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大変な「新しい日常」に備えて覚悟せよ

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03 May 2020 08:05:47 GMT9
03 May 2020 08:05:47 GMT9

コロナウイルスのパンデミックは、以前では考えられなかったような政治・経済的状況を引き起こしている。ほんの数週間前ですら、多くの国が行った経済への介入や、ある時点では世界人口の半数以上が何らかの形のロックダウン下に置かれたという事実を予想できた人は少なかっただろう。

前例のない事態の件数は日々増加している。ドナルド・トランプの経済顧問であるケビン・ハセット氏は先週、米国は年率30%以上減という、優に大恐慌以来最悪となる景気後退に苦しむだろうと予測した。それに加え、過去6週間だけでも失業保険申請者数が約3,000万人と大幅に増加しており、これは2008年の金融危機におけるどん底から雇用状況が回復を始め、2009年以降に創出された2,200万人分の雇用を上回る。

「考えられないようなこと」が次々起こり、いかに世界がパンデミックに対して準備ができていなかったか、またコロナウイルスに関する知識のギャップが露呈されている。例えば、今月には中国や欧州の大部分が医療的緊急状態のピークを越えたという希望が広がりつつあった。しかし、パンデミックの抑制に成功したと見られていたシンガポールや韓国などが、国外からの新たな感染という懸念の広まりを受け、出入国の再封鎖や、より厳しい抑制措置を行わなければならなくなった。

このような事態が、急速な回復を前提とした各国の大規模ロックダウンではなく、複数の制限を半連続的に行う必要があるのではないかという憶測を呼んでいる。先週、米疾病予防管理センターのロバート・レッドフィールド所長は先週、コロナウイルスの波が冬季には通常のインフルエンザ流行と同時に発生すれば、状況はさらに困難になると注意を呼びかけ、回復に向けた課題が大きく取り上げられることとなった。 

「考えられないようなこと」が次々起こり、いかに世界がパンデミックに対して準備ができていなかったか、またコロナウイルスに関する知識のギャップが露呈されている。

アンドリュー・ハモンド

株式市場の多くは、先月の最低水準と比べて大幅に上昇しており、急速な回復というセオリーが正しいということも考えられる。一方で、ウイルスに関するいくつもの意見がこれまでに覆されてきている。実際、ウイルスは中国国内で阻止できると広く考えられていた時期もあったのだ。

よくあることだが、ビジネス界にはこのような状況を表す頭字語がある。「Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)」をつなげたVUCAという言葉は1980年代に作られ、冷戦終結の頃、主に軍隊訓練で使われていた。私たちの「新たな日常」において、各国首脳や大企業は、戦略的計画と予測に基づき、体制の強化、回復力の構築、そして繁栄の実現を目指している。このような動きから分かるのは、雇用からパンデミック終息後の移動形態まで様々な分野における変革の可能性が考えられる中、多くの組織は将来の保証を強化する必要があり、危機をチャンスに変えた者が成功するということだ。

例えば、世界的サプライチェーンが破砕された今、これまでのシステムを考え直す時なのではないだろうか。すでに経済のグローバル化が今後も逆戻りすることは予想されており、国内生産の拡大が大幅に進み、ドナルド・トランプなどの政治家もこのような動きを奨励している。

現在の危機においてもう1つ目立っているのは、多くの国における強力な企業責任の対応だ。多くの企業が生産過程を転換して個人防護具や呼吸器の製造を始めた。これは大きな遺産となり得る。すでに、株主還元という限られた目標を超え、さらに広い範囲に向けて利益を生み出すことで社会に溶け込めるよう、長期的視野に切り替える企業が増えている。この概念の裏にある重要な考えは、1月にダボスで開催された世界経済フォーラムの中心的テーマであった、企業競争力と社会の健全性は、大部分が相互に依存かつ補強し合う関係にあるというものではないだろうか。

社会と経済の発展の繋がりに投資し、世界が直面する課題に取り組むことは、パンデミック後の成長に新たな波を起こせる。例えば、パンデミックによるロックダウンが生み出した数少ないプラスの点に、世界的な二酸化炭素排出量の減少と、それに伴う気候変動への影響の緩和がある。世界経済が回復するときには、組織的サスティナビリティは今まで以上に注目され、多くの環境活動家が「ネット・ゼロ」をさらに強く訴えることになるだろう。

これは、大きな変化を伴う新たなランドスケープであり、さらにVUCAを深めるものだ。現在生まれつつある新たな日常において、組織が今後の予想不可能な事態に備え、回復力を強化する必要性は高まっている。

  • アンドリュー・ハモンドはロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのLSE IDEASのアソシエイト
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