Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter
  • Home
  • ビジネス
  • 積極姿勢で競争を優位に:サウジアラビア、大規模なガス資源開発へ

積極姿勢で競争を優位に:サウジアラビア、大規模なガス資源開発へ

広大なガワール油田近くの豊富なガス資源は、年間最大86億ドルを生み出す可能性がある。(提供写真)
広大なガワール油田近くの豊富なガス資源は、年間最大86億ドルを生み出す可能性がある。(提供写真)
Short Url:
23 Feb 2020 10:02:40 GMT9
23 Feb 2020 10:02:40 GMT9
  • サウジアラビアのエネルギー相、同国のガス輸出能力に言及
  • サウジアラムコは、サウジアラビア・ジャフラ地域の埋蔵ガスに1,100億ドルの投資を計画

ショーン・クローニン

サウジアラビアの石油は半世紀以上にわたり世界経済の文字通り潤滑油となってきたが、サウジアラビアのガス資源は見過ごされがちだ。しかし、サウジアラムコが、世界最大の従来型油田であるガワールの南東に位置するジャフラ油田での非在来型ガス資源の開発に1,100億ドルを投資することで、同国のガス資源も一躍脚光を浴びることとなった。

過去数週間にわたり、サウジアラビアのアブドルアジズ・ビン・サルマン・エネルギー相は国内エネルギー部門の大規模な改革を示唆している。改革にはガスが重要な役割を果たすものと思われる。

「もうすぐ、サウジアラビアのガス輸出能力について何らかの発表を行います」と、サルマン・エネルギー相は今週初めに語っている。

サウジアラムコは土曜日、ジャフラ油田は推定200兆立方フィート(約5兆6600億㎥)のガスを埋蔵し、2024年の早い時期に生産を開始、2036年までに一日当たりの産出量は約22億標準立方フィート(約6230万標準㎥)に達するだろうと述べた。また、エタンは一日当たりの産出量約4億2500万標準立方フィート(約1200万標準㎥)であり、加えて1日あたり550,000バレルの液体ガスおよび凝縮液の生産が見込まれているとのこと。

ジャフラ油田に関するこの計画は、サウジアラビア炭化水素委員会によって、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子が議長を務める会議で検討された。

ジャフラは、22年間にわたり年間86億ドルの歳入を生み出し、年間200億ドルの国内総生産に貢献する見込み。皇太子は、ジャフラで生産されるガスを国内産業向けに優先して振り向けるよう命じた。

今回の発見は、サウジアラビアとそのよりクリーンなエネルギーミックスへの道筋だけでなく、世界のガス市場 ― 東地中海地域での最近の発見の多くがエジプトからトルコに及ぶ地域の経済を急速に作り変え、激しい競争を引き起こしている ― にも影響を与えるものだ。

「サウジアラビアによる輸出の開始は、同国の従来型および非従来型のガス資源の規模を考えれば、2020年代の後半に世界の液化天然ガス(LNG)の市場バランスに大きな変化をもたらす可能性があります。」と、ロンドンに本拠を置くエナジー・アスペクツのジェームズ・ワデル・上級グローバルアナリストはアラブニュースに語った。

砂漠にそびえるパイプから燃え上がる炎のイメージは、人々が石油産業について語るときにしばしば思い浮かべるものだが、あの印象深く劇的な光景を生み出しているのは通常石油ではなく、実はガスなのである。

何十年もの間、主に埋蔵されている場所が良くないという理由で、ガスは石油産業の望まれざる副産物に過ぎないと見なされてきた。

遥か離れたヨーロッパ、アジア、北米の都市で需要が広がっていたが、パイプラインで実際にガスを送って利益を上げるには距離がありすぎた。そのため、ガスは送られる代わりに、掘削プロセス中に「フレアリング」として知られる方法で油井頭部で燃焼処理されていたた。

そうした状況が変わったのは、1976年にサウジアラビア基礎産業公社(Saudi Basic Industries Corporation)が王室の法令により設立された時だ。今ではSABICという略称もほとんどの人が知っているが、最初は人員6名で一部屋のオフィスを使っているだけだった。サウジアラビア政府は、公社設立の前から、最も優秀な新卒者を選抜し、産業化に必要なスキルを訓練し始めていた。

1973年のコロラド大学の化学工学科の卒業記録には、SABICのムハンマド・アル・マディCEOら、その後SABICやその他のサウジアラビアの石油化学会社で働くことになる、若いサウジアラビア人たちの名前を見ることができる。

政治的また経済的背景は、ガスがサウジアラビアの初期産業史の重要な一部になる要因であった。

サウジアラビア人の卒業生たちが最後にボルダーの雪に覆われたキャンパスを去った同じ1973年の秋、世界はアラブ・イスラエル戦争によって引き起こされた石油危機の真っ只中であった。

紛争中にイスラエルを支援したと見られる国に対するその後のOPEC主導の石油禁輸措置は、米国でガソリンの価格を急騰させ、すでにサウジ石油産業への長期投資家であったシェルなどの企業を困難な立場に置いた。

