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ブリンケン米国務長官のサウジ訪問、中東地域における米国の地位回復に向けた重要な一歩に

アントニー・ブリンケン米国務長官。(AFP)
アントニー・ブリンケン米国務長官。(AFP)
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16 Jun 2023 01:06:19 GMT9

先週、アントニー・ブリンケン米国務長官がサウジアラビアを訪問したことで、米国・サウジおよび米国・GCC間のパートナーシップのあり方に関する誤解が解かれた。それまで、米国とサウジアラビアの間に亀裂が生じているのではないかとの憶測が流れていた。3月に中国の仲介でサウジアラビアとイランが国交正常化に合意したためだ。

シリアのアラブ連盟復帰も、米国と湾岸諸国のパートナーとの緊張の種となった。先月、アサド大統領がアラブ連盟首脳会議に出席するためにジェッダを訪れたことについて、米国は明らかに不満だった。

こうした動きに加え、OPECの政策をめぐる立場の不一致、特にサウジアラビアが生産量をめぐりロシアと協調していることをめぐる意見の相違や、中東地域で影響力を増すと見られる中国の動向もあった。

これらの問題は、域外の識者がGCCと米国の関係、特にサウジアラビアとワシントンの関係に修復不可能なダメージがあると考えるに十分な材料であった。

同様に、地域内の識者も、米国が否定はしているものの、この地に留まることについて葛藤を抱いていると見ていた。昨年7月のバイデン米大統領の訪問や、湾岸諸国の安全保障に対するワシントンの「永続的なコミットメント」についての彼の発言は、記憶から薄れていた。大統領によるパレスチナでの演説も忘れられている。演説で大統領は、前任者のイスラエル入植に対する方針を覆し、パレスチナ人のための独立した発展可能な国家の存立を訴えた。

両陣営の高官の理解とは反対に、こうした世間の認識は、訪問が始まる前から、それが失敗とまではいかないまでも困難なものになると踏んでいた。

しかし、2年以上前に国務長官に就任して以来、初めて単独でこの地域を訪れたブリンケン氏の3日間の訪問の結果は、両陣営の識者の期待を裏切るものであった。湾岸地域の安全保障に対する米国のコミットメントを再確認し、ワシントンには安堵感を与えた。この地域の状況は、1万キロ以上離れたワシントンから見えるものとは違うのだと。

6月6日にブリンケン国務長官がムハンマド・ビン・サルマン皇太子殿下と会談したことを受けて、米国は、両者が中東全域とそれ以外の地域の安定、安全、繁栄を促進するために、スーダンでの紛争集結に向けた外交交渉における継続的なパートナーシップや、平和、繁栄、安全を達成するための包括的政治合意への取り組みなどを通じての「共通のコミットメント」を確認したと表明した。また、米国が最大の経済ライバル国である中国に遅れをとっている経済協力の強化についても話し合われた。

翌日には、リヤドでGCC諸国外相との会合が、2015年に発表された「GCC-US戦略的パートナーシップ」の枠組みの下で行われた。出席者らは、たとえ意見が対立するような問題があったとしても、このパートナーシップは存続し、繁栄するものであるとの見解で一致した。

7日深夜に発表された公式声明によると、会合では、地域の安全保障と、「戦略的かつ野心的な成長しつつあるパートナーシップ」の重要な要素について議論がなされた。また、イラン、シリア、ウクライナなど、見解にやや隔たりが見られた最近の問題についても本格的な議論が交わされた。

合意点としては、米国がこの地域の安全保障に対する自国のコミットメントを再確認し、世界経済と国際貿易に占める自国の重要な役割を認めたことが挙げられる。米国とサウジアラビアは、中東の平和、安全、安定、統合、経済繁栄のために協力する。具体的な取り組みとしては、GCCの電力網を近隣諸国と接続するなど、地域の統合と相互接続を強化するインフラプロジェクトがある。6月8日にようやくプロジェクトが開始されたイラクが皮切りとなる。

