リーム・ワリド

リヤド：地理的な障壁を取り払うことで、仮想現実と拡張現実を利用したデジタル空間であるメタバースは、かつてないレベルのコラボレーションとコネクティビティを促進する。

個人の働き方、計画、設計、建築から、買い物、くつろぎ方、旅行、生活まで、生活のほとんどすべての側面に大きな影響を与えるだろう。

しかし、それだけではない。メタバースは近い将来、企業や顧客にとっても商業的な空間やツールになると予測されている。

中東地域に目を向けると、メタバースは主要セクターを活性化し、変革する大きな可能性を秘めている。さらに重要なことは、サウジ・ビジョン2030のいくつかの目標、特に経済の多様化と王国の生活の質の向上に合致していることだ。

経営コンサルティング会社strategy&が最近発表した「メタバースに関する中東の視点」と題する報告書によると、3Dを活用したデジタル空間が、GCC経済にもたらす潜在的な貢献は、2030年までに推定150億ドルに達する可能性があり、そのうちサウジアラビアだけで約76億ドルのシェアを占めると予想されている。

大規模な投資

サウジアラビアは最近も、王国が野心的なデジタル変革計画を推進する中で、メタバースにリソースを割り当てている。

サウジアラビアの、5,000億ドル規模の巨大プロジェクトNEOMには、メタバースコンポーネントがあり、建設部門に現場の進捗状況を知らせたり、建築家、エンジニア、デザイナー、不動産クライアントのためにプロジェクトの側面をコラボレーション、カスタマイズする方法を提供する。このように、すでに都市開発に利用されていることが、Strategy&のレポートで明らかになった。

サウジアラビア、及びより広い地域の業界全体でメタバースが採用されれば、個人や企業に新たな機会が生まれることは間違いない。

また、ユーザーがより分散化されたオープンな方法で経済活動に従事できるようになるため、さまざまな分野での効率化が加速する。

ベイン・アンド・カンパニー（Bain & Co. )のアソシエイト・パートナーであるプリヤンカ・シャルマ氏によると、メタバースの導入は、「人口動態や地理的な境界を越えて、提供するサービス、体験へのアクセス、規模を拡大する」という。

これには、バーチャルイベントや没入型旅行体験も含まれる。

メタバースの採用は、「デジタルコンテンツ、商品開発、カスタマイズのサポート」にも役立つと彼女は続けた。

さらに、「ユースケースを問わず、予算の増加を最小限に抑えながら、プロトタイピング、実験、研究のためのバーチャルな遊び場を提供する」とシャルマ氏は強調した。

業務効率の向上

「メタバース・アズ・ア・サービス」企業VEEMのCEOであるアーメッド・アル＝マシャディ氏によると、サウジアラビアでメタバース・テクノロジーを採用することで、いくつかの分野で業務効率の大幅な向上が期待できるという。

「例えば不動産です。当社のバーチャル・ツアーを利用することで、顧客は物理的に移動することなく、ほぼ現実的なオフ・プラン・プロジェクトを詳細に内見することができ、時間とリソースを節約し、意思決定を後押しします」と同氏は語った。

世界的なデジタルトランスフォーメーション・コンサルティング会社Publics Sapientのナイジェル・ヴァズ最高経営責任者（CEO）は、メタバース・アプリケーションを採用する可能性のある主要セクターのいくつかに光を当てた。

「メタバースは、このデジタル進化の延長線上にあり、エンターテインメント、不動産、教育などの分野に比類ない機会をもたらします」と同CEOはアラブニュースに語った。

「これらのセクターは、メタバースの没入型、かつインタラクティブな機能を活用することで、購入体験を向上させる、バーチャル不動産ツアーから、教育セクターにおける学習や、エンゲージメントに革命をもたらすデジタルプラットフォームまで、革新的なサービスや体験を提供することができます」と同CEOは続けた。

ゲームの観点から、MENA Techのマリオ・ペレズ最高経営責任者（CEO）は、この業界がメタバース・アプリケーションをどのように活用するかを指摘した。

「仮想環境がより没入的でインタラクティブなものになるにつれ、ゲーマーは社会的相互作用の強化、より多様なゲーム体験、コミュニティ参加機会の増加を経験することになると予想されます。特にサウジアラビアでのesportsの急成長を考えると、その動向を注意深く見守っています」と同CEOは語った。

同CEOはさらに、サウジアラビアにある5つの巨大プロジェクトの1つで、第1回「ワールド・Eスポーツ・チャンピオンシップ」の開催を含む、完全にゲームに特化したQiddiya Cityの建設により、「ゲームの革新と発展のハブになる準備が整っている」と述べた。

同CEOはは続けた「メタバースは、強化された仮想社会体験、没入型ゲームプレイ、インタラクティブなストーリーテリングといった革新的な経験をといれる。これらの経験は、ゲーマー同士や彼らが住む仮想世界との関わり方に革命をもたらし、活気あるゲーム文化とコミュニティを育む可能性を秘めています。さらに、メタバースは、企業が様々な没入型体験に参入し、仮想環境を創造することで、斬新でインパクトのある方法で消費者と関わることができる、有望なスポンサーシップの機会も提供しています」

同CEOはさらに、GGTech Entertainmentの地域部門であるMENATech Entertainmentが、そのプロジェクトの中でどのようにメタバース・アプリケーションを積極的に探求してきたかを明らかにした。

