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中国外相の長引く不在に深まる疑念

中国外相の長引く不在に深まる疑念。(AFP)
中国外相の長引く不在に深まる疑念。(AFP)
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22 Jul 2023 02:07:19 GMT9
22 Jul 2023 02:07:19 GMT9

北京 / ジャカルタ:今月の外相会議の数日前、中国政府は主催国インドネシアに、「予期しない事態」が発生したため代表を交代すると伝え、インドネシア側は出席者に贈る伝統的なシャツのサイズ変更に大わらわとなった。

色彩豊かなバティック染めのシャツの受け取り手は中国の秦剛外相のはずだった。秦外相は既に1ヶ月近く目撃されておらず、来週南アフリカで開催される別の重要な会合も欠席の見通しである。

中国政府は秦外相は健康上の理由で休養中だと述べているが詳細は明らかにされていない。こうしたコメントも他の発言も公式記録から削除され、国営メディアも報じていない事から、指導者層の私生活については不透明なことで知られる中国では憶測が渦を巻いている。

新型コロナ禍による数年に及ぶ孤立を経て世界に再び関与する事を中国が模索しているこの時期、秦外相に関する情報の空白により、一部の外交官や観測筋は中国の秘密主義的な意思決定に対する疑念を深めつつあある。

「秦外相が姿を消したことは、中国政府の意思決定の一貫性や安定性、信頼性に多大な不安と混乱を投げかけています」と、ワンシントンのスティムソン・センターの中国プログラムの責任者を務めるヤン・サン氏は語った。

「国家の副リーダー級の人物が大した説明も無く簡単に姿を消してしまい得るとしたら、中国指導者や幹部、また、そうした人々の地位を信頼し当てにすることは困難になります」

木曜日の中国外交部の定例記者会見で、秦外相の状況と職務復帰の時期を問われた毛寧報道官は、「あなたの質問にお答えできる情報はありません」と答えた。

中国政府は、7月19日水曜日、王毅氏(秦外相よりも小柄な前任者で、急遽サイズ調整されたシャツをジャカルタで着用することになった)が7月24日から25日にヨハネスブルグで開催されるBRICS会議においても中国代表の代役を務めると発表した。

外交日程に詳しい関係者が匿名を条件にロイター通信に詳細を明かしたところによると、秦外相が外交シーンから姿を消したことは、ジャカルタでの欠席に留まらず、他の予定に関連した日程調整の問題を生じさせているという。

英国は、混乱した関係の修復のために重要とみられている同国外相の訪中日程を(今月中にもとされていたにも関わらず)確定できずにいると、その外交日程に詳しい関係者はロイター通信に語った。

一方、直前になって見送られた、EUのトップ外交官であるジョセップ・ボレル氏の今月の中国訪問は、秋までは実現しない見込みであるとEU高官が述べた。

ボレル氏が当初の予定通り秦外相と会合を行うのかどうかすらも定かではないとそのEU高官は語った。

長引く不在は、「中国とのコミュニケーション手段を構築しようとしている諸国に混乱を与えることになります」と、オーストラリア国立大学の政治学者であるウェンティ・ソン氏は語った。

「予測可能性や透明性は、対話の恒常化と信頼の醸成に不可欠です。いずれもが協力を継続するにあたって重要なのです」

期待の星

秦外相は、中国政界の期待の星だった。習近平国家主席の元側近だった秦剛氏は、駐米大使を2年弱務め、その後、2022年12月に外相に任命された。

外相就任以来、秦氏は困難な米中関係の舵取りで重要な役割を果たし、6月には中国初訪問のアントニー・ブリンケン米国国務長官と北京で会談した。米外交トップによる5年ぶりの中国訪問だった。

しかし、6月25日のロシア、スリランカ、ベトナムの政府高官との会談が、秦外相が公式の場に姿を現した最後となった。

その後、秦外相は姿を消してしまったのだ。

中国外交部は、7月11日に秦外相の健康問題について短いコメントを発表した以外は、一切の情報提供を拒否し、日々の定例会見においても記者の質問を拒絶し、当初の健康状態に関するコメントを含む、関連した質疑応答のすべてを公式記録から削除してしまっている。

WeChat上で共有された秦外相に言及した記事へのコメントは無効化され、また、ロイター通信が検索した限りでは、国営メディアは最近は秦外相への言及を全く行っていない。

しかし、人々の関心は高まるばかりだ。

百度(バイドゥ)検索エンジンのデータが示すところでは、「秦剛」の検索数はこの1週間で28倍増加し1日38万件以上になっている。

秦外相の不在は外交官らの間でも議論を呼んでおり、中国の透明性の欠如の新たな例だとの指摘もある。

中国が国家安全保障を大掛かりに推進している最近数か月間、学術誌や企業登録、経済指標といった情報源へのアクセスが制限されており、国外の政府や投資家は不安を感じている。

外交官の一部は、秦外相の後任人事についての憶測を開始している。そうした外交官らの内3人は、馬朝旭外交部副部長が候補者となる見込みがあるとロイター通信に語った。

ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで修士号を取得し、国連大使の経験もある59歳の馬副部長は、秦外相や王毅氏のような「戦狼外交」を旨とする人物とは見做されていない。

現時点では、即座に状況が明瞭になる兆しはほとんどない。

秦外相の後任となった謝鋒駐米大使は、7月19日水曜日、アスペン安全保障会議の司会者から秦外相がどこにいるのかについて尋ねられた。

「それについては、外交部の報道官がメディアに説明してくれています。お気遣い、有難うございます」と、謝大使は答え、聴衆と共に含み笑いをした。

ロイター

 

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