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フランス委任統治を再び求める請願書がレバノンについて語ること

ゴイベット将軍を伴ったグロー将軍が二列の隊列を組んだ歩兵の前を通過する。1920年ベイルート(Alamy)
ゴイベット将軍を伴ったグロー将軍が二列の隊列を組んだ歩兵の前を通過する。1920年ベイルート(Alamy)
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01 Sep 2020 08:09:37 GMT9
01 Sep 2020 08:09:37 GMT9
  • フランスの保護下に置かれることを要求する文書に6万人以上が署名
  • 署名運動はフランスのエマニュエル・マクロン大統領が8月6日にベイルートを訪問した際に開始した

Tarek Ali Ahmad

ロンドン:国際連盟が1920年8月31日、フランスの委任統治下に大レバノン国の創設を布告した時、アラブの人々はオスマン帝国の支配下での長年の絶望、少なくとも20万人の死者を出した飢饉(ききん)、そして第一次世界大戦の余波に悩まされていた。

大レバノン国宣言から1世紀を経て、フランス委任統治(当初はシリアとレバノンの委任統治と呼ばれていた)の10年間の再実施を求める請願書が6万人以上の署名を集めている。

署名運動はマクロン仏大統領が8月6日にベイルートを訪問した頃に始まった。マクロン氏のベイルート訪問は、数年前から港の倉庫に無造作に保管されていた硝酸アンモニウム2,750トンが爆発し、市内の大部分が被害を受けた2日後だった。爆発で少なくとも181人が死亡し、6000人以上が負傷し、推定30万人が家を失った。

ほとんどの市民は、政府の怠慢とはびこる汚職が災害の原因だという。災害は前例のない金融危機と致命的なコロナウイルスのパンデミックのさなかに起こった。多くのレバノン人が政府への信頼を完全に失ったのは不思議なことではない。

「悲しいことに、レバノンは今の政府のあり方では、これ以上独立した国として運営することはできないということを実感しました」と、医師で研究者のマリタ・ヤギー(Marita Yaghi)さん(25)は述べた。ヤギーさんは「能力がないからでもなく、人がいないからでもなく、すでに政府にいる人たちが自らの立場にしがみついているからです。」

「委任統治は10年間で終わり、1000%一時的で、独立したレバノン人による政府への移行を支援するためだけに存在するでしょう」と続けた。

ベイルートのセント・ジョセフ大学で法律を学ぶAdam Ouaydaさん(22歳)は「レバノンへの経済的な依存や支配の形を作らずに、レバノンがより近代的な国家へと移行するための本質的な改革を導くという目的であれば、私はそれを支持したいと思うでしょう」と話した。

Ouaydaさんは「そのような仮想的な取り決めが、レバノンを搾取する戦略的または軍事的な目的であれば、私は反対するでしょう」と付け加えた。

レバノンの若い世代の多くは、政治的エリートが権力の恩恵に断固としてしがみついていることについてヤギー氏に同意しているが、すべての人がこの問題の解決策が一時的なフランスの委任統治であると信じているわけではない。

 レバノンの統治方法を政治的にも経済的にも完全に見直す時が来ている

カリム・エミール・ビタール セント・ジョセフ大学政治学研究所所長

25歳の医師、サラ・アビ・ラード(Sara Abi Raad)さんは「21世紀では植民地化を有効な選択肢として考えるべきではないと思います。なぜなら、植民地化で国は多くの自由を失います。結局の所、委任統治は形を変えた植民地化です」と述べた。

ジェフリー・シャルーブ(Jeffrey Chalhoub)さん(22歳)も同意見だ。「フランスの委任統治はレバノンの危機を必ずしも改善するものではなく、外部の影響を受けずに自ら統治・発展することをより難しくさせるでしょう」と述べた。

レバノンの学生や若者は、昨年10月17日に始まった全国規模の抗議活動の中心的な役割をはたしており、宗派主義や汚職に終止符を打つことを求めている。

何十年にもわたる政府の失政と怠慢により、レバノンは通貨価値の約80%を失う結果となった。国連世界食糧計画の調査によると、質問に答えたレバノン人の約半数が「食べるものが足りなくなることを心配している」と回答している。

セント・ジョセフ大学政治学研究所所長のカリム・エミール・ビタール氏は「この請願書は絶望の表れにすぎないと思います。レバノンの人々は、現在の政治システムとその支配者であるエリートたちに絶望し、大変な憤りを感じています」と言う。

ビタール氏は「人々は、過去30年間自分たちを支配してきたマフィアに辟易しているので、このアイデア(率直に言って、まったく馬鹿げていて非現実的なものですが)が浮かんできて、署名が集まり始めたのです」と続けた。

8月4日の爆発とその余波は、全国の市民社会グループに警鐘を鳴らした、と同氏は付け加えた。

「政治家と支配階級は、前回の(マクロン氏の)訪問以来、完全に満足して何の行動も起こしていませんが、まるでマクロン氏の訪問がなかったかのように、新政府の樹立にはまったく進展がありません。対照的に、市民社会グループは非常に積極的に行動を起こそうとしています。彼らは広い連携を作ろうとしています」と、2017年にレバノンの政治改革を提唱する市民団体「クルナ・イラーダ(Kulluna Irada)」を共同設立したビタール氏は語った。

しかし、支配階級のエリートの権力掌握に切り込むための共同戦線という目標は、異なる派閥や市民社会グループが、社会・経済問題、早期の議会選挙、ヒズボラの武装解除など、いくつかの点で合意や妥協を拒んでいるため、なかなかつかみどころがないことが判明している。

「現在の共通の要求は、ほとんどの反体制グループが合意した要求で、立法権を持つ臨時政府の樹立です」とビタール氏は述べた。同氏は「これはレバノンにとって新しいことではありません。1950年代から1980年代の間に、レバノンには立法権を持つ政府が7つあり、現在、多くの人々は、ハッサン・ディアブ政権の時のように、政党が政府の行動をコントロールし続けることを防ぐために、立法権を持つ政府が絶対に必要であると感じています」と続けた。

ディアブ内閣はベイルートでの爆発事故から1週間も経たないうちに総辞職したが、現在も暫定政権として留まっている。ミシェル・オウン大統領は木曜日、来週のマクロン大統領の再訪に向けて、月曜日に拘束力のある協議を行い、新しい首相を決定すると発表した。

アナリストは、この時間ぎりぎりの行動が真の変化をもたらす可能性は低く、政府にとってはいままでと同じ事になると考えている。サード・ハリリ内閣が10月の抗議活動開始から3週間後に辞職し、ヒズボラの支援を受けたディアブ政権に交代した時もそうだった。

「現在、レバノンの統治システム全体の総点検が必要です」とビタール氏は言う。同氏は「急進的な変化を求めるレバノン人の新世代があり、レバノンの統治方法を政治的にも経済的にも完全に見直す時が来ています」と続けた。

Twitter: @Tarek_AliAhmad

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