チュニス：アルジェリアでは、アブデルアジズ・ブーテフリカ前大統領前の葬儀を前に、国旗が半旗となり、アルジェリア国民は過去20年間の「失われた機会」を振り返っている。

金曜日に発表された84歳のブーテフリカ前大統領の死は、かつての強者が大統領を辞任してから2年以上が経過していた。

1999年、ブーテフリカ氏は、イスラム過激派組織に恩赦を与えることにより、10年以上続いた内戦に終止符を打ち、民衆の支持を得て大統領に就任した。その後長期に渡って政権を維持した。

しかしその20年後、ブーテフリカ氏は、大統領5期目への出馬表明を機に広がった大規模な抗議デモを受けて、軍により辞任に追い込まれた。

フランスからの独立戦争を戦ったブーテフリカ氏は、2013年に軽い脳卒中を起こして以降、発話に影響が出て、車いすの使用を余儀なくされた。

アルジェリア人から「ブーテフ」と呼ばれるブーテフリカ氏は、1970年代に外務大臣として、彼の恩師である第2代大統領ウアリ・ブーメディエン氏から尊敬を集めていた。

アルジェリアのジャーナリスト、アドレーン・メドディ氏は、ブーテフリカ氏が大統領になって最初のハネムーン期間を過ごしたのは、60年代後半から70年代にかけてブーメディエン氏が活躍した時代へのノスタルジーだったと語っている。

メドディ氏は、「ブーテフリカ氏は、一部の人にとって、アルジェリアが発展途上国のリーダー的存在であったブーメディエン政権下の『栄光』の時代の記憶を蘇らせてくれる心強い存在でした。これは1990年代後半のアルジェリアのくすんだ廃墟の姿とは対照的な存在です」と、オンラインニュース『ミドル・イースト・アイ(Middle East Eye)』に書いた。

ジュネーブにあるアラブと地中海地域の研究センター（CERMAM）のセンター長を務めるハスニ・アビディ氏は、ブーテフリカ前大統領は、当時の石油価格の高騰によって政府の財源が増えたことからも恩恵を受けたと語った。

さらにアビディ氏は「ブーテフリカ前大統領の人気は、高騰する石油価格と、軍が交渉し、イスラム教徒との戦争に終止符を打った『市民和解法』によって保証されていました」と述べ、このように続けた。

「残念ながら、ブーテフリカ氏は歴史とのランデブーを逃してしまいました。彼は失われた機会の大統領だったのです。彼は優れた政治家ではなく、権力と陰謀の人となったのです。」

アルジェ大学の政治学講師であるルイ―ス・ドリス・アイト・ハマドゥシュ氏は、ブーテフリカ氏が「自身の野望やアルジェリア国家の野望を達成できなかった」ために、アルジェリアは「多くの機会を失うこと」に見舞われたと述べた。

ブーテフリカ氏の望みは、「ブーメディエン氏を超え、自身の大統領の地位を確立し、すべての軍事組織を自分の指揮下に置き、アルジェリアの地域的な影響力を高め、約20万人の犠牲者を出した（内戦の）黒い10年から新しい時代を作る人物となる」ことだったと、ルイ―ス・ドリス・アイト・ハマドゥシュ氏は語った。

「しかし、その結果として、2021年のアルジェリアの国家機関はこれほどまでにない程弱体化し、分裂し、信用を失っています。」

ドリス・アイト・ハマドゥシュ氏は、多くの若いアルジェリア人にとって、ブーテフリカ氏の記憶は「車椅子に乗った老人の悲惨なイメージ」だけであると語った。

現在のアルジェリアの人口の半分以上が30歳未満である。

ハマドゥシュ氏は、ブーテフリカ氏が死亡したことにより、彼が「職務遂行中に犯した過ち」の責任を負うことを免れたことについて、残念に思うと述べた。

ブーテフリカ氏は、人権擁護団体や反体制派から、彼が権威主義者であると批判されていた。

フランスのアルジェリア人移民のヒラク改革運動活動家であるサミール・ヤヒアウイ氏は、ブーテフリカ氏が「多くの秘密を隠したまま死んでしまった」ことを残念に思うと述べ、「それは到底受け入れられない」と続けた。

「ブーテフリカ氏が多くの秘密を隠したまま死去してしまったことは、彼が一族や政権に仕えていて、優れた政治家ではなかったことを示しています。」

AFP