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フランクリー・スピーキング:欧州は今もイエメンに関心があるのか?

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20 Jun 2023 03:06:18 GMT9
20 Jun 2023 03:06:18 GMT9
  • スウェーデンの外交官であるピーター・センネビー氏、人道支援とイランとのつながりが欧州にイエメンの和平プロセスに対する影響力を与えると語る ●
  • センネビー氏はサウジアラビアとイランの合意を称賛するも、その効果をイエメン情勢に期待するにはまだ時期尚早だと語る

アラブニュース

リヤド:ウクライナ戦争が外交政策の主要議題となっているが、欧州がイエメン情勢に関心を持つ理由は人道問題以外にも数多くあると、スウェーデンのイエメン特使であるピーター・センネビー氏は語った。

第一線で活躍する政策立案者とのインタビューを取り上げるアラブニュースのトーク番組『フランクリー・スピーキング』に出演したセンネビー氏は、欧州がイエメンの紛争に関心を持ち続ける要因として、海運、テロ対策、エネルギー安全保障を挙げた。

「最も重要な理由の1つは人道的責務です。戦争であろうと、自然災害であろうと、国民が何らかの理由で苦しんでいる世界中のあらゆる国に私たちは関与しています」と、彼は『フランクリー・スピーキング』の司会者ケイティ・ジェンセン氏に語った。

「しかし、スウェーデンとEU(欧州連合)には、イエメンと関与するより実務的な利害関係が数多く存在します。イエメンは、その近隣諸国にとってだけでなく、私たちにとっても安全保障上重要です」

この点についてセンネビー氏は詳しい説明を続けた。「中東は隣接地域です。私たちは中東と多くの貿易を行っています。エネルギー供給の多くを中東から得ています」

スウェーデンのイエメン特使、ピーター・センネビー氏。(提供写真)

「また、地図で見ると、イエメンは最も重要な海上輸送ルート上に位置しています」

「そしてこの点が、やや逆説的なのですが、ますます重要になってきています。ロシアのウクライナ侵攻後、私たちの観点からすると、より遠方で起きている紛争は後回しにされるだろうと考える人もいるかもしれません。しかし、そうではありません。ウクライナ戦争の結果、エネルギー安全保障がこれまで以上に重要になっています」

センネビー氏は続けて、「それから、その他の安全保障関連の課題も追加できます。例えばテロ対策です。イエメンの場合のように政治体制が崩壊する恐れのある、内戦に巻き込まれた制度が脆弱な国は、安全保障制度の面と、より長期的な制度構築の面の両方における支援がなければ、テロリストに機会を与えることになります。EUは湾岸地域のパートナー諸国と協力してその支援を間違いなく提供できます」

センネビー氏によると、ウクライナ戦争とそれに伴う対ロシア制裁の結果、欧州大陸でのエネルギー価格が高騰したことで、中東のエネルギーに対する欧州の利害関係がさらに重要視されるようになったという。

「ウクライナ戦争により、私たちは貿易ルートをどのように確保するか、特にエネルギー供給をどのように確保するかについて、より真剣に考えるようになったことは間違いありません。そして、イエメンはエネルギー供給にとって非常に重要な戦略的位置にあります」とセンネビー氏は述べた。

「また、人道的責務は常に存在しており、ウクライナ戦争の結果、小麦や穀物の供給が途絶えたことで、他の紛争における人道問題にさらに注目が集まっているとも言えます」

飢餓状態に近いイエメンへの人道支援の継続は、和平プロセスに対する一種のテコ入れ策だとみなす向きもある。

センネビー氏は、ウクライナ戦争の影響の一つとして、イエメンに提供される援助額の減少を指摘した。

そして湾岸諸国に対し、国際的な対応を強化するために既存の人道支援寄付を国連基金に振り向けるよう促した。

「変化したことは、これは残念なことですが、さまざまな種類の援助に利用できる資金が減ったことです」とセンネビー氏は訴えた。

「ご存知のように、これまで多くの国がウクライナ支援のために多大な努力を払ってきました。そして、私たちや、国連がイエメンやその他の国々への人道支援を要請していると、資金を得ることがより困難になっていることがわかります」

「これは共同の努力を通じて行われるべきであり、国連の取り組みに資金を提供すべきなのは、スウェーデンやヨーロッパ、北側諸国だけではないことは確かです。私たちは湾岸地域のパートナーと絶えず協議しています」

「湾岸諸国も国連の共同努力により多くの貢献をすべきであり、イエメンやすべての紛争に関する共同戦略を立てる上で、そのことがさらに重要な議題になるだろうと考えています」

「現在私たちが目にしているのは、湾岸諸国がしばしば(中略)独自の二国間ルートを通じた貢献を好むということです。そのことによって、私たちが協力して相乗効果を得られる多くの機会が損なわれていると、私たちは考えています」

非営利調査報道機関「ザ・インターセプト」のワシントン支局長ライアン・グリム氏は5月に発表した論説で、米国がイエメンの和平交渉を意図的に遅らせ、フーシ派に対するイエメン政府の交渉上の立場を有利にする目的で、事実上戦争再開を推し進めていると非難している。

グリム氏は論説で、「停戦は1年以上続いており、捕虜交換や外交協議におけるその他の前向きな表現を含め、和平交渉は本格的な勢いで進んでいる」と指摘している。

「それにもかかわらず、米国は戦争の終結を強く望んでいないようだ。米国の代理勢力は戦場で打ちのめされ、その結果、交渉で不利な立場に置かれている。米国の真意は、和平交渉を遅らせ、台無しにすることにあるようだ」

