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モロッコ系フランス人活動家ラティファ・イバン・ジアテン氏による急進化の根本原因への取り組み方

イブン・ジアテン氏は、寛容、尊敬、共存に関する講義を通じて、フランスに調和の文化を築きたいと考えている。(提供)
イブン・ジアテン氏は、寛容、尊敬、共存に関する講義を通じて、フランスに調和の文化を築きたいと考えている。(提供)
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12 Mar 2022 04:03:57 GMT9
12 Mar 2022 04:03:57 GMT9
  • イブン・ジアテン氏は、若者の急進化との闘いが評価され、2021年人類の友愛ザイド賞を受賞した
  • 彼女は、寛容、尊敬、共存に関する講義を通じて、フランスに調和の文化を築きたいと考えている

カリーン・マレック

ドバイ:ちょうど10年前に息子をイスラム教徒のテロリストに射殺されて以来、モロッコ系フランス人の活動家ラティファ・イブン・ジアテン氏は、宗教間調和を促進し、急進化と闘うことに人生を捧げてきた。

2012年3月にフランス南西部のトゥールーズとモントーバンで12日間にわたって銃撃を行ったモハメド・メラ氏による最初の犠牲者として、3月11日に殺された28歳のフランス軍落下傘兵イマド氏を追悼し、彼女はIMAD協会を創設した。

アルジェリア系フランス人のメラ氏は、兵士や、ユダヤ人学校の子どもたちや教師を標的にし、その後彼自身も警察によって殺害された。3人の子どもを含む7人が死亡し、5人が負傷した。



イブン・ジアテン氏は、2012年に息子のイマド氏が殺害された後、IMAD協会を立ち上げた。(提供)

急進化の根本原因に取り組む精力的な活動が評価されたイブン・ジアテン氏は、UAEで「2021年人類の友愛ザイド賞」の共同受賞者となった。この賞は、宗教間対話を促進するために、フランシスコ法王がアブダビを訪問したことを受けて2019年に創設された。

10年の歳月を経たにもかかわらず、イブン・ジアテン氏はあの日の辛い記憶を今も抱えている。「イマドの死後、私は一人取り残されたような、無力感を覚えました。友人たちは彼を偲ぶために協会を立ち上げるよう提案してくれました」と彼女はアラブニュースに話した。

「息子は私にとってとても大切な存在だったので、彼が殺された場所を訪れ、彼が残したかもしれない痕跡を探しましたが、彼の血を見つけただけで、それが私が彼と持てた唯一のつながりでした」

悲しみに打ちひしがれたイブン・ジアテン氏は、息子を殺した犯人を探しに、メラ氏が住んでいたトゥールーズ郊外のレ・イザール(イスラム過激派の温床)に出向いた。そこで彼女は、若い男性たちに彼の居場所を尋ねた。

「彼らは、彼はイスラム教の殉教者だ、国を屈服させたのだから、と言いました。彼らは殺人を賛美したのです」とイブン・ジアテン氏は言った。

「殺人犯がイスラム教の英雄、殉教者として認識されることにショックを受け、数分間彼らを見つめました。私が彼らに、自分がテロ事件の最初の犠牲者の母親であると告げると、彼らは驚いていました」

彼らは、自分たちを取り巻く生活環境を指摘し、自分たちのような困窮した移民はフランス社会にとって問題の元凶とみなされていると説明した。イブン・ジアテン氏は、彼らの苦悩、無力感、孤独感といった表情を思い起こす。

「私はこうして彼らに出会いました」と彼女は言った。「彼らは私の人生の苦しみの発端です。しかし、反撃する代わりに、彼らを助け、苦しんでいる人たち全員に働きかける新しい協会を開くことにしました。それが、我が子を失った計り知れない痛みと苦しみに対処する助けになったのです」



ラティファ・イブン・ジアテン氏は、急進化に対抗し、人権を守るために精力的に闘ってきた。(提供)

「新しい世代を助けてほしいと彼らに言われ、心の中に愛を見つけることができれば、決して遅すぎることはない、実現に向けて一緒に取り組もう、と伝えました」

こうして、彼女のミッションが始まった。すぐに彼女は、国内外で、週に2〜3回、若者たちの苦悩の真因について彼らの心を開くために学校を訪問するようになった。

イブン・ジアテン氏は、「私は、若い人たちが世界に対し開かれた心を持てるようにする教育プログラムを行おうとしました」と述べる。「今、フランスでは、状況はかなり厳しく、宗教全般、特にイスラム教について大きな誤解があります。社会には大きな亀裂と憎しみがあり、これが最大の難点です」




ラティファ・イブン・ジアテン氏は、宗教間調和を促進し、急進化と闘うことに人生を捧げてきた。(提供)

