エルサレム：米国からの強い圧力にさらされ、イスラエルは先週、ガザへの援助を劇的に増加させると約束した。

しかし、数日経ってもその約束が実現する兆しはほとんどなく、援助活動家によれば、被害の大きいガザ北部では飢餓が蔓延しているという。

アメリカ国際開発局のサマンサ・パワー長官は今週、この地域で飢饉が発生しているという「信頼できる」報告を受け、イスラエルに対し、人道援助物資の輸送を促進するためのさらなる措置をとるよう促したと述べた。

パワー長官の発言は、ジョー・バイデン米大統領の発言と呼応するもので、大統領は水曜に、イスラエルによる援助拡大の努力は 「十分ではない 」と述べた。

イスラエルは領土に入る援助トラックの数を劇的に増やしたと言うが、国連職員はわずかな増加しか報告していない。

ここでは、ガザへの援助についてわかっていることと、なぜ報告の食い違いが続いているのかを説明する。

ガザへの援助物資の量は？

イスラエルは、日曜以来、1日平均400台のトラックが到着し、ガザへの2つの主要な検問所のひとつであるケレム・シャローム検問所の、パレスチナ側に援助物資が積み上げられているという。

しかし、国連パレスチナ難民救済事業機関（通称UNRWA）のジュリエット・トゥーマ広報官は、援助職員はガザに到達した援助物資の量が、わずかに増加していることに気づいているが、イスラエルが主張するような急増には及んでいないと述べた。

UNRWAによれば、月曜には223台の援助物資を積載したトラックが通過した。火曜には246台に達したが、水曜には141台に減った。

一方、ガザ北部にはわずかな援助しか届いていない。

イスラエルは何を約束したのか？

バイデン大統領が先週、ガザ戦争に対する今後の支援は、イスラエルの民間人や援助関係者の保護にたいする尽力次第、と述べた後、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は一連の措置を約束した。バイデン大統領は、イスラエルの空爆で、ガザに食糧を配達する援助職員7人が死亡したことを受けて発言した。

ネタニヤフ首相は、ガザ北部に通じるイスラエルのエレズ検問所（10月7日にハマス過激派がイスラエル南部に突入した際に破壊した）を直ちに再開放させると約束した。ネタニヤフ首相はまた、アシュドッドにあるイスラエルの港も開放し、別の陸路検問所を通じてヨルダンからの援助物資輸送を増やすとも述べた。

しかし、イスラエル当局は今週、エレズ検問所を開放する計画を取り下げた。その代わり、新しい陸橋を建設するというが、いつ開通するかは不明だ。一方、アシュドッド港はまだ援助物資の輸送を受け入れておらず、ガザの人道支援団体によれば、倉庫に到着するトラックはそれほど増えていないという。

今回のイスラエル・ハマス戦争以前は、食料、燃料、その他の物資を積んだトラックが毎日500台ほどガザに到着していた。

さらに、領土内で養殖された魚や農産物が援助物資を補っていた。

イスラエルとエジプトによる17年間の封鎖によって、経済が打撃を受けている混雑した領土では、それでも物資は不足していた。ハマスに武装させないための封鎖は、ガザへの物資の出入りを制限し、貧困と失業を蔓延させる一因となった。

ガザの国連パレスチナ難民救済事業機関（UNRWA）のスコット・アンダーソン氏は、開戦以来の援助の低下が、戦前からの栄養不足をさらに悪化させたと指摘する。

「理解していただきたいのは、ここは戦前から食料が充実した環境ではなかったということです。これ以上耐えられないのです」とアンダーソン氏。

国連とイスラエルの集計に食い違いがあるのはなぜか？

イスラエルと国連では、ガザに到着したトラックの数え方が違う。

パレスチナ問題を担当する、イスラエル占領地政府活動調整官組織COGATの、シモン・フリードマン氏によれば、イスラエルは、ガザで検問し通過を許可したすべてのトラックを集計しているという。

ケレム・シャローム検問所では、トラックがガザに入ると、パレスチナ人の運転手が集荷できるように、長さ1キロ（1.5マイル）のゾーンに援助物資を積んだパレットが置かれている。

UNRWAは、パレスチナ人の請負業者が運転するトラックが、そのゾーンから戻ってくるのを数えるとアンダーソン氏は述べた。

また、イスラエルから到着するトラックには荷物があまり積載されていないこともあるという。ガザ側のパレスチナ人運転手は、ゲートを通過する前にトラックに援助物資を満載する。

トラック台数の違いを説明することができるかもしれない。

何が援助物資の輸送を遅らせているのか？

イスラエルの検問を終え、回廊を通り、ゲートを通過してガザに入るには時間がかかる。しかも、イスラエルがケレム・シャローム検問所の通過をより困難にしている、とアンダーソン氏は続けた。

戦争が始まって以来、イスラエルはこの検問所を部分的に閉鎖している、とアンダーソン氏は語った。パレスチナ人の運転手は、到着したトラックからの荷降ろしを待って集荷しなければならない。

イスラエルによって検査された援助物資は、時には一晩中、集荷を待つことになる。国連によれば、治安の悪化と夜間の空爆のため、安全のために午後4時半にはすべての活動を停止しているという。UNRWAによると、以前は地元のパレスチナ警察が援助職員を護衛していたが、ラファで少なくとも8人の警察官が空爆で死亡した後、多くの警察官が任務の継続を拒否したという。イスラエルによれば、武装したハマス過激派が援助物資を横取りしようとしているという。

COGATは、検問所の使用時間を制限したり、援助物資を受け取るためのトラックの移動を制限しているとの疑惑を否定し、国連には逐次援助物資を配布する、十分な処理能力がないとして批判した。

今後どうなるのか？

イスラエルのヨアヴ・ガラント国防大臣は水曜夜、援助活動の拡大が最優先事項であると述べた。

「ガザに援助を殺到させる計画で、1日あたりトラック500台に達する見込みです」とガラント国防相は述べたが、計画を達成するための時間枠は明言しなかった。

しかし、イスラエルがその計画を達成したとしても、検問所での集荷速度や配達職員らの安全への懸念が、物資の輸送を妨げ続けるかもしれない。国連は、人道援助に加え、ターミナルを増設し、相当量の商業物資を荷受けできるように求めている。

「ガザはあっという間に援助物資に頼るようになってしまいました。市場は閉鎖を余儀なくされています。これは持続可能ではありません」とUNRWAのトゥーマ広報官は語った。

AP