ジョー・バイデン米大統領が現在イエメン内戦を終わらせることができるか、また米国が紛争解決に十分な努力をしていると思うかとの質問に対し、センネビー氏は明確に「はい」とも「いいえ」とも答えることはなかった。

センネビー氏は米国政府の努力を擁護する一方、欧州とイランの間にある対話ルートがイエメンでの交渉促進に役立つ可能性があると付け加えた。

スウェーデンのイエメン特使ピーター・センネビー氏にインタビューする『フランクリー・スピーキング』の司会者ケイティ・ジェンセン氏。(提供写真)

「イエメン内戦に注目を集め、紛争解決の努力を支援するという点で、米国はこれまでかなりのことをしてきたと思います」とセンネビー氏は述べた。

「バイデン大統領が、2021年の就任からわずか数週間後に国務省で行った外交政策に関する最初の演説で、イエメンを言及したことを覚えていらっしゃるでしょうか」

「あの演説でイエメンはバイデン大統領が言及した2番目の国だったと思いますが、イエメンはサウジアラビアや他のパートナー諸国との協議において常に議題に上っています」

「もちろん、米国が他国と協力して対応することが重要です。私たちは米国とも非常に緊密に連携しています」

「米国はイランとの直接対話ルートを持っていません。他国はそれを持っています。したがって、米国だけで対応できるだろうと、もし米国が考えていたなら、それは正しくないと思います」

センネビー氏は、サウジアラビアがイランと正式に国交を回復したことは歓迎すべきニュースだが、それがイエメン情勢にどのような影響を与えるかについては国際社会は見守る必要があると述べた。

「サウジアラビアとイランの国交正常化への合意が発表された後、サウジアラビアとフーシ派はかなり広範な協議を行ってきているので、以前には存在しなかった可能性が開かれたことは明らかです」

「しかし、その協議の中で、実際に国連合意に達するために双方が十分に要望を調整したかどうかを判断するのは、まだ時期尚早だと私は考えています」

「フーシ派は依然として(中略)自分たちが達成したいことの100パーセントを主張しているようです。あるいは、要求をさらに強化して110パーセントを求めているかもしれません。もちろんそれではうまくいきません。最終的には妥協する必要があるでしょう」

イランは長年にわたり武装勢力「フーシ派」に武器を供与し、資金を提供してきた。正式には「アンサール・アッラー」と呼ばれるフーシ派は、2014年にイエメンの首都サヌアを制圧し、国連に認められたイエメン政府との間の長引く内戦の口火が切られた。

イエメンの複数都市で親政府軍と戦うために訓練を受ける新たに採用されたフーシ派の戦闘員。2017年1月3日撮影。(AFPファイル)

中国の仲介によるサウジアラビアとイランの国交回復の合意は、さらなる紛争の可能性を低下させ、イエメンにおける永続的な停戦の可能性を高める大きな突破口となった。

しかし、アナリストは、フーシ派が交渉に前向きかどうか、また、双方が妥協的な解決策を見出そうとするかどうかに大きく左右されると考えている。

センネビー氏は「私たちにはまだチャンスがあり、サウジアラビアとイランの国交回復合意でそのチャンスの扉はほんの少し大きく開かれました」と考える。

「したがって、より恒久的でより正式な監視下での停戦へ向けた交渉が行われることに少し希望を抱いています」

「希望はあると思います。私たちは1年半前よりも、サウジアラビアとイランの合意以前よりも良い状況にいます」

議論されている解決策の1つに、1918年からイエメンが単一共和国として統一される1990年までと同じように、イエメンを北部と南部の国に分割する案がある。

イエメンの近隣諸国の一部はイエメンが単一国家であり続けることを強く望んでいる一方で、他の国々は分割に魅力を感じているようだ。

分裂の可能性がどれくらいあるかとの質問に対し、センネビー氏は「厄介な」事態になる可能性はあるが、それはイエメン国民が決めることだと答えた。

2022年6月29日、イエメン南部の都市アデンに展開するイエメンの分離独立派「南部暫定評議会」所属の戦闘員。(AFPファイル写真)

「いかなる予測もしたくはありません。私が言えるのは、これはイエメン国民自身が決定しなければならない問題であり、包括的な政治プロセスの一環としてのみ行うことができるということです」

「そのプロセスで分割が導かれる可能性は十分にあり、その場合は世界はそれを尊重すべきです。とは言え、ほとんどの国がイエメンの統一を望んでいると私は考えていることも付け加えておきます」

「国の分割は、これまで実際に起こったことではありますが、常に困難で厄介な問題だと思います。しかし、最終的にはイエメン国民のためになるものでなければなりません」

「そして(中略)分割問題は二の次です。現時点ですべてのイエメン人が注目する必要がある第一の問題は、戦争を終わらせ、一つのテーブルを囲むか、または一つの部屋に集まり、イエメンが直面している非常に重要かつ困難な問題すべてについて話し合うことです」

イエメンを2つに分割することは、ハドラマウトのような県が独自国家を形成するために分離するなど、さらなる地域の分裂につながる危険性さえある。

「国の一部を分離し始めると、分離した地域の統治者を快く思わない人たちが必ず出てきます。したがって(中略)連鎖反応のリスクが常に存在します」とセンネビー氏は語った。

「現在、私たちはより緊急な問題に集中する必要があります。サウジアラビア政府やアラブ首長国連邦政府の意思決定担当者は、この点に同意していると思います」

「彼らの最大の関心事は、イエメンが安定すること、イエメンがもはや不安の種にならないこと、現在よりもはるかに多くの面で自活できるようになること、天然資源を輸出できるようになること、などです」

「このようなことに集中する必要があるのです。そして、サウジアラビア政府とアラブ首長国連邦政府は、イエメンにおけるこの最も重要かつ緊急な課題に同意していると確信しています」

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