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UAEの砂漠、岩山、海の風景を東京で紹介: アラブ首長国連邦をたたえたたグループ展 

(Supplied)
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11 Dec 2023 10:12:22 GMT9
11 Dec 2023 10:12:22 GMT9

ソフィー・マユコ・アルニ

今週月曜日12月11日、東京・恵比寿の中心で、UAEを拠点とする10人のアーティスト達によるグループ展  “Return to the Ground” (大地への回帰) が開催される。

アラビア湾の豊かな自然景観を題材に、UAEのアートシーンの主要人物たちの作品が紹介される。

現在ドバイで開催されている、国際気候変動会議の第28回締約国会議であるCOP28に合わせて、この展覧会は、持続可能性のテーマを新鮮な視点で扱う。

この展覧会は、UAEの成長を続ける現代美術シーンの多くのアーティストたちに、そのほとんどが初めて日本で作品を紹介する機会をもたらした。

含まれる展示作品としては、アクリル画作品等、2022年のヴェネツィア・ビエンナーレでUAE国立パビリオンの代表を務めたコンセプチュアル・アートのベテラン、モハメド・アーメド・イブラヒムの彫刻、またヴィクラム・ディヴェチャの作品を振り返るビデオ “Bathing Boulders” – UAEの重工建設需要のために抽出された北部のフジェイラ首長国の自然の岩層 – このビデオは、2017年のヴェネツィアビエンナーレのUAE国立パビリオンでも展示された。

ディルワザ キュラトリアル ラボの創始者であり、展覧会の主任キュレーターであるムニラ・アル・サイエグ氏は、”Return to the Ground-大地への回帰” の背後にある彼女の意図を次のように語った。「アラブ首長国連邦の多様性、そしてアラブ首長国連邦社会における環境の重要性を理解していただき、理想的には、訪問者がより好奇心と興味を持って問いかけ、UAEの環境と土地についてさらに深く掘り下げてもらいたいと考えています」

タリン・ハズバールは、シリアのアレッポ出身のアラブ首長国連邦を拠点とするアーティスト兼建築家で、UAE シャルジャにある美しいミニマリストのスタジオで制作している。本展では、ロープ、綿、ナイロン、金属でできた思い出の山 “ Sediments” (2022) を発表する。アートワークの声明では、これらの山を、”物語を保持するもの” と呼んでいる。(これらの山は、失われた時間を示すための記録として機能する。)。

ドバイとシャルジャを囲む砂漠の砂、そしてサンゴ礁や貝殻など、アラブ首長国連邦の海岸の海洋生物からインスピレーションを得たハズバールは、脆弱で常に変化する周囲の風景に新たな光を当てる。

ミクロとマクロの両方の視点をクローズアップし、彼女の建築家としての修業は、素材を再利用し、サウンド、ビデオ投影、観客が立っている地球を感じるために構築された環境を組み合わせたインターラクティブなインスタレーションを作成する方法に現れている。

ドバイのシェイク ザイード ロードにコンクリートが注入され、世界的に有名なスカイラインが建設される前、UAEには砂と海洋生物の多様な混合物の土壌が長い間存在していた。ハズバールのようなアーティストは、私たちにこの遺産を思い出させ、自然の要素を現代の領域に復活させる。

この意味で、彼女の実践は、ものの派アーティストの印象的なインスタレーションとそれほど遠くない。特に頭に浮かぶのは、20世紀の日本の都市景観の急速な発展の中で、土の素材、特に石の使用に回帰した韓国生まれで日本を拠点とするアーティスト李禹煥(Lee Ufan)のことだ。

この展覧会の準備にあたり、ディルワザ キュラトリアル ラボのキュレーターであり、キュレーションチームの一員であるアニタ・シシャニは、余計な装飾を省いた、ものの派の活動を思い浮かべた。

ものの派のアーティストたちは、土地とその土地が与えてくれるものに焦点を当てた。これによりムハマド・アハメド・イブラハムがコール・ファカンの山に入り、反対側がどう見えるかを確認するためだけに岩をひっくり返した時の話を思い出させる。その意味で、芸術と自然界との関係は、芸術家によって支配されるのではなく、むしろ自然がただ存在するだけで、その余地を与えているのだ。

何十年にも渡ってUAEを故郷と呼んだ写真家、故タレク・アル・グセイン氏は、以前作品を日本で展示された。彼の風景写真は、2012年に南條史生がキュレートしたアラブ現代美術の大規模な調査展 “アラブ・エキスプレス : アラブ世界の最新アート” として森美術館で展示された。

アル・グセインは、確実にUAEにおける写真界の最もパイオニア的な人物であった。”Return to the Ground” 展において、ディルワザ キュラトリアル ラボは、彼のオデュッセウス シリーズ、アブダビの多くの島々を記録した写真を含む。観客は、現実とフィクションの間の限界空間の感覚を感じる。アーティストは時々、自分の作品の中に佇み、この夢のような自然の風景の中で自分の場所の感覚を熟考するのだ。

“Return to the Ground” は、エミレーツを故郷と呼ぶ新世代のアーティストに光をあてる機会でもあり、サラ・アル・サマンは、この地域の織物の歴史をたたえる織物作品を発表し、ズフール・アル・サイエグとファティマ・アル・ファーダンのデュオによるインスタレーションは、アラビア湾全域でよく見られるヤシの木のイコニックな形をたたえる。

リーム・ファラクナズの写真作品、アデル・ビー・シプステ、ザラ・マフムードの絵は、砂漠から岩山、海の景色に至るまで、アラブ首長国連邦の自然の風景を垣間見ることができ、その作品は人間と彼らが立っている大地との間の瞑想状態を連想させる。

シシャニ氏は、キュレーションの主な方向性は、人間と地上の関係を探求することだったと語った 「展覧会がCOP28の開幕と重なったため、大使館は私たちに持続可能性の方向性を与えてくれました。ディルワザ キュラトリアル ラボは、主にUAEを拠点とするアーティストと協力しており、私たちは、大地に戻るというアイデアを思いつきました。私たちは、アラブ首長国連邦と日本の風景が異なることは承知していますので、日本については言及したくありませんでした。しかし、私たちは、大地から得られる素材、大地に根付いている感覚を反映させることで、私たちの大地との普遍的なつながりを観客に思い出してもらいたかったのです」

同じくディルワザ キュラトリアル ラボのキュレーターであるダニア・アル・タミミ氏もアラブ首長国連邦と日本の風景は異なり、アーティストの背景に大きな違いがある点に賛同した。「 展覧会の中に入ると、観客は、素材や風景を超えて、文化的な類似性に向けた接続点を観察していただけることを願っています。私たちは、観客が、共通の遺産、歴史、自然景観との精神的な関係という点で、UAEと日本の芸術活動の類似性を感じてもらえることを願っています。私たちが自然と一体であることから、大地という文脈の中で多くのつながりが生まれます」

UAEは、トランジットの場所とよく言われる。新型コロナウイルス感染症以降、ドバイは、おそらく観光客にとって理想的な都市として、ニューヨーク、ロサンゼルス、ロンドン、パリを追い抜く勢いで、2020年以降のUAEの新規観光客と居住者の数がそれを証明しているようだ。21世紀の経済発展の灯火の中で、瞑想と熟考の瞬間が必要である。この展覧会は、UAEの自然環境に対する、よりバランスのとれた見方を促進し、日本の皆様にとって新鮮なものとなるはずである。

エキジビションは渋谷区恵比寿南で12月17日まで行われている。

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