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国連船がイエメンに到着、老朽化が進む石油タンカー「セイファー号」から原油回収

2023年7月15日、イエメン西部の紅海に面した都市ホデイダの沖合に係留されているイエメンの老朽化した石油タンカー「FSOセイファー号」の写真を撮る男性。(AFP)
2023年7月15日、イエメン西部の紅海に面した都市ホデイダの沖合に係留されているイエメンの老朽化した石油タンカー「FSOセイファー号」の写真を撮る男性。(AFP)
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17 Jul 2023 12:07:41 GMT9
17 Jul 2023 12:07:41 GMT9
  • 114万バレルのマアリブ・ライト原油をノーティカ号に移送する難しい作業が数日以内に開始される
  • セイファー号には、1989年にアラスカ沖で起きたエクソン・バルディーズ号の事故によって流出した原油の4倍の量の原油が積載されている

イエメン・ホデイダ:国連所有の船が7月16日、戦争で荒廃したイエメンの沖合に到着した。壊滅的被害をもたらす原油流出を防ぐため、老朽化が進む石油タンカーから100万バレル以上の原油を回収するというリスクの大きい作業を実施する。

国連、イエメンのフーシ派民兵組織、そして国際的に認められたイエメン政府の間の何年にもわたる緊迫した外交交渉の結果、ノーティカ号は正午にイエメン海域に入り、まもなく紅海上に係留されている錆びついた超大型タンカー「FSOセイファー号」の横に係留されることが見込まれている。

このプロジェクトのために国連が購入したノーティカ号に、114万バレルのマアリブ・ライト原油を移送するという難しい作業は、来週末に開始される予定だ。

厳しい安全検査にもかかわらず、流出や爆発の懸念は依然として残っている。セイファー号には、1989年にアラスカ沖で起きたエクソン・バルディーズ号の事故によって流出した原油の4倍の量の原油が積載されている。

「高いリスクがあります。非常に高いリスクがあります」と、国連開発計画(UNDP)のセイファー号プロジェクトマネージャー、モハメド・ムダウィ氏は語った。

「しかし、プロジェクトを完了し、このようなリスクが排除されることを期待しています」

セイファー号の保守作業はイエメン戦争のため2015年に中断され、UNDPは何年も前から「いつ爆発してもおかしくない」と警告してきた。

大規模な流出事故が起きれば、生態系が破壊され、イエメンの漁村が壊滅的打撃を受け、ライフラインである港湾や淡水化施設が閉鎖される可能性がある。

2023年7月13日、イエメン西部のホデイダ県アル・カウカ地区で、FSOセイファー号からの原油流出から海岸を守るため、フローティングブーム(一時的に石油を封じ込める障壁)の使い方をイエメンの地元住民に教える国連の専門家ケビン・オコネル氏(中央)。(AFP)

イランが支援するフーシ派は2014年にイエメンの首都サヌアを制圧し、2015年3月からサウジアラビア主導の連合軍と戦闘を続けている。この紛争では数十万人の命が奪われ、大部分のイエメン人が援助に頼らざるを得なくなっている。

民間企業SMITサルベージの専門家によって5月下旬から準備が進められてきたこのプロジェクトにとって、夏の灼熱の暑さ、老朽化したパイプ、周辺海域に潜む機雷などはすべて脅威となっている。

国連のイエメン常駐調整官のデイビッド・グレスリー氏は7月17日、安全保障理事会で、爆発のリスクを下げるためにチームは船を検査し、移送ポンプとホースを配置し、貨物タンクに不活性ガスを注入したと明らかにした。

プロジェクトの上級顧問ニック・クイン氏は、甲板上の温度が摂氏50度を超える真夏の作業は、さらなる危険性をはらんでいると述べた。

そして、「あっという間に、本当に暑くなります」と語り、そのため、重い個人用保護具を着用している作業員が甲板上で「滑ったり、つまずいたり、転んだりする」可能性が高まると指摘した。

建造から47年を迎えるセイファー号は、1980年代に浮体式原油貯蔵積出設備(FSO)に改造されて以来、イエメン沖に係留されている。ノーティカ号は7月15日にジブチを出港し、翌日16日の正午前にイエメン海域に到着した。

ノーティカ号に乗船していたグレスリー氏は、地元当局が16日に船を確認しに行ったと語った。

「私たちは今、かなり自信を持ってこの取り組みが前進するだろうと考えています。受け取ったすべての声明と、官民両方から得た保証を通して、原油移送は確実に行われると信じています」とグレスリー氏は語った。

2023年7月13日、イエメン西部のホデイダ県アル・カウカ地区でFSOセイファー号からの原油流出から海岸を守るため、フローティングブームを展開するイエメンの地元住民。(AFP)

マングローブの林や、ガスや穀物を積んだタンカーが行き交うホデイダ港から約50km離れた場所に係留されているセイファー号の周辺は、流出事故が起きれば壊滅的な打撃を受ける野生生物の宝庫だ。

AFP通信が7月15日にセイファー号を訪れた際には、船上から太陽の光に輝くイルカのヒレが見え、鵜(う)が何年も棲家にしている舵(かじ)の上にいるのを確認できた。

ムダウィ氏によると、セイファー号のインフラに懸念が残るため、すべての接続を確実にし、作業員が原油漏れを監視できるようにするため、日没の少なくとも10時間前の日中に原油移送を開始する必要があるという。

作業が始まれば、セイファー号からノーティカ号への原油の移送には約3週間かかると国連当局は見込んでいる。

しかし、この長年の大き問題は原油の移送が完了すれば解決というわけではない。というのも、この原油が誰のものなのか、という問題を紛争中のイエメン各派が解決しなければならないからだ。

ノーティカ号は間もなくイエメン号と改名され、所有権交渉が続く間はこの地域に留まることになる。

フーシ派が任命したイエメンの石油・ガス会社SEPOCのエグゼクティブ・ゼネラルマネージャー、エドリース・アル・シャミ氏は、「原油の移送が完了したら、今度は移送先の船の管理をしなければなりません」と述べた。

シャミ氏の任命は国際的に認められたイエメン政府には認められておらず、同政府は独自にSEPOCのトップを任命した。

「課題は、老朽化した古い船から新しい船へ移すということです」とシャミ氏は言った。

「しかし、このエリアは非常に荒れた海況なので、しばらくメンテナンスを怠れば、また元の木阿弥となります」

AFP

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