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アル・ウラー遺跡 フランスとサウジアラビアの理想的な協力関係

現在、アル・ウラーの人口は約5万人(写真提供 AFALULA/RCU)
現在、アル・ウラーの人口は約5万人(写真提供 AFALULA/RCU)
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19 Jun 2023 08:06:18 GMT9
19 Jun 2023 08:06:18 GMT9

アーレット・クーリ

パリ:2国間の協力の模範となるモデルケースがあるとすれば、それはサウジアラビア北東部にあるアル・ウラーの遺跡の開発と美化のためのフランスとサウジの協力関係だろう。

2018年4月にエリゼ宮で締結された二国間協定から発足したこのプロジェクトは、サウジの文化や歴史を広めるという目的で協力するサウジのアル・ウラー王立委員会(RCU)とフランスのアル・ウラー開発庁(AFALULA)によって主導されている。

フランス政府機関と王立委員会が手を携えて、この地を経済的・観光的発展のモデルにしようと取り組んでいる。

ベルギーに匹敵する面積を持つアル・ウラーは、野外博物館と呼ばれるほど考古学的資源が豊富な地域だ。そして今や世界中から観光客が訪れる有名な観光地になりつつある。

2035年に予定されている開発工事の完了を前に、アル・ウラーの息を呑むような景観と比類ない豊かさはすでに多くの観光客を惹きつけている。

アル・ウラーとカイバルはアラビア半島最大の考古学の拠点であり、120人の考古学者と専門家が駐在している。彼らは休む暇もなく、考古学的発見と向き合っている、と考古学研究部長のイングリッド・ペリッセ氏はアラブ・ニュースのインタビューにフランス語で答える。

アル・ウラーこそ世界中の専門家が研究し続ける、「素晴らしき遺産」であるとペリッセ氏は断言する。

2022年には数多くの考古学的発見があり、少なくとも15世紀までさかのぼるアル・ウラーの旧市街の壁などが発見されている。「ダダンの古代都市遺跡でも、ものすごい発見がいくつもありました。まず新しい巨像。これはフランスの修復師が安定した状態にしてから、現場からアル・ウラー博物館に運ばれました。それから、供物、彫像、献酒台がそのまま残っていた小さな聖域の墓所も発見されたのですが、これは『Wonders of Arabia』の次のステージで展示される予定です。『Wonders of Arabia』とは2019年にパリのアラブ世界研究所(IMA)が企画した巡回展のことです。現在、王室委員会と協力して次のステージを企画しており、今年末には北京でお披露目できる予定です」

2022年9月には、ペリッセ氏の言うダダンの聖域の巨像を含む収蔵品がルーヴル美術館に貸与され、展示室に加わった。貸与期間は5年間で、更新可能とされている。

「サウジアラビアが第三国に作品を、しかもこのような大作を、貸し出すのは初めてです」とペリッセ氏は語る。砂岩像によって「世界最大の美術館に展示される偉大な文明の地図に、アル・ウラーとサウジアラビアが再び登場する」とペリッセ氏は信じている。

ペリッセ氏は2023年の方針について語った。「初めての完結に近づいている研究プロジェクトがいくつかありますが、そのうちのいくつかは王立委員会との合意のもと延長されます。なぜなら、彼らがもたらした結果は本当に驚くべきもので、新しい展望を開くものだからです」

今も残る古代都市の名残(写真提供 AFALULA/RCU)

アル・ウラーはすでに観光地として確立している

アル・ウラー・オアシス計画は、この地域の地図を描き換えることを可能にし、この種の試みとしては世界初となるものだ。

「我々は、王立委員会と共に、特にイスラム時代のカイバル、アル・ウラー地域全体の先史時代、そしてヘグラの新規研究プロジェクトを計画しています。きっと遺跡の探索に新たな展開をもたらすことでしょう」

「関係者全員が、両国の当局が支援するこのようなプロジェクトに参加できることの特権を理解しています」とペリッセ氏は熱く語る。「アル・ウラーはすでに観光地として確立しており、訪問者はダダン人の社会やナバテア人がどのような人々だったのかを知りたいと思ってやってきます」と付け加えた。

AFALULA会長ジェラール・メストラレ氏のチーフ・オブ・スタッフで、コミュニケーション・ディレクターのマティアス・クルニエ氏は、「アル・ウラーは常に、サウジアラビアの観光と文化の魅力に関するムハンマド・ビン・サルマン皇太子のビジョン2030の枠組みにおける旗艦プロジェクトでした」と述べている。

クルニエ氏によると、これはアラブ地域のイスラム文化以前の驚くべき歴史を現代に伝えるアル・ウラーの考古学的な豊かさに起因している。

クルニエ氏は、「アル・ウラーの地が中東や世界で認知されるようになった速さを称賛したい」とし、「2030年から2035年までに、持続可能な開発に重点を置きながら、約200万人の観光客を達成する」という野心を示している。

総額16億ユーロの250件の契約

アル・ウラーへの観光はニッチな立場にとどまっているが、これは意図的にそうしているのだという。「アル・ウラーは何よりもまず、保存が必要な巨大な考古学的・歴史的遺跡であり、このことは王立委員会が実施する都市計画・建築戦略全体において考慮されているからです」

この選択をすることは、「この素晴らしき遺産を無傷で残すために必須」であるとマティアス・クルニエ氏は考える。

アル・ウラーの人口は現在5万人ほどだが、開発により2030年にはその3倍の15万人に達すると予想されている。

2022年春、ダダン古代都市遺跡の巨像(写真提供 AFALULA/RCU)

アル・ウラーの渓谷は新たな住民を惹きつけるが、マティアス・クルニエ氏によれば、最も重要なのは、「アル・ウラーに住むようになった人々が国内の他の地域に住む必要性を感じなくなり、その結果、この地域の発展に積極的に貢献するようになる」という点だ。

また、経済面については、「王立委員会との協力は、建築、博物館、植物学、ホスピタリティ、馬産業、インフラ、スマートシティなど、あらゆる分野でフランスの専門知識を呼び込むことを目的としています」と強調する。

現在、フランスとサウジは数多くの分野で関わっているとクルニエ氏は言う。「AFALULAは、250件、総額16億ユーロの契約を締結しています」と、驚くべき規模に拡大しているのがうかがえる。

「つい10日前、王立委員会は、建築家のジャン・ヌーヴェル氏が設計した、本物の洞窟住居のような象徴的なホテルと、コンベンションセンターをシャラン保護区に建設する契約をブイグ建設と結びました」

クルニエ氏によると、関係するすべてのフランス企業は「アル・ウラーの現場で成功すれば、その実績はサウジと中東全体で活かせるため、中東でのビジネスの起点を作れる」という。

クルニエ氏は、すべての分野の価値向上施策が2035年の予定日までに完了することに「1000%」の自信を示している。「やはり、『ビジョン2030』の驚くべき構造が、サウジ全体に浸透しているためです」という。

サウジは、アル・ウラーは2035年までに年間200万人の観光客を受け入れ、3万8千人以上の雇用を創出し、GDPを1200億リヤル増加させるとみている。

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