イブン・ジアテン氏は、フランスのユダヤ人と共に反ユダヤ主義に対抗するキャンペーンを行い、宗教間対話を促進するためにイスラエルへも足を運んだ。

彼女は最近、エミレーツ通信社の取材に応じ、仏教育省との協働や、弱い立場の若者の意識を高めるために毎週行っている講演について話した。

「私たちは、若い人々に他の文化を探求し世界に視野を広げる機会を与え、この渦から抜け出せるように支援する啓蒙活動を行っています」と彼女はWAMに話し、イスラム教は平和と慈悲の宗教であるにもかかわらず、その信仰の原則を理解していない人たちがいる、とも述べた。

イブン・ジアテン氏は、人種差別や恐怖、疑心を喚起する状況にも意識を向けており、移民問題についてのキャンペーンも展開している。最近、フランスの港町カレーを訪れた際、英国を目指しながら路上で生活するスーダン人移民たちに出会った。

「このような状況では、人権はどこにあるのだろう、敬意ある扱いを受けるために自国から逃げなければならない人々がいるのはなぜだろう 、と考えてしまいます」と彼女は言った。「世界には他の類の苦しみもあり、それは存在します。しかし、あの日見たものは私にとって非常に恐ろしく衝撃的でした」

イブン・ジアテン氏は、寛容、尊敬、共存に関する講義を通じて、フランスに調和の文化を築きたいと考えている。彼女は大きな苦痛を経験したが、すべての人が彼女の物語に共感できると信じている。愛があれば分断を克服できると彼女は信じる。

「しかし、多くの人は愛やアドバイス、この社会で上手く生きていくための枠組みを欠いています」と彼女は言う。「ですから、彼らは無力で、自分自身を成長させるための骨組みを持っていません」

「そこで、私はこれを彼らにもたらそうとしています。多くの人が、人生の旅を続けられるようになったと感謝してくれていることが、私にとっては最高の成果です。私が生きて健康である限り、この人たちの状況を改善するために戦うと息子に約束しました」

息子の死から10周年を記念して、イブン・ジアテン氏は金曜日にフランスで、ケアとシェルターを必要とする若者のための場所、イマド・ハウスを立ち上げる予定だった。



イブン・ジアテン氏は、2021年に「人類の友愛ザイド賞」を受賞した。(提供)

イブン・ジアテン氏は、フランスの刑務所にいる若者たちとも関わっている。彼らの多くは、シリアでイスラム過激派側に立って戦ったために、フランス帰国後に収監された。彼女との数回のセッションの後、多くは「聖戦」のプロパガンダに洗脳されたことを認めるが、急進的なイデオロギーを脱却するにはまだ手助けが必要だ。彼女が彼らに与えるアドバイスは、読書だ。

「本を読むことは、人がこの世界の現実と折り合いをつけるための唯一の方法です」と彼女は言う。「人生で失敗したとき、他人を憎むのではなく、家族からの支援や愛情の欠如が原因にしろ、自分が置かれている状況を理解することが大切です。彼らに、急進主義と宗教の違いを理解させようとしています」

イブン・ジアテン氏の現在の主な目標は、急進派を更生させるための統合センターをフランスに設立することだという。モロッコにも同様のセンターを作り、若い移民が母国で教育を受け、仕事を見つけられるようにしたいと考えている。人類の友愛ザイド賞の賞金で資金を調達するつもりだ。

「この賞は、私の行動全てに貢献するでしょう」と彼女は述べた。「政府からの援助がない私にとって、この賞は新たな評価であり、闘いを続ける励みにもなります。私は、どんな犠牲を払ってでも、若者を助けたいと思っています。たとえ可能な限りの資源がなくても、息子のために進み続けなければなりません。これは正しいことなのです」

フランス国外では、イブン・ジアテン氏は、モロッコ、米国、インド、マリでの講演に加え、アブダビでテロに関する講演を数回行い、若者をテロから救う方法に関するセミナーに参加した。

彼女は、世界が暴力、テロ、疑心を克服するためには、人類の友愛ザイド賞を設立したローマ教皇フランシスコとグランドイマームであるアフマド・アル・タイーブ師の取り組みが成功することが不可欠であると述べる。

2019年2月4日、2人の宗教指導者はアブダビで会談し、宗教間の対話と協力の文化の青写真を示しながら、すべての人々の間の平和を促す共同宣言である「人間友愛に関する宣言」に署名した。

しかし、イブン・ジアテン氏は、誰もが果たすべき役割を担っていると考えている。

「私は刑務所で世界的なムーブメントを起こしました。普通、刑務所は人々が多くの問題や困難を抱える憎しみの場所ですから、これは驚くべきことです」と彼女は話す。

「私は、彼らが出所したとき、こうした問題や憎しみを全て捨て、周囲の人々に希望と愛をもたらすように、皆と幸せと愛を分かち合い、共に取り組もうとしています」

「世界の若者は、愛と平和そのものでなければなりません。彼らにはモデルが必要であり、私たちがそのモデルです。今、彼らにしてあげなければならない大きな仕事があるのです」

ツイッター: @CalineMalek

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