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ガザ地下にあるハマスのトンネル都市 – イスラエルの見えない最前線

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28 Oct 2023 01:10:36 GMT9
28 Oct 2023 01:10:36 GMT9
  • ハマスには攻撃、密輸、貯蔵のためのトンネルがあり、それは数百キロにわたって伸びている。
  • 人質はそのネットワークを「蜘蛛の巣」のようだと表現した。

エルサレム/ロンドン:安全保障筋によれば、ガザでイスラエルの地上部隊を待ち構えているのは、長さ数百キロ、深さ80メートルにも及ぶハマスのトンネル網だという。解放された人質の一人はこれを「蜘蛛の巣」、ある専門家は「ベトコンの10倍」の規模だと表現している。

パレスチナのイスラム主義グループは、攻撃用、密輸用、貯蔵用、そして作戦用など、さまざまな種類のトンネルを360平方キロメートルの砂の海岸地帯とその境界エリアの地下に走らせていると、この問題に詳しい欧米や中東の情報筋は語っている。

米国は、イスラエルの特殊部隊はハマスの武装勢力と戦いながら、地下に拘束されている人質の殺害を避けなければならないという前代未聞の難題に直面するだろうと考えている、と米国政府高官は語った。

ロイド・オースティン米国防長官は、イラクにおける、ダーイシュからモスル市を奪還するための9カ月に及ぶ戦いは、イスラエル軍を待ち受ける多くのIED(即席爆発装置)、多くのブービートラップ、そして周到に準備された攻撃と比較して、容易であったことが証明されるかもしれないと指摘した。

「鉄の壁」と呼ばれるセンサー付きの地下防壁などを含め、イスラエルはトンネルの探知に多大な投資をしてきたとはいえ、ハマスは外界に通じる利用可能なトンネルを持っていると考えられている。

2021年の最後の敵対行為の後、ガザにおけるハマスのリーダー、イェヤ・アル・シンワー氏はこう語った。「彼らは100キロメートルのハマスのトンネルを破壊したと言い始めた。言っておくが、ガザ地区にあるトンネルは500キロメートルを超えている。彼らの話が本当だとしても、彼らはトンネルの20パーセントしか破壊していない」

人質は目撃した

予想されているイスラエルの地上攻勢を前に、地下に潜伏していると思われるシンワー氏のコメントに裏付けはない。

しかし、封鎖されたガザ沿岸部の長さは40キロメートルしかないにもかかわらず、トンネルの総距離数百キロメートルという推定は、安全保障アナリストの間で広く受け入れられている。

ガザの空路と海路、そして72キロメートルの陸地境界線のうち59キロメートルをイスラエルが完全に掌握し、南の13キロメートルはエジプトに接しているため、トンネルはハマスが武器や機材、人を運び込む数少ない方法のひとつとなっている。

ハマスと他のパレスチナ人グループはこの地下ネットワークについて秘密主義を貫いているが、最近解放されたイスラエル人の人質、85歳のヨシェベド・リフシッツさんはこう語っている。「そこはまるで蜘蛛の巣のようで、たくさんのトンネルがあった。私たちは地下を何キロも歩いた」

ハマスは、圧倒的な航空戦力と装甲戦力をもつイスラエルに対し、ハマス戦闘員たちが熟知した狭い地下空間での移動を強いるトンネル網は、その優位性を少しでも削ぐ方法だと考えている。

イスラエル軍の報道官は26日、次のように述べた。「トンネルの距離については詳しく述べないが、学校や住宅地の下に作られたトンネルの数は多い」

パレスチナのマフムード・アッバース大統領は、国連安全保障理事会に介入を求め、ガザへの「侵略」の即時停止と、「軍事的・安全保障的解決策ではなく、政治的解決策」への移行を求めている。

地下都市

イスラエルの安全保障筋によれば、イスラエルの激しい空爆はトンネルのインフラにはほとんど損害を与えておらず、ハマスの海軍司令部は今週、ガザ近郊の沿岸地域コミュニティを標的とした海上攻撃を開始したという。

「我々は何日も大規模な攻撃を続けているが、ハマスの指導部はほとんど無傷であり、指揮統制能力も、反撃を試みる能力も依然として保たれている」と、元准将のアミール・アヴィヴィ氏は言う。イスラエル軍の要職を歴任した同氏は、ガザ師団の副司令官を務め、トンネル対策に当たっていた。

「ガザの地下には、深さ40~50メートルの街がある。そこには地下壕や司令部、倉庫があり、もちろんそれらは1000箇所以上のロケット発射地点につながっている」

他の情報筋は、深さは最長で80メートルと推定している。

ある西側安全保障筋は言う。「トンネルは何マイルも続いている。コンクリート製で非常によくできている。ベトコンのトンネルを10倍の規模にしたようなものだ。彼らには何年もの歳月があり、たくさんの資金がある」

