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サウジアラビアの戦略は、同国を鉱業の一大拠点に成長させると専門家が語る

画像:シャッターストック
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07 Feb 2022 01:02:07 GMT9
07 Feb 2022 01:02:07 GMT9
  • 「サウジには3兆ドル以上の鉱物が眠っており、鉱物企業にとっては大きなチャンスとなる」

ジョージ・チャールズ・ダーレイ

リヤド:サウジアラビアは長い間、石油を中心とした炭素経済の主要な担い手としての役割を果たしてきた。しかし現在では、鉱物や金属の発掘・採取に戦略的にシフトしていることが評価されている。

サウジアラビアの新しい鉱業戦略の意味を議論するためのオンラインメディアセッションでは、世界の産業界のリーダーや専門家の弁護士が、より持続可能な世界経済における、サウジアラビアに期待される役割について、誰もが肯定的な見解を示した。

このセッションは、サウジアラビアが2020年に制定した鉱業法や、最近では1月11日から13日までリヤドで開催された政財界のリーダーが集う「未来鉱物フォーラム(FMF)」を踏まえて行われた。

天然資源法やESGと呼ばれる「環境・社会・ガバナンス」のフレームワークを専門とする南アフリカの弁護士、エルンスト・ミュラー氏は、「現在、世界的に新しいエネルギー源への移行が進んでいます」と指摘し、「FMFでは、各国が何をすべきか、鉱業会社がこの移行の中でどのような役割を果たすべきかに焦点が当てられました」と議論を始めた。

ヨハネスブルグを拠点とする法律事務所、ハーバート・スミス・フリーヒルズのパートナーで、サウジアラビアの産業・鉱物資源省(MIMR)の新鉱業法の起草にもアドバイスを提供したピーター・レオン氏は、この移行は「世界の鉱業に大きな影響を与えるでしょう」と述べた。

ピーター・レオン氏

「風力発電、太陽光発電、電気自動車など、すべての新技術には、リチウム、コバルト、レアアースなどの特殊な鉱物が必要になります。そして王国は、これらの鉱物を含めた、多くの鉱物に恵まれています」

「世界銀行の報告によると、今後のエネルギー源の移行期には300万トン以上の鉱物や金属が必要になると言われています。これは、鉱物の需要が500%増加することを意味しています。しかし、それは同時に巨大な供給ギャップの発生を意味します」

「王国には3兆ドル以上の鉱物資源が眠っており、これは鉱物企業にとっては莫大なチャンスとなります」

ミュラー氏は、世界的な脱炭素化の動きを「3本足のテーブル」と表現した。一つは持続可能性への移行を望む声、第二に、そのプロセスに必要な鉱物、そして3つ目は、投資を促す環境となる。

風力発電、太陽光発電、電気自動車など、すべての新技術には、リチウム、コバルト、レアアースなどの特殊な鉱物が必要になる。そして王国は、これらの鉱物を含めた多くの鉱物に恵まれている

ヨハネスブルグを拠点とする法律事務所、ハーバート・スミス・フリーヒルズのパートナー、ピーター・レオン氏

最適なタイミング開催されたFMF

FMFのプログラムディレクターであり、コーポレート・アフェアーズやレピュテーション・マネジメントのコンサルタントでもあるアルド・ペンニーニ氏は、政府と鉱山会社の双方が、鉱物産業を再構築する必要があると述べている。「行動を起こしたいという要求が集まっています。この対話には歴史的な意味があるのです」

レオン弁護士は、「このセッションを実現させた王国は賞賛されるべきです。FMFは、鉱業の世界的な未来について話し合う重要な協議の場となりました。これは単なるビジネスの話ではありません。もっと大きな視野にもとづいた対話なのです」

「私が得たものは2つあります。1つ目は、集団的な行動の必要性、2つ目は、サウジアラビアが中東だけでなく、アフリカの地域的な鉱業ハブになり得るということです」。

ボツワナを拠点とする鉱山コンサルタントで、デビアス・ボツワナのCEOや世界銀行、アフリカ開発銀行の政策アドバイザーを務めたシーラ・カーマ氏はこう述べた。「投資を呼び込み、維持することは政府に課せられた責務であり、それは企業や投資家に語りかけるような規制の枠組みを確保することを意味します。そしてサウジの新鉱物法は、この点で順調に進んでいます」

鉱業の課題

一方で、カーマ氏は「鉱業界はコミュニケーションを強化する必要があります」と言う。「脱炭素社会に向けた鉱物の貢献度と、一般の人々の考え方には乖離があります。脱炭素社会を実現するためには、膨大な量の鉱物が必要です。リサイクルだけでは足りません。これらの事実を一般の人々に伝える必要があるのです」

西オーストラリアを拠点とする鉱山会社EVメタルズ・グループ社のマネージングディレクター兼CEOであるマイケル・ネイラー氏は、「EVとバッテリーの生産には世界で1兆ドルが投資されていますが、これらのギガ規模の工場に鉱物を供給するという点においては、空白が存在します」

