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サウジ・UAEの平和的原子力計画での協力は模範となる、UAE原子力規制機関

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07 Nov 2022 03:11:00 GMT9
07 Nov 2022 03:11:00 GMT9
  • FANRのクリスター・ヴィクトーソン局長は世界をよりサスティナブルに変える技術の開発は支援に値すると述べた
  • 氏によると、UAEのバラカ原発で得られた教訓は非軍用原子力計画を持つすべての国にとって有用である

アラブニュース

ドバイ:激しさを増すロシア・ウクライナ紛争の行方を世界が見守る中、多くの人が核の脅威の深刻化は目前だと感じている。このような脅威に抗うように、世界中の原子力技術の規制機関や操業者は安全な原子力エネルギーの推進のため、努力を続けているとUAEの規制当局トップが語った。

1986年の旧ソ連と2011年の日本で起きた災害に言及しながら、クリスター・ヴィクトーソン氏は原子力産業が危険をはらむ事業である一方で「チェルノブイリ以降、原子力の安全性は全般的に大きく高まりました。福島の事故の後はさらに改善されています。安全性の強化が図られたのです」と説明した。

だが、ウクライナでの戦闘という文脈では、氏は次のように述べた。「原子力事故のリスクがある以上、我々全員が状況に危機感を持たなければなりません。過去にも複数の事故が起き、その多くは実際に壊滅的な被害をもたらし、環境と人々の健康に大きな損害を与えています」

現在UAEで連邦原子力規制局(FANR)の局長を務めるヴィクトーソン氏はアラブニュースが提供する一線の政治家やビジネス界のリーダーを招いて時事問題を扱うトークショー、「フランクリー・スピーキング」に出演し、発言した。

この発言は11月6日にエジプトのシャルム・エル・シェイクで開幕した第27回国連気候変動会議(COP27)に先立って行われた。

COP28気候サミットの開催国であるUAEには、4基の原子炉を備え、アラブ世界では最初の原子力関連の商用施設であるバラカ原子力発電所がある。

アラビア湾岸諸国で立ち上げられた多数の環境に配慮したイニシアチブに沿う形で、バラカ発電所は「環境中へのCO2(二酸化炭素)排出量を抑える」一助となるとヴィクトーソン氏は話した。「そして私は、我々全員が世界をよりサスティナブルにできるような技術の開発を支援するべきだと考えます」

「即効性のある解決策ではありません。原子力発電所を建設し、それを稼働させるには5年から10年かかります。より先進的な技術を取り入れたいと思えば、さらに長い時間が必要かもしれません。ですから、これは解決策の一部ではありますが、私の信じるところでは、唯一の解決策ではないのです」

UAE原子力規制機関のトップによると、互いの活動から、多くを学ぶことができるとともにUAEのバラカ原発で得られた教訓は非軍用原子力計画を持つすべての国にとって有用である。(AN Photo)

2017年12月、イランが支援するフーシ派民兵組織がバラカ原子力発電所に向けて巡航ミサイルを発射したと主張した。UAEは原発に到達したミサイルはないと発表したが、この一件は原子力関連施設への最高度の警備と安全手順の必要性を明らかにした。今年2月、ヴィクトーソン氏はロイター通信に対し、バラカ原発のセキュリティは十分だと語っている。

同様に、ヴィクトーソン氏は「フランクリー・スピーキング」のホスト、ケイティ・ジェンセンに「現代の原子力発電所、特にバラカ原発は物理的に非常に強固に保護されています。これはUAEにおける必要条件です。もちろん、それで物理的保護策が発電所に導入されているのです」と話した。

「しかし、原発の物理的保護を確実に行うためには、国を挙げての協力が必要です」と彼は話し、物理的保護に加えてバラカ原発には厳格なサイバーセキュリティ上の手順があり、頻繁なテストや訓練を行っていると付け加えた。

年来、サウジアラビアはクリーンで安全な原子力エネルギー計画に向けて動いていた。最近になって、UAE当局者がサウジアラビアのキング・アブドル アジーズ科学技術都市(KACST)での研究用原子炉プロジェクトを視察した。

サウジビジョン2030のウェブサイトによると、サウジのプロジェクトでの原子炉の仕様はキング・アブドゥラー原子力・再生可能エネルギー都市(K.A.CARE)と世界中の専門家の参加のもとKACSTが設計したものである。

2010年に国王令によって創始されたこの原子力研究プロジェクトは「世界レベルの地元産業の全面的な支援を得て、サスティナブルな代替エネルギーの生産体制を高めることでサウジアラビアに持続可能な未来を」築くことを狙いとしている。

サウジアラビアは1962年に国際原子力機関(IAEA)に加盟して以来、IAEAの「マイルストーン・アプローチ」の下で忠実に責任を履行してきた。このアプローチは最終的に原発の建設と稼働に至る3段階の計画である。

これまでのところ、サウジアラビアは一連の研究から成る第1段階と規制の枠組みと機関を設立する第2段階を完了した。

今年2月、IAEAのラファエル・グロッシ事務局長はリヤドで開かれたオンライン会議でIAEAはサウジアラビアと緊密に協力して同国での原子力エネルギー計画を進めていると語った。

年来、サウジアラビアはクリーンで安全な原子力エネルギー計画に向けて動いていた。最近、UAE当局者がサウジアラビアのキング・アブドル アジーズ科学技術都市(KACST)での研究用原子炉プロジェクトを視察した。(提供写真)

