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米国が入植地問題でイスラエル政府を擁護、パレスチナ側の怒りを買い和平プロセスに暗雲が立ち込める

イスラエルの入植地は、パレスチナ独立に対する最大の障壁と見なされている。(AFP通信 / 資料写真)
イスラエルの入植地は、パレスチナ独立に対する最大の障壁と見なされている。(AFP通信 / 資料写真)
19 Nov 2019 04:11:13 GMT9
  • マイク・ポンペオ国務長官の発表により、パレスチナ人の怒りに火が付いた
  • イスラエルびいきと見られるトランプ政権の最新の動き

ワシントン:アメリカ政府は11月18日、イスラエルが占領中のパレスチナ自治区ヨルダン川西岸にユダヤ人入植地を建設する権利を事実上容認した。入植地が「国際法違反」との40年間に渡る立場を破棄したのだ。このためイスラエルとパレスチナの和平はさらに遠のく可能性がある。

マイク・ポンペオ国務長官の発表は、イスラエルのベンジャミン・ネタニヤフ首相には勝利となった。今年イスラエルでは2回総選挙が行われたが決着がつかず、ネタニヤフ首相は政権を維持しようと躍起になっている。パレスチナ側にとっては敗北となった。

和平案を提示して、イスラエル・パレスチナ紛争を解決しようというトランプ大統領の試みに水を差すかの動きだ。和平案策定には2年以上の年月を費やしているが、発表前から懐疑的な見方が広がっている。

ポンペオ長官はイスラエルが1967年に占領したヨルダン川西岸のユダヤ人入植地に関するアメリカの姿勢には一貫性がなかったと述べた。民主党のジミー・カーター大統領は入植地が国際法に違反すると述べたが、共和党のロナルド・レーガン大統領は入植地に本質的な違法性があるとは思わないと述べている。

「イスラエルの民間人入植地建設そのものが、国際法に違反しているわけではない」とポンペオ長官は国務省での記者会見で述べ、1978年にカーター政権下でアメリカが正式に示した法的立場を逆転させた。

ポンペオ長官の発表を受け、ネタニヤフ首相は「歴史上の誤りを正すものだ」と称賛したが、パレスチナ解放機構(PLO)の交渉担当者サエブ・エレカット氏は、アメリカ政府が「国際法を『ジャングル法』に変える恐れがある」と批判した。

パレスチナ側は、アメリカ政府の姿勢が国際法を無視するものだと主張した。1949年のジュネーブ条約(第四条約)および国連安全保障理事会の決議に基づき、国際社会ではいかなる国の民間人でも、占領地への移住は国際法違反だとの見方が取られている。

「アメリカ政府には合法性を判断する国際社会の決議事項を否定する資格も権限もなく、ユダヤ人入植地を合法と判断する権利などない」とパレスチナ自治政府マフムード・アッバス議長の代弁者ナビル・アブルディネ報道官は述べた。

アメリカ政府は今回の方針変更が暴力事件を誘発する可能性があるとし、イスラエルやパレスチナにいるアメリカ人に対し警戒を強めるよう警告した。反対勢力がアメリカの政府機関、私有財産、国民を「標的にする可能性がある」からだという。

ヨルダンのアイマン・サファディ外相は、政策変更により和平交渉再開の見通しに「危険な結果」が出るだろうと述べ、入植地の存在が「国際法に露骨に違反するもの」と述べた。

ポンペオ長官は今回の政策変更が、ヨルダン川西岸の地位を早急に判断する性質のものではないと述べた。パレスチナ側は紛争を解決していく過程で、ヨルダン川西岸全域が最終的に独立したパレスチナの領土となるのを望んでいる。

「この問題はイスラエルとパレスチナ人側が交渉するべきものだ」とポンペオ長官は述べ、米国の決定により「特定の結果を強要したり、交渉による解決を法的に妨害したりする意図は一切ない」と述べた。

ポンペオ長官は、入植地が本質的に違法というわけではないとのレーガン大統領の見解をトランプ政権が踏襲していると述べたが、入植地建設が賢明でなく和平への障害となっているとのレーガン大統領の見解に同意するかという質問には答えなかった。

トランプ政権の親イスラエル的政策の多くと同様、入植地を容認するとの見解を示すことでキリスト教福音派から支持を得られそうだ。キリスト教福音派は2020年の再選を目指すトランプ大統領にとり重要な支持基盤の1つだ。

このタイミングで発表されたということは、アメリカ政府がネタニヤフ首相を窮地から救う意図があるとの見方もある。総選挙結果によりねじれ国会となり、野党第一党のベニー・ガンツ党首が組閣期限を迎える2日前のことだったからだ。

アナリストたちは米政府の動きを批判し、70年以上続く紛争の解決がさらに困難になると述べた。

「ポンペオ長官が黒を白と主張することは可能ですが、ユダヤ人入植地が国際法違反であるだけでなく、平和と地域の安定にとって大きな障害であるという事実を変えることはできません」とイスラエルの反入植地団体「ピース・ナウ」のハギット・オフラン氏は述べた。

今回の発表は、トランプ政権の親イスラエル、反パレスチナ・アラブという姿勢を示す顕著な例としては3度目となる。

2017年にトランプ大統領はエルサレムをイスラエルの首都として認め、2018年にはアメリカ大使館をテルアビブからエルサレムに移転した。以前の米国の政策では、エルサレムの地位は紛争当事者によって決定されるべきものとなっていた。

そして今年3月に、トランプ大統領はイスラエルが占領しているゴラン高原を1981年にシリアから併合したことを認めるべきだと発言してネタニヤフ首相に追い風を送り、シリア政府から抗議を受けた。

18日終わりの時点では、アメリカ以外のどの国もユダヤ人入植地を国際法違反と見なさないと宣言しておらず、追随する動きはないようだ。

トランプ大統領の動きには、ネタニヤフ首相の政権維持を後押しする意図があるのかも知れない。イスラエルでは今年総選挙が2回も行われたが、ネタニヤフ首相とライバルのガンツ党首はどちらも連立内閣の形成がうまく行っていない。

かつて米国の和平交渉担当を務めたマーティン・インディク氏は、ツイッターで今回の政府決定を「完全に根拠を欠く動き」と評した。「なぜ再びパレスチナ人を平手打ちするのか?ガンツ党首が組閣しようとしている瞬間に、なぜイスラエルによる入植・併合を後押しするのだろうか?」 と、ツィートしている。

ロイター通信

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