「これらの成長計画を支えるには、単に供給が不足しているのです。そして、このエネルギー源移行に失敗は許されないのです」

課題をチャンスに変える

ペンニーニ氏は、この問題がサウジアラビアとそのパートナー諸国にとって長期的なチャンスになると考えている。「世界銀行の推計によると、鉱山開発投資の75%はわずか10カ国にしか行われておらず、その中に湾岸諸国は含まれていません。では、何が必要なのでしょうか?」

レオン氏は、この点に関して王国は2つの具体的なステップを踏んだとコメントした。1つ目は、サウジ地質調査所に2億5千万ドルを投じ、80年分の地質情報を蓄積した地質データベースを構築し、サウジ全土の新規鉱物資源を特定したこと。そして2つ目は、新鉱業法の施行である。

サウジアラビアの鉱業法

後者についてレオン氏は、「鉱業界は、規制の確実性、強力な法整備、シンプルなオンライン申請システムを必要としています」と述べている。

「新法を起草するにあたり、私たちはMIMRから、法的な明確さ、環境への責任、健康と安全の問題、効果的な紛争解決、公正なライセンス制度に関する世界的なベストプラクティスに従うことを要請されました。そして私たちのガイドラインは、そのすべてを実現しています」

「新法は、鉱山労働者に確実な在職権を与え、シンプルな申請プロセスと、競争力のある申請期間を提供しています」

環境・社会問題に関して、レオン氏は、「採掘ライセンスを取得するには、ESG(環境・社会・ガバナンス)に関する計画を持つ必要があります」と述べている。

EVとバッテリーの生産には世界で1兆ドルが投資されているが、これらのギガ規模の工場に鉱物を供給するという点においては、空白が存在する

西オーストラリアを拠点とする鉱山会社EVメタルズ・グループ社のマネージングディレクター兼CEOであるマイケル・ネイラー氏

紛争解決に関して、レオン氏は「その点においてサウジアラビアの新しい法律は、先進的な鉱業地域が採用している、今までの基準であった、1977年に制定された西オーストラリア州鉱業法を超えています」と指摘する。新法では、鉱山会社は産業・鉱物資源省大臣の事前の同意を得て、王国に仲裁を訴えることが可能になる。

「さらに、サウジアラビアは、日本、韓国、中国、ヨーロッパ諸国など多数の国との二国間条約を批准しており、鉱山会社とサウジアラビア政府の間で紛争が発生した場合、自動的に国際仲裁に訴えかけることが可能です」

また、ライセンス制度については、「産業・鉱物資源省は、定められた期限内にライセンスを発行する義務を法的に負っています。西オーストラリア州では、採掘申請の処理に6ヶ月を要しますが、サウジアラビアでは90日で処理されます。このプロセスは信頼性と透明性があります」

「この新しい法律は、王国の鉱業部門の発展を加速させるでしょう」とレオン氏は言う。「そして、このことは、国際的な投資家に伝える必要があるでしょう」

サウジアラビアは他国にないものを提供する

講演者たちは、地政学的な要因を考慮すると、サウジアラビアは鉱物供給国として特に有利な立場にあるということに同意している。

「鉱物の多くは『難しい国』に存在します。とレオン氏は述べる。「これらの国は、深刻な法治問題を抱えた厳しい環境であることが多いのです」

「また、リマ、ペルー、チリでは左派の大統領が誕生したため、これらの国の新しい鉱業法に関しては先行きが不透明な状態です」

投資を呼び込み、維持することは政府に課せられた責務であり、それは企業や投資家に語りかけるような規制の枠組みを確保することを意味する。そしてサウジの新鉱物法は、この点で順調に進んでいる

ボツワナを拠点とする鉱山コンサルタントで、デビアス・ボツワナのCEOを務めたシーラ・カーマ氏

ペンニーニ氏は、「発展途上国では、新鉱物の探査がほとんど行われてません」と付け加えた。

ネイラー氏は、「世界はより多くのリチウムを必要としていますが、より多くの『リチウム鉱山』は必要としていません」と指摘した。そのことは、EUの多くの国で鉱業に対する市民の抵抗があることからも明らかである。

レオン氏は、「サウジアラビアの法人税率は利益の20%と、2.5%のザカート(救貧税)のみです」と、世界的に見ても比較的低い税率であることを指摘した。

これらの点から、参加者は「サウジアラビアは正しいことを行い、正しい投資をしており、鉱業の将来に向けて有利な立場にある」と同意した。

「移行プロセスは信頼性と透明性が高く、合理的な時間枠があることが重要です」。ネイラー氏は、こう締めくくった。「王国は、鉱業分野でリーダーシップを発揮しています。ぜひ、今後もこのような会議を続けてください。サウジアラビアの鉱業・産業大臣に拍手を送ります」

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