ドバイ:国際観光の主要拠点となる可能性を秘めているサウジアラビアに引き付けられた、比類の無い旅行体験を通年で望む外国人観光客の数は増加している。
新型コロナ禍による世界的な旅行制限が撤廃された後、サウジアラビアの観光産業は急速な回復を見せている。実際、サウジアラビアの観光セクターは回復しているだけではなく、成長すらしているのである。
海外の旅行代理店は、「サウジアラビアのモルディブ」として知られるウムルジから古代のオアシス都市アル・ウラー、アシール地方南部の冷涼な山岳地帯のソウダに至るまで、サウジアラビアの数多くの観光地への旅行を手配している。
サウジアラビア政府は、5月、同国を通年観光地として広報宣伝する「リシンク・サマー(夏は再考)」キャンペーンを開始した。
「夏は言うまでもなく、サウジアラビアは年間を通して素晴らしい場所です」と、サウジアラビア観光局の広報担当者であるアブドラ・アル・ダキル氏はアラブニュースに語った。
「私たちが行っている『リシンク・サマー — サウジアラビアを訪れよう 』キャンペーンでは、9月1日まで8週間の文化フェスティバルが開催されている冷涼で緑豊かなアシール地方を初めとした、活力に溢れ、多彩な観光地を楽しむためのサウジアラビア訪問を勧誘しています」と、アル・ダキル氏は付け加えた。
「サウジアラビアは世界最大の観光ーへの投資国として観光産業振興の先頭に立っています。2030年までの新規目的地への投資額だけで5,500億米ドルに達するほどです」
「この投資は成果を上げています。2022年には9,400万人以上もの観光客が訪れ、観光客の支出総額は2021年比で93%増の1,850億リヤル(493億米ドル)にもなり、2023年の訪問客数も記録的な増加を示しています」
「こうしたデータは、サウジアラビアの観光産業にとって素晴らしいニュースであり、そして、サウジアラビアが海外の観光客にとって訪問必須の目的地として認識されており、その観光セクターには将来大きなチャンスが待ち受けているのだということを明確に示しています」
サウジアラビアのアフメド・アル・カティーブ観光相は、7月、同国の旅行・観光市場は、新型コロナ禍以前の水準から12%成長したと述べた。
観光産業は、現在、サウジアラビアの国内総生産の2~3%を占める。パリで6月に開催された仏・サウジアラビア投資フォーラムにおいて、アル・カティーブ観光相は観光産業の成長目標をGDPの10%としていることを明らかにした。
人気のある観光目的地の1つはアル・ウラーである。サウジアラビアは、この地域を、高級ホテルを備えた、開放的な生きた博物館として発展させるために、2017年に「アル・ウラー王立委員会」を設立した。
公式ウェブサイトによると、RCUは、「アル・ウラーの類を見ない地質景観と自然美を保護し再生し、同地がサウジアラビアにおいて考古学的・文化的最重要地域の一つであることを再確認する」ことを目的としている。
2017年設立以来の6年間で、RCUは急速な進捗を成し遂げた。RCUによると、この歴史的観光地であるアル・ウラーへの航空便総数は64%、その乗客総数は74%増加した。
アル・ウラーは、息苦しい暑さから解放されて寛げる静穏な休息地として、都市住民に人気の観光目的地なのである。
RCUはこの夏の3日間の旅程を作成した。この旅程は、アル・ウラーを訪れた人々が、ヘグラやダダン、ジャバル・イクマ、ハラット展望台といったこの地域の見どころを周遊できるように構成されている。
アル・ウラーを訪れた観光客は、また、この地域の絵画のように美しい歴史的遺産をヘリコプターによるツアーで巡ったり、活気溢れるアル・ジャディーダ芸術地区を散策したり、広大な砂漠で天体観望を楽しんだりすることも出来る。
RCUのディスティネーション・マーケティング担当専務取締役であるメラニー・デ・ソウザ氏は、夏期や9月に古代オアシス都市アル・ウラーを訪問したいと考えている旅行者向けのプランやプログラムの増加は近年の観光セクターの成長を反映したものだと述べた。
