の院長代理であるムハンマド・サルハ博士は、同病院に運び込まれた負傷者176人の内、142人に銃創が有り、残りの34人には殺到した群衆の下敷きとなったことによる負傷があったとAP通信に語った。

遺体は死者数の確認のために政府運営の病院に運ばれたため、亡くなった人々の死因についてサルハ博士はコメント出来なかった。

カマル・アドワン病院の院長のフサム・アブ・サフィヤ博士は、搬送された負傷者の大半は上半身に銃創が有り、死亡者の多くは頭部や頸部、胸部に銃弾を受けていたと語った。

この惨劇は、約5ヶ月に及ぶイスラエルの攻撃による混乱が、国連がその4分の1が飢餓の危険に晒されているととしているガザ地区の230万人のパレスチナ人たちに援助物資を届ける取り組みをどれほど困難なものにしているのかを浮彫りにした。

国連や他の援助団体は、イスラエル軍との調整の困難さや進行中の戦闘、そして、輸送の車列を圧倒する人数の絶望的な状況に置かれた大群衆が引き起こす秩序の崩壊によって、ガザ地区の大部分に対して物資を届けることがほぼ不可能となっているとして、援助物資運搬の車列のための安全な経路の確保を求めている。

2023年10月下旬にイスラエル軍が地上攻撃を開始して以来孤立状態にあるガザ地区北部は、ほぼ壊滅しているにも関わらず、数十万人のパレスチナ人が依然残存しており、飢餓がさらに深刻化していると、国連当局者らは、述べている。

3月1日にガザ市のシファ病院を訪れた国連チームは、2月29日の援助物資が運搬されていた現場での惨劇から搬送され治療を受けている200人以上の「負傷者の多数には銃創」があった事を明らかにした。

国連のアントニオ・グテーレス事務総長と複数の欧州諸国首脳は、何が起こったのかについて、独立した信頼の置ける調査を行うことを求めた。

ジョー・バイデン米大統領は、3月1日、人道支援物資の輸送の困難さを認め、米国は間もなくガザ地区への空輸を開始し、「おそらく海上輸送を含めて」物資を搬入する他の方法を検討すると述べた。

このバイデン米大統領の発表は、ヨルダン航空機が、ガザ北部上空から、米や小麦粉、粉ミルクなどの物資にパラシュートを取り付けて投下した数時間後に行われた。

「罪の無い人々の生命が懸かっています。子供たちの生命も懸かっているのです。さらに援助物資がガザ地区に到達するまで私たちは手を拱くことはありません」と、バイデン米大統領は語った。「数台ではなく、数百台のトラックで物資を輸送する必要があるのです」

援助関係者たちは、飛行機からの空中投下は、援助配布においては信じ難いほど高価な方法だと述べた。

「ガザ地区への食料の空中投下が、現在の問題に対する解答足り得ると私は思いません。真の解決策は、検問所を開き、物資を輸送する車列によって、有意義な援助を実現することです」と、国連パレスチナ難民救済事業機関のフィリップ・ラッザリーニ事務局長は2月29日に語った。

2月29日の援助物資輸送車列は国連によって編成されたものではなく、イスラエル軍によって管理されていた事が明らかとなった。イスラエル軍は、この車列がガザ地区北部に確実に到達するよう守るために同軍の部隊が待機していたと述べた。

国連のステファン・デュジャリック報道官は、ガザ地区はイスラエルの支配下にあるため、3月1日の輸送車列も「イスラエル当局と調整し、問題を回避しました」と述べた。

「国連は毎日そのようにしようと力を尽くし続けています」と、デュジャリック報道官は語った。「うまく事が運ばない日があります」

2月29日の銃撃による惨劇は、戦後のガザ地区を対象とした計画を実行するにあたってイスラエルが秩序を維持し得るのか否かについての疑問を浮上させた。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、ハマスを壊滅させた後も、イスラエルがガザ地区の治安維持と政治的支配を恒久的に維持するという実質的な再占領を行う計画を提案している。この計画では、イスラエルが選んだパレスチナ人がガザ地区を管理運営することになるものの、協力するパレスチナ人が存在するのか否かについては不透明である。

つまり、この戦争を通じて察知した脅威に対して強力な火力で対応し続けてきたイスラエル軍が、国際社会が構想する戦後の大規模な人道復興の取り組みにおいて、ガザ地区住民の管理を担当することになる可能性が高い。

イスラエルは、大半を民間人が占める約1,200人が殺害され約250人が拉致された 2023年10月7日のハマスによるイスラエル襲撃への返報として、ガザ地区において、陸海空からの攻撃を開始した。イスラエルは開戦以来、ラファ検問所とイスラエルのケレム・シャロム検問所経由でエジプトからガザ地区南部に届く少量の援助物資を除き、食料や水、医薬品その他の物資のガザ地区への搬入を禁じている。

さらなる援助の容認が国際的に要請されているのも関わらず、ガザ地区に入る援助物資を運搬するトラックの台数は戦争前の500台に比べるとはるかに少ない。

ガザ地区の保健省は、内戦によるパレスチナ人の死傷者数は30,228人に上り、それに加えて負傷者数が71,377人に達してと発表した。同省は、統計において民間人と戦闘員を区別しないが、死亡者の約3分の2は女性と子供が占めていると明かしている。

2月29日の惨劇は、約30台のトラックから成る車列が夜明け前にガザ地区に入った際に発生した。

人々が小麦粉の入った袋を取ろうと移動中のトラックに登り、イスラエル軍部隊が戦車などから銃撃を開始するという絶望と混乱の様子を、負傷者の多くが語った。

「私は、小麦粉の入った袋を持って、帰宅途中でした。イスラエル軍は私の右足と左足を撃ちました。私たちの頭上に砲弾が打ち込まれ、銃撃されました」と、カマル・アドワン病院で治療を受けていたサミール・サルマン氏は語った。

イスラエル軍は、数十人の死者たちは車両の暴走によるもので、運転手がその場から脱出しようとした際にトラックにひかれた人々もいると発表した。

イスラエル軍の首席報道官であるダニエル・ハガリ少将は、当該地区を警備していたイスラエル軍は、「群衆が危険を及ぼし得る形でイスラエル軍に近づいてきたためその脅威に対してのみ」発砲したと述べた。ハガリ少将は、現場のイスラエル軍部隊は、「援助を求めていた人々には発砲していない」と述べた。

AP

特に人気
オススメ

return to top