「我々はサウジアラビアの規制当局と協力を行う合意を結び、相互に訪問しています。情報共有のため、定期的に会合を持っています」と原子力の安全と規制の分野で30年以上の経験を持つ物理学者であるヴィクトーソン氏は語った。

「我々は、設備の建設方法や規制の方法、どのような種類の規制が必要とされるかについて、情報を共有しています」

「互いの活動から、多くを学ぶことができます。つまり、我々は最近UAEで3基の原子炉を建設したばかりで、サウジは建設を始めたところです。ですから、もちろん、共通の関心事が多くあるのです。UAEとFANRは情報を共有する用意があります。我々の原則の一つは、非軍用原子力技術の透明性と開示だからです」

イランが物議を醸す核計画を推し進める中で、ヴィクトーソン氏は次のように語った。「UAEはすでに手本となっていると思います。(サウジとUAE)両国の協力関係もまた、隣り合う二つの国が原子力の平和的利用に関して互いにどのように支援できるかのモデルケースになるかもしれません」

「中東でも、世界の他の地域で見られるのと同様に、規制当局間では情報の開示や議論、協力が活発に行われています。これは、ちょうど今我々がこの地域に導入しつつあるものです。本当に、大きな利点があります」

ヴィクトーソン氏によると、FANRとUAEにとって、こと原子力に関しては安全が最優先される。2008年以来、UAEの原子力政策は「安全、セキュリティ、拡散防止の面でもっとも厳しい国際的基準の遵守を強調しています。我々はこの方針を、バラカ原発の敷地内で実行しているのです」

「我々は用地を査定し、安全だと判断しました。それから調査官常駐のもと、バラカ原発の建設作業を監督し、現在は稼働状況を監督しています」

バラカ原発は安全に関する厳格な規制手続きに基づいて運用されているとヴィクトーソン氏は説明した。操作担当者と緊密に連携して、8名の住み込みの調査官が日々の稼働やメンテナンス、補修作業を監視している。

 

これに加えて、アブダビにあるFANR本部にはそれぞれの原子炉を監視するスクリーンが設置されており、原発で起こりうるあらゆる可能性に備えた頻繁な模擬訓練を実施している。また、研究所ではバラカ原発周辺の魚介類や水、空気、砂の放射能レベルを測定している。

「UAEは原子力安全条約、放射性廃棄物条約、核物質防護条約に署名し、それらを遵守しています。これらはすべて実際、安全とセキュリティ、拡散防止を支えるための手段です」とヴィクトーソン氏は述べた。

最近数カ月、IAEA関係者がウクライナでの戦闘が欧州最大のザポリージャ原発での破滅的な放射能事故につながる可能性について懸念を表明した。原発は数か月来、ロシアの管理下でウクライナ人技術者が稼働させている。

「原子力事故のリスクがある以上、我々全員が状況に危機感を持たなければなりません」とヴィクトーソン氏は言う。「過去にも複数の事故が起き、それらの多くは実際に壊滅的な被害をもたらし、環境と人々の健康に大きな損害を与えています」

クリスター・ヴィクトーソン氏は原子力産業が危険をはらむ事業である一方で「チェルノブイリ以来、原子力の安全性は全般的に大きく高まりました」と説明した。(AN Photo)

氏によると、原発の安全性に関して問題となるのは立地と稼働だけではない。原子力による発電を確立しつつある国にとって、放射性廃棄物の廃棄と保管がもう一つの難題である。

原発で生じる放射性廃棄物には、いくつかの種類がある。その一つは管理操業廃棄物で、放射能で汚染された衣類や道具、装備などがあり、ある種の処理が必要になるが、「低から中レベルの廃棄物」に分類され、容易に保管ができる。

ヴィクトーソン氏によると、問題になるのは使用済み核燃料の廃棄と保管である。

「数千年も有害なままにとどまるため、これはまったく別物です。この種類の廃棄物をちゃんと処理できるようなシステムを見つける必要があります。ですから、世界中で多くの研究がされており、我々はUAEで、諸外国の経験を有効に活用しています。政府も目下、使用済み核燃料の安全な廃棄方法に関する方針を策定しようとしています」と彼は話した。

ヴィクトーソン氏によれば、2008年以来UAEは「原発に関してと同様に、放射性廃棄物の安全性に関してきわめて責任ある態度を取っています」

しかしながら、氏は次のように付け加えた。「この件についてなされるべき決断は、急を要するものではありません。使用済み核燃料の問題の最終的解決を決定するまでに、ほとんど100年の猶予があるのです。おそらくは、技術が発展してゆくでしょう。そうすれば、我々は地中にそれを埋めるよりも賢い放射性廃棄物の処理方法を見つけられるかもしれません。しかし、UAEはそれら廃棄物を安全な方法で処理し、環境や人への害が決して生じないように注意を払っています」

ヴィクトーソン氏によると、UAEの原子力計画は石油・天然ガス依存を脱してエネルギー源と経済を多様化するだけでなく、社会的利益ももたらしている。氏はFANRの職員中44%が女性、72%がUAE国民だと述べた。

「国内にあるすべてのスキルを活用することが重要です。若い女性、男性の多くがFANRや原子力産業で働くことに強い関心を抱いています」とヴィクトーソン氏は話した。

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