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ガザ地区の若者たちが海で死亡する中、指導者らの渡航に怒りの声が高まる

パレスチナ人移住者4人の葬儀にて、棺の周りに集まる参列者たち。ガザ地区南部ラファフのモスク。(AFPファイル写真)
パレスチナ人移住者4人の葬儀にて、棺の周りに集まる参列者たち。ガザ地区南部ラファフのモスク。(AFPファイル写真)
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07 Jan 2023 08:01:50 GMT9
07 Jan 2023 08:01:50 GMT9
  • イスラエルとの4度の戦争および数十回の小競り合いは、長年にわたり多数の死傷者、損害、孤立をもたらしてきた

エルサレム:ハレド・シュラブさんはガザ地区から脱出する時を人生の半分以上の間待っていた。

27歳のシュラブさんは、2007年以降イスラエルとエジプトによって封鎖されているこの沿岸の飛び地を一度も出たことがなかった。

彼は職を見つけることができなかった。ガザ地区における若者の失業率は60%を超えている。

他の多くのガザ住民と同様に、彼は自分の人生をスーツケースに詰めて旅立ち、やがてトルコへとたどり着いた。昨年10月にはそこからギリシャに向けて危険な航海に出た。

ところが彼が乗ったおんぼろのボートは沈没し、彼の体は海へと消えていった。

外国でのより良い生活を求めて航海に出て溺死するガザ住民が増えている。

このような破滅的な状況を受け、ガザ地区を支配するハマスに対して異例の怒りの声が高まっている。一方でハマスのメンバーの多くもこの地区から脱出している。全く違った形でではあるが。

ここ数ヶ月、有名なハマス高官らが密かにガザ地区を去りベイルートやイスタンブールの高級ホテルに移っている。住民らは、この地区の経済が崩壊している中で、また紛争で傷ついたこの小さな地区に230万人が事実上閉じ込められている中で、彼らは外国で贅沢な暮らしを送っていると怒りを募らせている。

イスラエルとの4度の戦争および数十回の小競り合いは、長年にわたり多数の死傷者、損害、孤立をもたらしてきた。

イスラエルは、厳しい移動制限が必要なのはハマスがさらに武器を備蓄するのを防ぐためだとしている。住民が連日の停電や日常的な必需品不足に苦しんでいることから、封鎖は集団的懲罰に等しいという批判の声もある。

シュラブさんの母親のウム・モハメドさんは南部の町ハーン・ユーニスの自宅から、「私はガザ政府の支配者たちを非難します」と語った。

彼女の息子の遺体がエーゲ海から回収されることはなかった。

「彼らが贅沢な暮らしをしている一方で、私たちの子供たちは土を食べ、移住しようとして国外で死んでいるのです」

ハマス指導者らの子供たちのうちの何人かはイスタンブールで親のために不動産ビジネスで大きな収益を上げていると、彼らの事業に詳しいあるパレスチナ人実業家は語る。

「国際危機グループ」でガザ地区アナリストを務めるアズミ・ケシャウィ氏は、ハマスの高官らの外国への脱出は、地区外の重要な後援者との作戦を調整するうえで助けとなる場合もあると指摘する。

しかし、ガザ地区でのハマスのイメージはますます悪化しているという。

同氏は次のように語る。「普通のパレスチナ人から見たハマスは、人々と共に生き奮闘していたパレスチナの慎ましい指導者たちというイメージから、もはや苦しむことなく快適な場所で暮らしている、パレスチナの大義や問題とかけ離れた存在というイメージに変わってしまった」

「人々がそのように口にし、そのような比較をし、怒っていることは間違いない」

ハマスは住民の反発を警戒して、高官らがガザ地区を去っているとの報道についてコメントしていない。

ソーシャルメディア上に暴露が溢れる中、ハマスは高官らの外国滞在は支援を獲得するための一時的な外国出張だとしている。こういった出張には数年間続いているものもあるのだが。

先月、欧州に向かう途中で溺死したガザ地区の若者たちの集団葬儀の場で住民の怒りが爆発した。

取り乱した遺族らは、ハマスがガザ住民の生活の崩壊と混乱を助長しており、身内贔屓と腐敗に染まっていると非難した。

葬儀への参列者らは、ハニヤ氏やハマスの現在のガザ地区指導者であるヤヒヤ・シンワル氏らの名前を叫び、「住民は犠牲者だ!」と唱和した。

こういった反抗はめったに起こらない。反抗の気配があればハマスはほぼ間違いなく封じ込めに動くからだ。ただ、ハマスは依然としてガザ地区で最も人気のある組織だ。

「パレスチナ政策調査研究所」が最近実施した調査では、調査対象となったガザ住民のうち、もし議会選挙が行われたとしたらハマスを支持すると回答したのは43%、対抗するファタハ運動に投票すると答えたのは30%だった。これらの数字は3ヶ月前の支持率からほとんど変わっていなかった。

12月に実施されたこの調査は、ガザ地区およびヨルダン川西岸地区の住民合わせて1200人を対象に様々な問題について質問したもので、許容誤差は3パーセントポイントだった。

それでも、全てを危険に晒して脱出しようとするガザ住民は増えているようだ。

ハマス系のシンクタンク「パレスチナ国際関係評議会」が11月に発表したレポートによると、ここ数年で6万人の若者がガザ地区を去っている。

このレポートは、「占領と包囲という政策」が「ガザ住民の生活を耐え難い地獄に変えた」としてイスラエルを非難している。

このレポートはガザ地区からの移住に関する最初の半公式データだ。データの集計方法は明らかにされていない。

湾岸の富裕国での就業機会を求めてガザ地区を去る人々もいる。

多くの人はシュラブさんと同様に、飛行機でトルコに行ってから亡命を求めて欧州への危険な航海に出る。

人権団体によると、2022年にガザ地区から移住しようとして海で死亡した人の数は、10月に発生した2回の沈没だけでも、過去8年間で最多となった。ジュネーヴを拠点とする「ユーロ地中海人権モニター」によると、2014年以降海で溺死したか行方不明になったガザ住民は360人に上るという。シュラブさんもその一人だ。

そのようなリスクにもかかわらず、ハレド・モハレブさんは危険な海のルートで脱出することを考えている。

2年前に看護師免許を取得した現在22歳のモハレブさんは、職を見つけることができていないという。

彼は、「ここを去って自分の人生を築きたい」と語る。

「何もできないし政府も無関心なこの場所と比べたら、外の世界では全てがましだ」

彼は、ハマスを直接名指すことこそしなかったものの、就業機会の不足は「国を支配し動かしている人々」のせいだと非難する。

その点についてハマスからの釈明はない。

ハマスのアテフ・アドワン議員は最近、欧州に逃亡しようとする人々は「退廃と退行」の土地への倒錯した巡礼を行おうとしていると非難した。

自分たちの土地に留まるために数十年間闘ってきたパレスチナ人の間では、移住は長くスティグマを帯びてきた。ハニヤ氏が混み合ったガザ市難民キャンプに出自を持つことは同氏の政治的アイデンティティの核心部分である。

監視が強まる中でハマスは昨年、高官3人がガザ地区に帰還したことを発表する異例の声明を出した。自分たちが「逃げたわけではない」と住民を安心させる狙いがあったとみられる。

しかしその僅か2ヶ月後にハマスのメディアに飛び込んできたのは、彼らが地域内で新たな「外国出張」に出ているとのニュースだった。

AP

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