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パレスチナ政府、ヨルダン川西岸地区で支持率低下 イスラエルの研究で

アブ・マーゼン(アッバース)大統領下のパレスチナ政府は、第2次インティファーダ以来最も過酷な状況下にあるという。(ロイター/ファイル)
アブ・マーゼン(アッバース)大統領下のパレスチナ政府は、第2次インティファーダ以来最も過酷な状況下にあるという。(ロイター/ファイル)
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04 Jul 2023 05:07:16 GMT9
04 Jul 2023 05:07:16 GMT9
  • マフムード・アッバース政権の正統性は「パレスチナ人世論評価で最低レベル」だと報告から明らかに
  • イスラエル政府は「現状を変えるつもりない」と観測筋

ハゼム・バロウシャ

ガザ市: イスラエルの研究報告によると、ヨルダン川西岸地区におけるパレスチナ当局の人気は急落しており、一方でハマス、イスラム聖戦の支持率が上がってきているという。

イスラエル・テルアビブ大学付属安全保障研究所(INSS)が発表した研究報告によると、イスラエル政府はパレスチナ自治政府(PA)の安全保障体制を強化し、経済活性化を進めるべきで、またそうすることが「イスラエルの利益」になるという。

研究チームは1人の退役少将と2人の米国ウェールズ大学研究者で構成されている。

ガザのアル=アズハル大学の政治学を専門とするムハイマー・アブ・サアダー教授は、ガザのハマスおよびヨルダン川西岸地区のパレスチナ自治政府に関するイスラエルの方針には曖昧な点があるとする。

同氏はアラブニュースに、「イスラエルの現政権および前政権は、ヨルダン川西岸地区およびガザ地区の現状を変えるつもりはなく、今ある対立構造の維持がイスラエルの明確な目的であって、このことはベンヤミン・ネタニヤフ首相が明言している」と語った。

研究によると、パレスチナ・イスラエル対立問題の先行きの不透明さと、イスラエルの右翼政府の存在が、マフムード・アッバース大統領下のパレスチナ政府の人気下落の主因だという。

同研究によると、「多くの人が希望を抱くなか、パレスチナ暫定自治政府の樹立から30年が過ぎ、いくつもの交渉の決裂、政策イニシアティブの挫折を経て、イスラエルとパレスチナの政治過程は袋小路に陥っている」という。

同研究はパレスチナ政府の弱体化とハマス人気上昇の理由について、イスラエル政府がパレスチナ政府に対する明確な戦略を持たないことに照らして考察している。

「アブ・マーゼン(アッバース)大統領下のパレスチナ政府は第2次インティファーダ以来最も過酷な状況下にあり、このまま失墜を続ければ崩壊に至る可能性もある」と同研究は報告している。

パレスチナ政府にはいくつもの困難が立ちはだかっており、そのうち最大のものは経済的危機、収益の減少で、それが原因でヨルダン川西岸地区内の安全性が脅かされている。

ここ数カ月、パレスチナ政府は政府職員に対する給与を一部しか払えず、不安を引き起こしており、教師や医師によるストライキが複数回発生した。

イスラエルは昨年始めにヨルダン川西岸地区北部で軍事攻撃を拡大し、何百人もの死傷者を出した。パレスチナのいくつもの町で侵略攻撃が発生し、イスラエルパレスチナ政府の能力をさらに弱めた。

同研究によると「アブ・マーゼンによるパレスチナ政府の正統性はパレスチナ人の世論評価で最低レベルである」という。

また、パレスチナ政府とその安全保障体制は「責任下にある領域の一部を統治できておらず、地元の組織が既知のテロ組織とともに」ヨルダン川西岸地区およびイスラエル国内のイスラエル治安部隊やイスラエル市民に対する「テロ攻撃を行う目的で勢力を拡大、テロ用のインフラを拡充している」と同研究は補足する。

アッバース大統領による「テロに対する継続的な抵抗および安全保障協力に向けた支援は無意味で、パレスチナの公益に資するものではなく、したがって正統ではないと考えられている」と同研究は報告している。

パレスチナ政策調査研究所が先月行った別の世論調査によると、パレスチナ人の63パーセントが現パレスチナ政府はパレスチナ人の負担になっていると考え、80パーセントがアッバース大統領の政策実行に不満を持っている。

同調査によると、パレスチナ人の50パーセントがパレスチナ政府の解体はパレスチナ国民の最大の利益になると考え、63パーセントがパレスチナ政府の存続はイスラエルの利益になると考えている。

合計71パーセントが、獅子の巣など、パレスチナ政府の支配下にない組織の正式な設立を支持しており、80パーセントがパレスチナ政府によるこれらの組織を解散する呼びかけに反対している。

INSSの研究では、イスラエルとパレスチナの首脳部は「強いパレスチナ政府の意味について意見が一致していない」という。

「イスラエルは、パレスチナ政府がイスラエルとの直接交渉に基づいた政治的取り組みの中で機能し、またこれを遵守することを重要視する一方、パレスチナ首脳部は政府の政策実行力向上だけでなく、正統性を欠いた状況下における政治・市民に関する統制を強化するためにも強いパレスチナ政府を追求している」と同研究は述べる。

「ハマスの政治的な強さは、そのイデオロギーだけによるものでも、またパレスチナ政府に対する反感だけによるものでもない。ハマスの強さの源はその軍事的能力、およびその軍事力を用いてガザ地区を全面的な管理下に置いていること、そしてイランやヒズボラとの協力基盤があることで、これらを活かしてハマスはヨルダン川西岸地区で軍備増強を進め、テロ用のインフラを整備・稼働させ、安全保障の現状を脅かし、パレスチナ政府の地位を揺るがそうとしている」

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