この緊張した状況に対して、当時のサウジアラビア政府は、同国の工業化を支援する企業にのみ石油を送りたいと明らかにした。その後、シェルはSABICの最初の大きな合弁パートナーの1つになり、現在の工業都市であるジュバイルに30億ドルの石油化学プラントを建設する。

この経緯は、ニューヨークタイムズでは1980年7月9日のビジネス欄の最後のページにほんの数段落伝えられただけだったが、サウジアラビアの歴史とSABICの世界的な資源産業関連会社としての成長におけるターニングポイントとなるものだった。

それから数年の間に、廃棄物が富を生み出すようになった。

サウジアラビアが石油を取引に使いながら石油化学、鉄鋼、肥料にまたがる多国籍企業の技術的専門知識を獲得する中、廃棄物はSABICのその後の目覚ましい成長の一種のテンプレートになっていった。

以来、SABICはサウジアラビアのガス資源の大規模な受益者となり、6名のスタッフによるリヤド事務所だけでの1976年の設立時から、世界で33,000人の従業員を雇用し、ジュバイルとヤンブーでは工業都市を建設しつつある、世界最大クラスの化学企業に成長してきた。

石油産業の廃棄物から石油化学原料へと発展を続け、サウジアラビアのガス関連産業は現在第

広大なガワール油田近くの豊富なガス資源は、年間最大86億ドルを生み出す可能性がある。(提供写真)

新しい章の筋書きと主な登場人物は部分的にしか明らかにされていないが、ガスが輸出品として、また国内の、より多くの太陽光と風力を含むクリーンなエネルギーミックスへの足がかりとなる電力源として、の2つの役割を果たす可能性が高い。

グローバルデータ(GlobalData)の電力アナリスト、ソマイェ・ダボーディ氏は、「ガスと再生可能エネルギーによる発電を通じて増大する国内電力需要に対応する計画がある一方、サウジアラビアには今後数年間で国内で消費しきれないほどのガスを生産する大きな潜在力があり、余剰分を輸出に回すことができるでしょう」と語る。

「サウジアラムコは、すでに多くのガス処理プロジェクトを完了しており、過去数十年間に国内の増大するガス需要にうまく対応してきています。同社は、数年のうちに既存のガスプラントの能力に1日あたり25億立方フィート(約7080万㎥)(bcfd)を追加します。それにより、国のガス処理能力は2022年までに18.9 bcfd(約5350万㎥/日)に増加することになります。」

サウジアラビアのガス処理能力の大幅な増加は、世界のガス市場における、それと類似した大きな変化と時を同じくしている。

エジプト、イスラエル、キプロス、トルコ、レバノンの各国がすべて最近発見されたガス埋蔵地の所有権を主張しているため、過去10年間の東地中海での大規模な新発見は、政治的緊張を高めることとなっている。

また、グローバルなガス産業において、これらの新しいプレイヤーの出現は、長い間欧州への主要サプライヤーであったロシアと世界最大のLNGのサプライヤーであるカタールの地位を脅かしている。

こうした経済的および政治的緊張が複雑に絡み合っていることから、一部のアナリストは、石油ではなくガスが次の大きな地域紛争の原因になると予測している。

そうした予測が現実となってしまうかどうかはともかく、石油から移行しようとする中東経済の代替エネルギー源として、石油化学原料として、そして中国やインドなどにおいてのますます望ましくない石炭火力発電の代替として、ガスの需要が高まっていることは確かだ。

2018年末の時点でサウジアラムコが保有する推定233.8兆立方フィート(約6兆6200億㎥)のガスに加えて、サウジアラビアは昨年、紅海で大量のガスを発見したことを発表した。このガス田の規模と重要性はまだ分かっていない。

パリに本拠を置くインターナショナル・エナジー・エージェンシー(International Energy Agency)は、最新のガス部門のレポートで、天然ガスの世界需要は、再び過去最高を記録したのに続いて、急速に経済成長するアジア諸国の消費に牽引されて、今後5年間成長を続けると述べている。

サウジアラビアのガス資源への投資は、2014年以降急激に低下した石油産業の収益への依存から脱却しようとする幅広い動きの一部だ。石油からの収益の低下は湾岸諸国の政府収入に大きく影響しており、製造コストの問題を含んだエネルギー部門の改革が、再び緊急の要件となっている(原油価格の下落傾向に対する抵抗力は国により異なる)。

「サウジアラビアの石油生産コストは世界最小レベルにあり、1バレル当たりオーダーで5米ドルです」とS&P グローバル・プラッツのシナリオプランニング分析の責任者であるダン・クライン氏は指摘する。「世界的な石油需要と価格が急激に低下するシナリオの下でも、サウジ石油産業は極めて高い収益性を保つでしょう。」

世界の石油消費の見通しは、米国のシェール産業の成長から燃焼エンジンの衰退、さらにはコロナウイルスの拡散に至るまであらゆる要素の影響を受け続けている。ガス資源へのサウジアラビアの投資は、世界経済における原油の将来的役割に関するこうした変動性と不確実性への自衛策を提供するものである。

ガスは、ほぼ半世紀前にサウジアラビアの工業化に貢献した。今、同国の経済発展の次の段階において、サウジ国内でも、また国際的文脈においても、ガスは再び重要な役割を果たすことになりそうだ。

特に人気
オススメ

return to top