アラブニュース

• ビュレント・シク氏は、トルコ西部における毒性汚染と癌の高発生率との関係についての機密扱いの調査研究結果を公表したとして告訴されていた。
• 調査結果は野党の日刊紙ジュムフリエットに発表され、トルコの公衆衛生および毒性汚染レベルと癌発生率の関連についての広範な論議を巻き起こした。

アンカラ：イスタンブールの裁判所は、トルコの学者で人権活動家のビュレント・シク（Bulent Şik）氏に対し、「機密情報漏洩」の罪に関して無罪の判決を言い渡した。.

アンタルヤのアクデニズ大学食品安全センターの元副所長であるシク氏は、トルコ保健省から委託されたトルコ西部における毒性汚染と癌の高発生率との関係についての機密扱いの調査研究結果を公表したとして告訴されていた。

調査結果は、2018年4月に4部構成のシリーズ記事として野党の日刊紙ジュムフリエットに発表され、トルコの公衆衛生および毒性汚染レベルと癌発生率の関連についての広範な論議を巻き起こした。

シク氏が関わった科学者チームは、西部諸県の水と食品のサンプルの一部から、危険なレベルの重金属と農薬を発見していた。

シク氏は2019年に15か月の禁固刑を言い渡された後、控訴していた。

今回の判決を下したイスタンブールの裁判所は、保健省には公衆衛生に関するすべての情報を明らかにする責任があり、そのため当該の研究は「機密文書」とは見なされないとの判断を示した。保健省は調査の条件に守秘義務条項を加えていなかった。

「この調査の結果は、何百万人もの人々が関心を持つものです。にもかかわらず、3年前に私がコラム記事で結果を知らせて以来、これまで一度として公式の発表がなされていません。公衆衛生と環境に関わる重大な問題についてより多くの人々に知らせることは非常に大切なことです」とシク氏はアラブニュースに語った。

シク氏によると、政府の圧力は、科学者たちに、健康に影響を与える否定的な傾向を国民に知らせることによって、倫理的なスタンスを取るよう促す効果を生んでいるという。

「ですから、私があのコラム記事を書いたのは、日常生活で直面する健康への脅威と、有毒物質による水資源の汚染について人々に知らせ、警告するためだったのです」とシク氏は語っている。

昨年4月には、ノーム・チョムスキー、ロバート・カール、ジュディス・バトラーの各氏を含む614人の学者、世界的に著名な知識人、人権活動家たちが公開書簡を発表、その中でシク氏との連帯を表明し、同氏への有罪判決を覆すようトルコの控訴裁判所に求めていた。

「私たち署名者は、責任ある科学者として公衆衛生を擁護する行動を取ったシク博士への連帯を表明します。私たちは、世界中の科学者や学者に、学問そして言論の自由を意図的に標的としているトルコの保健省と学術機関を非難するよう促すものです」と書簡には記されている。

シク氏は、裁判によって癌に関する調査研究は白日のもとにさらされることとなり、活動家たちの支援も得て、国内および国際的に「はるかに広く知られる」ようになったと指摘している。

「自分が正しく、真実を語っていることは私には分かっていました。そのことが、今回の試練に耐える力を与えてくれました。この無罪判決に対する上告がなされるとしても、この件に関する不正義がよりはっきりするだけだと思います」とシク氏は述べた。

アムネスティ・インターナショナルはこの訴訟を、（シク氏の無罪が明らかな）「茶番劇の裁判」と定義している。

トルコの急速な経済成長は、しばしば環境安全と公衆衛生を犠牲にしてもたらされてきた。

昨年、トルコ西部のある地区の都市水には、世界保健機関（WHO）の基準の350倍のレベルのヒ素が含まれていることが明らかになった。その都市内の飲用水または水道水に含まれるヒ素の割合は世界1位にランクされた。

またこの地方における癌に関連した死亡率は、他地域の平均発生率の3倍にのぼっている。

「そこにある現実は依然変わっていません。何百万人もの人々が、毒性物質が命を脅かす地域に住み続けているのです」とシク氏は語っている。