アル・ウラーは「急速に通年観光地になりつつあります」と、デ・ソウザ氏はアラブニュースに語った。
それは、部分的には、湾岸諸国の他の地域と比較して気候が温暖なためである。アル・ウラー地域の湿度は低く、首都リヤドや隣国UAEの主要都市と比較しても夏期の気温は低く涼しい。
「アル・ウラーを通年観光地にすることが私たちの目標です」と、デ・ソウザ氏は語った。
「アル・ウラーでも日中の気温はかなり高くなりますが、湾岸協力会議諸国の他の地域よりも少なくとも摂氏5度は低く涼しく、それに加えて湿度も低いのです。そして、朝や夕方遅くにはこの上なく幸福な時間を過ごすことができます」
暑熱を耐え難く感じる日中には、屋内で楽しめるアクティビティが用意されている。「ハビタス・アル・ウラーやアシャール渓谷のバンヤンツリー」といった「素晴らしい環境」で楽しめる「ウェルネス・パッケージ」があるとデ・ソウザ氏は述べた。
デ・ソウザ氏は、また、訪問客が自身の好みや興味に合わせたアクティビティや旅行を楽しむことも出来る点に言及した。「私たちにとっては、それは旅程の計画を立てるにあたって当然の事という認識です」と、デ・ソウザ氏は語った。
例えば、数多くの訪問客は、早朝や夕方遅くには屋外観光を楽しみ、日中の最も暑い時間帯はオアシスや豪華なスパ、用意されている多種の屋内イベントで寛いで過ごす。
サウジアラビアの変化に富んだ地形のおかげで、暑い夏の時季であっても旅行者が楽しめる、気温の低い涼しいビーチや山岳、さらには森林すらも多数あるのである。
沿岸の海風も、シュノーケリングやスキューバダイビングなどのウォーターアクティビティ同様、暑い夏期の気候をより過ごしやすくする。
サウジアラビアの変化に富んだ風景にそれほど馴染みのない人々は、アシール州の州都であるアブハーを耳にしたことがないかもしれない。
サラワート山脈の山間にある海抜2,200メートルのアブハーは、その過ごしやすい気候に加えて、無数の自然の驚異や、唯一無二の石造りの城がある古代の村リジャル・アルマーといった歴史遺産を有する珠玉のような都市である。
「そよ風や気持ちの良い霧、緑豊かな山々のあるアシールは、世界的に気温が上昇する中、旅行客が夏を過ごすのには天国のような場所です。そして、その観光目的地としての人気は高まり続けると私たちは考えています」と、サウジアラビア観光局のアル・ダキル氏は語った。
サウジアラビア国内では最も高地帯となる海抜3,000メートルに、ネズの樹林で覆われたソウダ山岳地域は位置している。雪に覆われた山頂部は、パラグライダーやスカイダイビングで人気が高く、また、サイクリストやハイカーにとって魅力的なトレイルもあります。
北部タブーク州の山がちな地域にあるワディ・ディサ(椰子の木の谷)は、人里離れた魅力的な自然の驚異だ。この地域は、砂岩に刻まれた彫刻や墓石といった貴重な考古学的遺跡があることでも知られている。
タイフも、夏季に涼しい気候を求める人々に適した地域である。夏季のタイフの平均気温は、摂氏26度から36度だ。この都市は、サラワート山脈の東側に位置しており、訪問客はハイキングをしたり自然環境を楽しんだりすることが可能である。
もう一つの避暑地は、南西部の都市アルバハである。やはりサラワート山脈内に位置しており、訪問客は400年の歴史を持つジー・アイン村を散策し、サウジアラビアの歴史や文化、魅惑的な自然景観にに浸ることができる。
サウジアラビアは、わずか数年の短い期間で、これまで同国を休暇で過ごすのに魅力的な場所だと考えもしなかったであろう観光客に、実は数多くの見どころを有していることを実証してみせた。
サウジアラビアの観光セクターは、より多様な観光客の誘致に成功することで、さらなる便益を得て、ビジョン2030の改革アジェンダに従って経済の多角化を目指すという同国の目標達成に貢献することだろう。