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東京のシンクタンク、エネルギーの将来に関する2つのシナリオを発表

05 Nov 2019 07:11:35 GMT9

 カルドン・アザリ 東京

日本エネルギー経済研究所 (IEEJ) は年次レポートにおいて将来の世界のエネルギー消費について2つの大きく異なるシナリオを提示した。いずれのシナリオも世界のエネルギー市場はアジアにシフトすると予測しているが、特に環境に関する見通しは楽観できないとしている。

東京に本拠を置くシンクタンク、日本エネルギー経済研究所は10月15日、エネルギーに関する長期的趨勢と関連政策メッセージを詳細に分析した「IEEJ Outlook 2020」を発表した。同研究所のチーフエコノミスト兼常務理事小山堅氏がこのレポートの要点をまとめている。

第一のシナリオは現状の趨勢が2050年まで続くとする「レファレンスシナリオ」である。このシナリオは世界の一次エネルギー消費量は34%増加し、増分の半分以上がアジア地域によるものだと予測、エネルギー消費構造の中心は引き続き化石燃料であろうと見る。

小山氏は「世界のエネルギー消費にアジアが占める割合は41%から46%に拡大、世界のエネルギー市場の重心はアジアにシフトするでしょう」と述べる。

レファレンスシナリオでは、石炭消費はピークを打つが、天然ガスと石油の消費は堅調に伸びると予測されている。再生エネルギーの消費も引き続き増加するが、エネルギー由来CO2排出量は2017年の330億トンから2050年には410億トンになると見られている。

第2のシナリオは「技術進展シナリオ」である。こちらでは第1のシナリオとは対照的にエネルギー消費効率が大幅に向上すると予測され、一次エネルギー消費量は第1シナリオのそれを15%下回るとされている。

技術進展シナリオでは再生可能エネルギー、原子力エネルギーの消費量が増え、石炭消費は大幅に減少し、石油消費もピークを打つと予測されている。天然ガスは消費増加が続くが、第1シナリオに比較すると増加率は小さい。結果としてCO2排出量は2050年までに250億トンまで減ると見られている。

ただCO2排出量がここまで減少したとしても地球気温上昇を2℃以下に抑えるために必要であるとしばしば言われる目標値には及ばない。

小山氏は、今後のエネルギー関連課題であるエネルギー安全保障、環境保護、経済成長 (3E) は、すなわち「エネルギートリレンマ」であると語る。1つを追求すると多くの場合他の1つまたは2つが犠牲になるため、政策決定が複雑化する。

小山氏は、2つのシナリオ間で程度の差こそあれ、3つのエネルギー関連課題の相克はこれまで以上に重要な問題となり、エネルギー消費の拡大と共により複雑かつ深刻なものとなっていくだろうと述べる。

エネルギートリレンマの問題は中国、インド、東南アジア地域の新興国におけるエネルギー消費拡大によって、特にアジアで深刻になると小山氏は強調している。

小山氏によると、アジアにおけるエネルギートリレンマ対策で注目されるのが、運搬しやすい液化天然ガスを含む天然ガスである。天然ガスの利用は中東依存度引き下げにつながり、また石炭に比べ環境にも優しい。ただ、アジアの新興国がどの程度天然ガスに頼れるかは価格に大きく左右されるだろう。

「今のところ完璧なエネルギー源はないので、各エネルギー源の弱点克服を図りつつ、ベストなエネルギーミックスを追求することが不可欠です」と小山氏は述べる。

レポートでは温室効果ガス排出抑制のコスト削減への取り組みの必要性が示され、また超長期的に地球気温上昇を2℃以下に抑えつつエネルギーコストを最小化するにはどのような方途が考えられるかも考察されている。

ただし、気候変動という事象は臨界点を超えて進行すると不可逆的かつきわめて深刻な損害につながるものであるため、気候変動がもたらす損害コストの予測は困難であったとレポートには述べられている。IEEJはこの点に関する研究をさらに積み重ねていく予定である。

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