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頭脳流出の増加に直面するトルコ、深刻化する国内情勢

2020年7月17日イスタンブールのアヤソフィア大聖堂の前でスローガンを叫ぶトルコ人男性(ロイター)
2020年7月17日イスタンブールのアヤソフィア大聖堂の前でスローガンを叫ぶトルコ人男性(ロイター)
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21 Jul 2020 05:07:21 GMT9
21 Jul 2020 05:07:21 GMT9
  • 昨年国外へ移住したトルコ人は33万人超(最近の公式統計)

メネクシェ・トカイ

アンカラ:ロンドン・メトロポリタン大学の講師であるアフメト・エルディ・オズターク博士は、9年間海外に住んでいる。彼は両親の暮らす母国から遠く離れた場所で結婚し子供をもうけた。彼は常に「ディアスポラ(民族離散)の一員となることは感情的にとても難しい」と断言する。

しかし、トルコに戻り、より高額の報酬を得られる大学での職に就く意思があるかを問われると、彼は「政治は言うに及ばず、学問の分野においても安定性と将来性を感じない」とやんわりと否定した。

最近、アフメト・ダウトオール前首相によって設立された、イスタンブールのセヒール大学が大統領令により一夜にして閉鎖に追い込まれた結果、同大学で教鞭をとるために海外から招聘されていた数名の外国人の研究者が、職を失い絶望的な状況に陥った。大統領令は、ダウトオール氏がレジェプ・タイップ・エルドアン大統領と袂を分かち、新党「未来党」を結成してから長く続いていた論争の末発令されたものだ。

トルコ政治とディアスポラの研究に関する専門家であるオズターク氏によると、特に同国経済の急速な悪化の後、国内で広まった縁故主義に失望が広がっているという。

野党CHP所属のアンカラ市長であるマンスール・ヤワシュ氏は最近、問題の多かった与党の前任者メリヒ・ギョクチェク氏の時代に、市政機関で不当に雇用されていた者のリストを公表した。

「民主主義は日常生活に影響を与える」とオズターク氏はアラブニュースに語る。「若い市民は、高級幹部との縁故がなければ、自分の能力に基づいて仕事を見つけることは難しいと感じている。基本的な自由さえも奪われていると感じている者も少なくない」

また同氏は、短期的には、こうした若い世代を「取り戻す」ことは不可能に近いと言う。若きプロフェッショナルたちがこぞって国を去る選択をし、頭脳流出が起こっているからだ。

2019年に国外へ移住したトルコ人は前年比2%増加した。

政府系のトルコ統計局が最近発表した公式統計によると、昨年国外へ移住したトルコ人は合計330,289人に達し、そのうち40.8%は20~34歳であった。

イスタンブール政治研究所のセレン・セルビン・コルクマズ常任理事によると、最近の調査結果は、若者たちがトルコを離れる理由が、主に労働条件や生活水準、仕事の機会、そして自由のためであることを示しているという。

「移住は日常の苦闘からの出口戦略になります。国内では若者の失業率が25%以上に達しており、若者の多くが、依然として家族の経済的支援を受けているか、低賃金で働いている状況です」とコルクマズ氏はアラブニュースに語る。

こうした状況の中で若者たちが自身の将来像を描くことは難しい、と彼女は説明する。

「この状況は彼らに『不確実性の暴力』を生み出していると思われます。失業に加えて、国内の権威主義的な傾向(ソーシャルメディアの禁止や思想の自由に対する脅威など)は若者に衝撃を与え、彼らの将来への懸念を増幅させているのです」

トルコの社会民主主義財団(SODEV)は最近、15歳から25歳までの若者を対象に、機会があれば海外に住みたいと思うかの意識調査を実施した。

与党の公正発展党(AKP)政府を支持する回答者のほぼ半数が、海外に住みたいと答えており、彼らが国の将来への信頼を失っていることの証左であると専門家は指摘している。

5月に発表された同調査によると、回答者の70.3%が、政治的および/または官僚的な「縁故」がなければ、才能があったとしても国内でプロフェッショナルとして昇進することはできないと考えているようだ。

コルクマズ氏によると、現在のトルコの若い世代は、両親の世代に比べてはるかに不安定な立場にあるという。

「彼らには雇用の保障がありません。AKPの新自由主義政策に基づく教育は、もはや上昇志向を保証するものではありません。この国では、受けた教育と行う仕事の調和に基づく職業的アイデンティティが損なわれているのです」

「若者たちは卒業後に失望を感じます。彼らは絶望的な状況にありますが、現在の政党や政治家は彼らにとって魅力のある存在ではありません」とコルクマズ氏は続ける。

専門家によると、ユーチューブやツイッター、ネットフリックスなどのプラットフォームをさらに統制しようとする、最近の政府の危険な兆候に対して、ソーシャルメディアはデジタル時代において自由を守る最後の砦だと考えるジェネレーションZ(1995年から2015年の間に生まれた世代)の若者を中心に、反発が生じているという。

2023年の議会選挙では、若い世代が有権者の12%を占めると予想されており、同国の政治家が考慮しなければならない重要な要素と見られている。

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