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日本の漁師町根室 ロシアが生き残りの鍵を握る

2022年4月12日撮影。北海道根室市、太平洋側の羽幌港。今シーズン、サケ・マス漁に出港する予定の漁船が陸上保管されている。(AFP)
2022年4月12日撮影。北海道根室市、太平洋側の羽幌港。今シーズン、サケ・マス漁に出港する予定の漁船が陸上保管されている。(AFP)
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15 Apr 2022 07:04:36 GMT9
15 Apr 2022 07:04:36 GMT9

根室:ハンサク・ツルユキ氏は、高校を卒業したばかりの頃、父親の船に乗り、ソ連領海でタラを獲って逮捕され、10カ月間ソ連の刑務所に入れられた経験がある。

根室の漁師町に住む白髪の彼は、現在79歳である。ロシアが家業の漁業と故郷の運命を左右しているため、彼は岐路に立っている。

ウクライナ危機でロシアとの関係が悪化する日本において、紛争の地から遠く離れたこの根室ほど、その影響を受けている地域はない。

今の懸念は、アムール川で生まれたサケ・マスの漁獲枠を決めるために毎年行われている日露政府間の協議の行方である。

このサケ・マス交渉は1957年に始まった。例年3月までに終了し、4月10日の流し網漁の解禁までは時間的な余裕があった。この交渉は、冷戦時代にも両国の間に存在した唯一の外交ルートとして、長い間注目されてきた。

今年は、まだ結論が出ていない。日本政府や業界関係者によると、この遅れは、ロシアのウクライナ侵攻を受けて日本が同盟国とともに発動した経済制裁に対する、ロシア政府の怒りの表れだという。

日本の水産業界は、他の3つの年次交渉――世界で最も豊かな漁場のいくつかで、昆布やサンマなどを扱う――でも、ロシアが交渉のテーブルにつくことを必要としている。

「漁業ができなければ、ここで生活することはできない」と、現在主にサンマの漁獲と加工を行っているハンサク氏は、今週自宅でロイター通信に語った。

「私たちにとっては生存の問題だ」

日本の排他的経済水域(EEZ)内では、毎年4月から6月までサケとマスの流し網漁のシーズンがある。日本は、魚の権利を原産国に与える相互協定により、自国のEEZ内であっても漁獲にはロシアの許可が必要である。

日本政府の閣僚は、金曜日に5日目に入った進行中の同協議についての最新情報は得ていない。

連動した歴史

根室は北海道の最東端にある人口2万4千人の町である。この地域の4つの島をめぐる、数十年にわたる論争にもかかわらず、漁業とロシア船の訪問により、根室の経済はロシアに大きく依存している。

第二次世界大戦で日本が敗れた後、ロシアは根室から続く島々を支配下に置いたが、東京はこれを不法占拠とみなしている。日本では北方領土、ロシアでは南クリル諸島として知られているこの島々の元住民の多くが根室に定住している。この領土問題は、日本とロシアが戦後平和条約を結んでいない主な理由である。

この町のいたるところに、キリル文字の道路標識や、北方領土の返還を要求する看板など、ロシアを想起させるものがある。根室の主要港である花咲港には、ロシア船が定期的に停泊し、ウニやカニ、昆布などを地元の輸入業者に納品している。パンデミック以前は、ロシア人漁師がテレビなどを買って帰る姿も見られたという。

ハンサク氏は、根室住民の典型的な人物である。

1945年、彼が2歳のとき、戦争から戻った父親が、ソ連に占領された島のひとつである色丹島(しこたんとう)から根室に家族を連れて移り住んだ。

ソ連の刑務所から解放された19歳のハンサク氏は、長男らしく家業を継いだ。この仕事は危険である。冷戦時代、日本の漁船は頻繁に拿捕された。ソ連はサハリン島に日本人専用の刑務所を建設し、1960年代初めには父と兄を含む100人以上の受刑者がいたとハンサク氏は言う。

「これは戦争がもたらした悲劇の一部だ」と彼は語る。「我々は食卓に食べ物を並べるために釣りをしなければならなかった。その危険性については考える余裕はなかった」

2016年の漁期から、ウラジーミル・プーチン大統領は、ロシアのEEZにおけるサケ・マス類の流し網漁を禁止した。これにより漁場が縮小したため、根室市と近隣の2つの町は、市と地元の銀行の試算によると、翌年2億ドルの打撃を受けたという。

根室市の魚屋、ヒヌマ・シゲオ氏(71)は、ロシアの流し網漁禁止令で根室市中心部の店の売り上げが3割も減ったことを受け、「4つの交渉がすべて失敗に終わるのではないかと一番心配している」という。

禁止までの四半世紀、20回以上ロシアに出かけたというハンサク氏も、サケ・マス漁をあきらめた一人だ。

今、日本のEEZ内の漁場は、まだ漁を続けている人たちにとっても危険な状態になっている。

たとえサケ・マス交渉が妥結しても、ハンサク氏のサンマ漁はロシアに翻弄されることに変わりはない。

8月から行われる今年のサンマ漁の条件は昨年末に合意されたが、ロシアはまだ許可証を発行する必要がある、とハンサク氏は言う。日本は先週、数名の外交官を追放し、ロシアの最恵国待遇を打ち切ったため、許可証だけでなく、他の二国間協議の行方も不透明である。

「漁業貿易がなくなるというのは理解しがたいことだ」と彼は語り、その影響は日本の他の地域にも及ぶと付け加えた。

「漁業がなくなれば、文化も失われる。繁栄がなければ文化は成り立たない」

ロイター

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