「GGTechは、ゲーム大会と教育活動や、学生のための専門的な機会を組み合わせたAmazon University Esportsの一環として、昨シーズン、EMEA（ヨーロッパ、中東、アフリカ）地域の参加者を集めるために設計された仮想環境であるUniversity Worldで最初のパイロットテストを実施しました」と同CEOは明らかにした。

さらに「GGTech Entertainmentの開発部門であるGGTech Studiosによって開発された多人数参加型3Dプラットフォームゲームである、eWorldsの開発において、University Worldの作成から得られた経験が大きな知見となっています」と同CEOは続けた。

ゲーム以外にも、メタバースを自分たちの利益のために活用できるセクターがいくつかある。

Bain & Co.の、イノベーションとデザインのエキスパートパートナーであるJoachim Allerup氏は「バーチャル物件ツアーは、購入希望者が包括的なバーチャル環境で物件を内見することを可能にします」とアラブニュースに語った。

「都市計画シミュレーションにより、都市プランナーや建築家は、デジタルツインやコネクテッドシステムを含むメタバースにおいて、新しいプロジェクトや都市レイアウトをモデル化し、シミュレーションできるようになります」と同氏は続けた。

同氏はまた、バーチャル・ショッピングモールが次世代のオンラインショッピングを実現することも明らかにした。

さらに、インタラクティブな製品デモンストレーションによって、顧客は3D仮想空間で製品を探し、対話することができるようになる、と同氏は指摘した。

さらに、World Metaverse Councilのメンバーであるフサム・ヤギム氏はアラブニュースに対し、「サウジアラビアとより広い地域において、観光セクターと教育セクターがメタバース・アプリケーションから最も恩恵を受けるでしょう」と語った。

ビジョン2030の目標との一致

ヴァズ氏は、メタバース領域における一連の動きは、「経済の多様化、文化・娯楽分野の育成、知識集約型社会の構築を目指すサウジアラビアのビジョン2030の野心とびったり合致している」と強調した。

同氏は「メタバース・テクノロジーを統合することで、サウジアラビアは経済の多様化、文化の充実、教育の変革という目標を推進することができます」と述べた。

そして、自身のコンサルティング会社であるPublics Sapientが、サウジアラビアの企業や政府とパートナーシップを組み、このデジタル変革の旅路を歩んでいくことを強調した。

「当社のグローバルな専門知識と知見を活用し、王国におけるメタバース・エコシステムの発展を支援することで、ビジョン2030の実現に貢献し、サウジアラビアをグローバルな舞台におけるデジタル・イノベーションのリーダーとして位置づけることを目指します」と同氏は続けた。

特に、経済の多様化、イノベーションの促進、デジタルトランスフォーメーションの推進という目標を推進する上で、メタバースがいかにサウジのビジョン2030に合致する可能性を秘めているかを改めて強調した。

「その一例が、エンターテインメントと観光の分野です。サウジアラビアは観光部門を発展させ、世界的なエンターテインメントのハブになろうとしており、メタバースは、サウジアラビアの文化遺産、ランドマーク、アトラクションを世界中の人々に紹介するバーチャル体験を提供することができます」と同氏は述べた。

バーチャル・ツーリズムの取り組みは、サウジアラビアの文化的な豊かさを宣伝しながら、観光客を誘致し、収益を上げることで、物理的な観光の取り組みを補完することができます。

「また、メタバースは、サウジアラビアのビジョン2030で強調されている人財育成に沿った教育・訓練イニシアティブを強化する可能性を秘めています。仮想学習環境は、学生や専門家が新しいスキルや知識を習得するために、没入型の教育体験、インタラクティブなシミュレーション、コラボレーション・プラットフォームを提供することができます」と同氏は語った。

ヤギム氏は次のように述べた「サウジアラビアは、メタバースをビジョン2030の目標を達成するための重要な役割を果たすものと考えており、王国内にメタバース・エクセレンスセンターを設立しました。リヤド万博2030のための、AI搭載メタバースと幼稚園から高校までの教育のためのメタバースは、サウジのビジョン2030にどのように貢献しているかを示す例です」

Allerup氏は、「メタバースと関連テクノロジーは、多様なユースケースと複数のセクターに及ぼす影響から、サウジ・ビジョン2030のすべての柱に対応する可能性を秘めている」と続けた。

労働力の再教育

労働市場に関して言えば、メタバースに関連するプロジェクトの前例のない成長に関して、現在の市場データはまだ全体像を正確に反映していないようだ。

どう考えても、現在の労働力には再教育が必要になる可能性が高い。リスキルとは、従業員に新しいスキルを教え、現在の仕事であれ、より高度なポジションであれ、熟練度を高め、向上させるプロセスのことである。

「メタバースとミックスド・リアリティの観点から、ほとんどすべての分野で新しい能力が必要とされると予想される。新しい働き方、バーチャル環境での共同作業、新時代の進化し続けるツール／ソフトウェアへの習熟、コーディング、デジタル資産の開発など、バーチャルワールドと複合現実の機会を活用するために、すべての人が再教育を受ける必要があります」とシャルマ氏は締めくくった。

「仮想学習環境は、学生や専門家が新しいスキルや知識を習得するために、没入型の教育体験、インタラクティブなシミュレーション、共同作業プラットフォームを提供することができる」。(シャッターストック）