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サウジアラビア、自主炭素市場イニシアティブでよりグリーンな経済を目指す

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30 Mar 2022 08:03:17 GMT9
30 Mar 2022 08:03:17 GMT9

サウジアラビアの公共投資基金は先週、同国の政府系ファンドの中東・北アフリカ地域自主炭素市場における最初のパートナー候補として、大手企業5社と合意したことを発表した。5社とは、サウジアラムコ、サウジアラビアの航空会社ACWAパワー、鉱業・金属会社マーデン、そしてNEOMギガプロジェクトの子会社ENOWAだ。

自主炭素市場イニシアティブの立ち上げは、もともとは気候変動の影響を軽減するために、2021年9月にPIFが発表したもの。PIFのグリーン・ファイナンス・フレームワーク・イニシアティブのもと、サウジアラビアは2020年のG20で議長を務めた際に発表した炭素循環経済戦略によって、2060年までに純排出量をゼロにすることを計画している。

社会的・経済的改革を導入することを目的とした「サウジ・ビジョン2030」に沿って、このイニシアティブはサウジアラビアのグリーン経済の発展に寄与し、雇用を増やすとともに、この新しいセクターでの投資機会を生み出すだろう。PIFが提案した炭素市場もそのツールの一つだ。

カーボンクレジットとは、温室効果ガスや炭素の排出を削減するために国際的に使われているツールだ。1997年に初めて導入され、保有する企業に一定量の排出を認める許可証のような役割を果たしている。たとえば、1クレジットで1トンのCO2を排出することができる。大気汚染をしている企業はこのクレジットを使用することで、一定の限度までその行為を継続することができる。未使用のクレジットは、必要とする他の企業に売却することが可能だ。

なお、平均的なアメリカ人は1人は、車の運転、買い物、家庭での電気やガスの使用、その他の日常生活によって、年間16トンものCO2を排出していることは記しておく価値があるだろう。カーボンクレジットは、エネルギー転換政策を進め、排出量を削減するための重要な手段なのだ。

だが、自主炭素市場は少し違った仕組みになっている。この市場に参加する企業は、環境に配慮し、カーボンオフセットを選択する企業や個人と協働することができる。たとえば、環境保護への取り組みを証明したいと考える環境に配慮した企業や、旅行の際に大気中に排出される炭素量をオフセットしたいと考えている個人などだ。

たとえば、石油大手のシェル社は2021年に、2030年までに自社のCO2排出量のうち1億2000万トンをオフセットすると発表している。具体的な理由はどうあれ、企業は排出する温室効果ガスをオフセットする方法を探している。その方法として活用できるのが自主炭素市場なのだ。

国際的な炭素取引市場は20年以上前から存在していたが、当初は導入に時間がかかった。EUは気候政策の一環として、早くも2005年に世界初の大規模な排出権取引制度を開始した。英国ではブレグジットにより、EU炭素市場の自国版を再構築する必要があり、同市場は昨年5月から取引が開始している。また、中国は昨年7月に世界最大の排出量取引市場を開設した。この市場は中国の排出量の40%、世界の排出量の12%を対象としており、2060年までにネットゼロを達成する同国の計画の一環だ。

その他にも、カナダ、日本、韓国、スイス、米国に、運用中、または計画段階の炭素市場プログラムが存在する。世界の炭素市場の合計額は、2017年と比べて5倍増の2720億ドルにまで達した。

炭素市場は、大気汚染に効果的に価格をつけ、再生可能エネルギーやエネルギー効率を促進することで、経済活動によるCO2の排出を減らしていくための重要なツールだ。

自主カーボンクレジットプロジェクトは、再生可能エネルギーやエネルギー効率への投資を促進し、森林再生などのグリーンプロジェクトの費用を提供することで、世界経済の脱炭素化への移行を加速させることができる

つまり、PIFが自主炭素市場プログラムについて具体的なステップを踏んでいることは、歓迎すべきニュースだ。国内の主要産業やCO2排出企業を説得して、この制度に参加させたことも素晴らしい。これによって、地域の他の企業も確実にこのプログラムに参加するようになるだろう。気候変動に対する国民の意識が変化することは、企業にとってこうした取り組みに参加するインセンティブとなる。

このような計画や、サウジアラビアと湾岸諸国における自然エネルギーやその他のグリーンプログラムの推進は、すべて「正しいことをする」ための具体的なステップであり、よりクリーンな地球への移行と世界的な気候変動目標の達成を目指す地域のエネルギー移行計画の一部だ。

そして、これはいいことでしかない。

  • フアード・アル・ザイール氏はフリーのエネルギーコンサルタント。以前はOPECのデータサービス部門長、IEFJODIグローバル・イニシアティブの代表を務める。サウジアラビアのアルクホバール在住。
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