両陣営の高官の理解とは反対に、こうした世間の認識は、訪問が始まる前から、それが失敗とまではいかないまでも困難なものになると踏んでいた。

アブデル・アジーズ・アルウェイシグ博士

防衛・安全保障をめぐる協力については、出席者らは、共通の決意として、地域の安全と安定に貢献し、航行の権利と自由を守り、地域の水路を航行する船舶の安全に対する脅威に対処するための集団的努力を行うことを、暗にイランに言及しつつ、表明した。この目標に向けて、出席者らは、頻繁に行われる合同軍事演習を通じた防衛協力と、合同海上部隊の枠組みを通じた緊密なパートナーシップをレビューした。

さらに、今年行われた4つのGCC・米国合同作業部会(統合防空ミサイル防衛、海洋安全保障、テロ対策、イランに関する)の成果についても議論し、今年中に再招集する可能性を探った。また、サイバーセキュリティ合同チームを今年中に招集することを決定し、パートナーシップの軍事・安全保障に関する側面を扱うために以前設置された他の作業部会を招集する可能性を探った。

ブリンケン米国務長官の訪問に先立ち意見が対立したイランなどの問題については、外相らは外交とディエスカレーションの必要性を強調した。米国は、サウジアラビアとイランによる国交再開の決定を「歓迎」したものの、10日に発表されたサウジ・イラン・中国による共同声明に盛り込まれた、国連憲章などの国際法の遵守に関する内容がいかに重要であるかを強調した。国連憲章の遵守は、これまで、GCC・イランおよび米国・イラン間の対立の背景にある中核的な問題となっていた。

出席者らはイランに関して、航行の自由および海洋の安全保障、ならびにGCC諸国の航路、国際貿易、石油施設を脅かす可能性のある海上などでの攻撃的かつ違法な行為に対抗することへのコミットメントを表明した。核問題をめぐっては、過去にあったような「共同包括行動計画」にこだわらず、核兵器不拡散条約と国際原子力機関(IAEA)の役割強化に対する全体的な支持を再確認した。

同じくパートナーシップの中で意見が分かれるシリアに関しては、5月1日にアンマンにてアラブ閣僚級コンタクトグループ協議でなされたシリアに関する合意を踏まえ、国連安保理決議2254に沿った形で同国の危機を段階的に解決するアラブ諸国の努力を歓迎した。同決議への言及は、ここ数か月遅れをとっている国連の調停プロセスによる政治的解決にGCCと米国が今後もコミットし続けるのかという疑念を解消することになるだろう。

パレスチナ問題については、双方は、公正で持続的かつ包括的な平和へのコミットメントを強調している。コミットメントは、1967年に画定された国境線に基づく二国家解決策、国際的に認められた条件と一致する交換、アラブ平和イニシアチブに即したものとなっている。また、入植地とエルサレムに関する一方的な動きに反対し、これにより、イスラエルの違法な動きに対するトランプ政権の支持を改めて覆した。

ウクライナ侵攻については、そのすべての詳細について完全に合意したわけではないが、それでもなお、主権と国連憲章を含む国際法の原則を尊重することの重要性と、いかなる国家の領土保全や政治的独立に対する威嚇や武力行使も行わないという義務を負うことで合意した。また、平和的解決を見いだし、侵攻がもたらす人道的余波により効果的に対処するために、ウクライナからの穀物などの食糧の輸出円滑化を目的とする国連の黒海穀物イニシアティブの延長を含む取り組みを強化するよう呼びかけた。

スーダンはここ数週間、サウジ・米国間の協力関係の中で焦点となっており、外相らは同国での外交努力を支持し、スーダン軍と準軍事組織RSFの停戦を呼びかけた。

全体として、ブリンケン氏の訪問は、サウジ・米国およびGCC・米国間のパートナーシップを再活性化し、効果的かつ建設的に立場上の相違に対処した。メディアによって誇張された誤解を取り除いた今、このパートナーシップを前進させ、相互利益の機会が豊富に存在する経済圏を含むより高いレベルに引き上げるためには、閣僚レベルおよび技術レベルでの継続的な関与が必要である。米国は、中国がこの地域でプレゼンスを増していることを嘆くのではなく、自国のプレゼンスを高めるべきだ。

  • アブデル・アジーズ・アルウェイシグ博士は、湾岸協力会議の政治・交渉担当事務局長補佐であり、アラブニュースのコラムニストです。本記事で述べられた見解は個人的なものであり、必ずしも湾岸協力会議の見解を代表するものではありません。

    ツイッター: @abuhamad1
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