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レバノン国境のヒズボラ前哨基地をめぐる膠着状態

イスラエル北部のレバノン国境沿いでヒズボラの旗の近くに佇むイスラエル軍兵士ら。2022年9月。(AFP / 資料写真)
イスラエル北部のレバノン国境沿いでヒズボラの旗の近くに佇むイスラエル軍兵士ら。2022年9月。(AFP / 資料写真)
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03 Jul 2023 01:07:16 GMT9
03 Jul 2023 01:07:16 GMT9
  • 武装組織ヒズボラは、軍事的敵対行動の脅威にも関わらず、テントの撤収を求めるイスラエル側の要求を拒否した
  • 国際連合レバノン暫定駐留軍の任務更新期限(8月末)が迫りつつあり、緊張が高まっている

ナジャ・フーサリ

ベイルート:ヒズボラは、レバノンとイスラエルの国境にある係争中のクファルチョウバの丘陵に設置された前哨基地の撤去を求めたイスラエル側の要求を拒否している。

この問題をめぐって武装組織ヒズボラとイスラエル側が張り詰めた膠着状態にある中、土曜日、国境の町ビント・ジュベイルとマルジャユンの上空のレバノン領空をイスラエル軍機が低高度で侵犯した。

今回問題となっている前哨基地(2つの軍用テントとヒズボラの戦闘員が使用している仮設設備)の存在は、先週火曜日、イスラエルの立法府「クネセト」の外交防衛委員会で議論された後、注目を集めるようになった。

イスラエル国防軍はこの問題を数週間にわたって表立てないようにしていた。

最近、イスラエルの複数ニュースサイトが、「イスラエルは、レバノンとの国境にヒズボラによって設置された軍事拠点を、力ずくで撤去する準備をしている」と報じている。

ヒズボラの議会内会派の長を務めるムハンマド・ラード国会議員は、土曜日、「イスラエルがオシラク原子炉を平然と爆撃した時代は終わっています」と述べた。

「現在では、イスラエルには2つのテントを撤去することすらできません。強い信念を持って強い抵抗を為す強い人々がこのレバノンにいるからです」

イスラエルに向けたコメントで、ラード議員は、「戦争を望まないのであれが、静かにしなさい」と述べた。

「貴方たちであれ、誰であれ、この抵抗勢力にレバノンのものを撤去するよう要求することはできません」と、ラード議員は付け加えた。

ラード議員は、また、イスラエル側は1ヶ月にわたって国境のこれら2つのテントについて抗議をしていると語った。イスラエル側は2つのテントが「ブルーライン」を越えた位置に設置されていると解釈し、そう主張しているのだという。

「イスラエルはテントの撤去を要求しており、ヒズボラ自身の手で撤去して欲しいと望んでいます。もしイスラエル側がテントを撤去した場合、戦争が起こることになりますが、イスラエルはそれを望んではいないというわけです」と、ラード議員は付け加えた。

イスラエル治安当局筋は、イスラエル側がレバノン側に外交ルートと軍関係ルートを通じて6月にメッセージを送り、ヒズボラの軍事目的のテントが国境を越えて設置されていると伝えていたことを、イスラエルのニュースサイト「ワラ・ニュース」に先週水曜日に明かした。

しかし、「そこはレバノン領内です」との返答だったという。

ワラ・ニュースによると、イスラエル軍は「ブルドーザーと戦車を用いてヒズボラのテントを撤去するエンジニアリンング作戦」を実行する準備を進めつつあると治安当局筋は語っているという。

同治安当局筋は、、また、イスラエル北部の入植地への浸透作戦を準備しているヒズボラがその精鋭部隊(アルリドワン)からイスラエルとの国境地帯に兵力を派遣していることを明かにした。

また、ヒズボラは2週間毎に境界線から2メートル離れた場所に転々と軍事拠点を設置していると、ワラ・ニュースは報じている。

ワラ・ニュースは、イスラエルと米国の情報筋に言及し、米国の支援を得たイスラエル政府が、「レバノン政府、レバノン軍、国連レバノン暫定駐留軍(UNIFIL)に厳しいメッセージを送付」することにより、レバノン政府に圧力をかけて、問題となっている前哨地を撤去させようと試みていたことを明らかにした。

イスラエル外務省の情報筋によると、ヒズボラのメンバーたちは4月8日にブルーラインの30メートル南にテントを設置し、数週間後にさらに1つテントを増設し、貯水タンクと発電機も設置したという。

2022年末、レバノンは、米国の仲介を通じて、イスラエルとの海上国境を画定した。

しかし、この両国間の間接的な交渉では、陸上国境の画定は為されていなかった。

ブルーラインは、2000年にイスラエルがレバノン南部から撤退した後に、UNIFIL部隊が画定した、臨時的で確定的ではない境界線である。

レバノン軍は、国境画定においてイスラエル側と見解を異にする地点が13ヶ所有るとしている。

シバァ農場とクファルチョウバ丘陵については、依然として論争が続いている。

これらの地域は、1967年6月の戦争でイスラエルによって占領されたものの、2000年のレバノン南部からのイスラエル撤退後にはブルーラインのイスラエル側には区画されていない。

国連保管の文書によると、これらの地域はシリア領とされているが、レバノンは自国領であると主張している。

シリア当局者がこれらの地域はレバノン領であることを口頭では認めたものの、それを確認した文書をシリア政府は国連に未だ提出していない。

クファルチョウバのレバノン人たちは、イスラエル軍が現在占領中で自国領と見做している土地で実施した発掘調査に対する抗議行動を約1ヶ月前に行った。

クファルチョウバの人々は、イスラエルの占領地域に進入し、そこに留まり、発掘に反対する意思を示した。

ヒズボラは、クファルチョウバ丘陵とシバァ農場付近で2000年以降も抵抗活動を継続していた。

しかし、ヒズボラは、国連安全保障理事会決議第1701号に照らし、2006年の戦争後は活動を縮小している。

クファルチョウバ丘陵地域における新たな緊張状態は、2022年採択の更新方式に従ったUNIFIL部隊の安保理での任務更新期限が8月末に迫っていることと無関係ではない。

この任務更新には、UNIFILの権限拡大が含まれており、レバノン軍との連携や調整も不必要になるとされている。

レバノンは、米国やフランス、英国が要求したこの修正を拒否した。

今年発生したイスラエルとレバノンによる安保理決議第1701号違反は、UNIFILの任務更新関連の議論を一層複雑にし得る。

安保理決議第1701号への違反には、レバノン南部からイスラエル占領地域に向けて所属未確認のロケット弾が発射されたこと、UNIFIL所属のアイルランドの哨戒隊が攻撃を受け兵士1人が死亡し他の兵士が負傷したことがある。レバノン軍事司法当局は後者の攻撃の責任をヒズボラに所属する特定の数名に帰している。

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