イスラエルの近隣諸国の別の安全保障情報筋によれば、エジプトとつながるハマスのトンネルはまだ現役だという。

「最近でも補給路はそのまま維持されている。これを運用するネットワークに関与しているのは、エジプト軍の一部の将校たちだ。エジプト軍がこのことを把握しているかどうかは不明だ」と彼は語った。

エジプトとガザの間には、最近まで狭くて深い密輸用のトンネルが少数存在していたと、2人の安全保障関係者とエジプトのエル・アリッシュ市の貿易商が指摘しているが、イスラエルとハマスの戦争が始まってからは、ほぼ完全に停止状態になっているという。

エジプト政府関係者にコメントを求めたが、すぐには返答しなかった。エジプトのアブドゥルファッターハ・エルシーシ大統領は25日、スエズで軍の部隊を視察しながら、軍の役割はエジプトの国境を守ることだと述べた。

長期戦

ハマスがガザで創設されたのは1987年で、イスラエルがヤーセル・アラファト議長率いるパレスチナ解放機構(PLO)に、ガザにおけるある程度の自治権を認めた1990年代半ばにはトンネルを掘り始めたと考えられている。

トンネル網は、イスラエルの入植地、軍事基地、監視装置によって、ヨルダンからの物資や人員の入手が困難なイスラエル占領下のヨルダン川西岸地区と比べて、ガザ地区でハマスがより強力な存在感を示している理由の一つである。

2005年、イスラエルがガザから兵士と入植者を撤退させ、2006年の選挙でハマスが政権を獲得すると、トンネル掘りは容易になった。

それから時を置かず、ハマスの軍事組織である「エゼディン・アル・カッサム旅団」は、ガザ国境のケレム・シャローム基地を急襲するために地下を600メートル進み、国防軍の若き兵士ギルアド・シャリート氏を拉致、他のイスラエル兵2人を殺害した。

その1年後、ハマスがガザのトンネルを利用して、アラファト議長の後継者であるPLO指導者マフムード・アッバース議長の軍に対する軍事攻撃を開始した。

軍事用トンネルは外部の目に触れることはなかったが、その時代、ガザの密輸業者たちは、ラファ境界エリアの下にある商業用トンネルをほとんど隠すことなく利用していた。

これらのトンネルの幅は1メートルほどで、空になったガソリンバレル缶を使って、砂地のトンネルの床に沿って商品を運ぶウィンチモーターを備えている。

ラファ・トンネルのオペレーターの一人、アブ・クサイ氏によれば、約800メートルのトンネルを掘るのに3カ月から6カ月かかり、その運用では1日に10万ドルもの利益が得られるという。最も儲かるのは弾丸で、エジプトでは1発1ドルで購入できるが、ガザでは6ドル以上の値がつくという。カラシニコフ・ライフルはエジプトでは800ドルだが、ガザではその倍で売れたという。

ハマスの軍事部門は2007年に、モハメド・デイフ司令官をエジプトからトンネルを通してガザに連れてきたと考えられている。デイフ司令官は、1400人が死亡し、人質も取られたハマスの10月7日のイスラエルへの攻撃の首謀者だった。

トンネル・ハンティング

イスラエルのバル=イラン大学の地形・地質学者のジョエル・ロスキン教授は、地表や宇宙からトンネル網を正確にマッピングするのは難しいと述べ、3Dマッピングや画像の視覚化には高度に機密化された情報が不可欠だと付け加えた。

地下に潜ることを任務とするエリート部隊の中には、「ウィーゼル(イタチ)」として知られるイスラエルの戦闘技術部隊の専門部隊「ヤハロム」がおり、彼らはトンネルの発見、除去、破壊を専門としている。

今週初め、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はヤハロムの戦闘員たちの元へ訪れ、こう語った。「私はあなた方を頼りにしている、イスラエル国民はあなた方を頼りにしている」

イスラエルの情報筋によると、ヤハロムを待ち受けているのは、2014年と2021年にイスラエルが行った過去の作戦から学び、自らを再構築している手強い敵だという。

「ブービートラップがたくさん仕掛けられている。彼らは2021年にはなかったサーモバリック(燃料気化)兵器を持っている。そして、彼らは我々のAPC(装甲兵員輸送車)や戦車を攻撃可能な、多くの対戦車兵器システムを入手したと考えられる」と、元准将で元国防軍戦闘情報収集科司令官のアムノン・ソフリン氏は語った。

イスラエルのスパイ機関モサドの情報局長だったこともあるソフリン氏は、ハマスは兵士も拉致しようとしているだろうと述べた。

イスラエルのライヒマン大学教授で『Underground Warfare(地下戦争)』の著者であるダフネ・リッチモンドバラク氏は、シリアとイラクにおける紛争が状況を変えたと述べた。

「イスラエル国防軍がトンネル内で直面する可能性があるのは、ダーイシュのようなグループが得た経験や知識だ。それらはハマスにも伝わっている」

ロイター

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